インドア派卒業かもしれない。
「あー、やっと終わった!」
1体目のスライムを眷属にしてから、怒涛の勢いで湧いてきたスライムを倒し続けてかれこれ20分。
インドアな俺の疲れが限界に達しかけた時、ようやく最後のスライムを倒すことが出来た。
最初に眷属にしたスライムには、まだFランクの川口を守らせている。
「芝崎君、お疲れ様!」
「はぁ、マジで、疲れた」
慣れない運動をしたせいで体のあちこちがつりかけているが、一応成果はあった。
『ステータス』
______________
|体力値: D
|攻撃値: D
|防御値: D-
|敏捷値: D+
|魔力値: E
|平均値: D
|〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜~~~~~
|眷属にした魔物
|・スライム 〈 Eランク 〉
|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これが俺の現在のステータスである。
スライムを数十体倒したおかげで、魔力値以外のステータスがかなり上昇した。
異世界人であることが原因なのか、ステータスの上がり方が半端ない。
途中からはスライムの動きがスローモーションに見えるようになったし、攻撃も一撃で倒せるようになった。
平均値もDランクになったので、Dランクの魔物を眷属にすることもできるようになった。
ちなみに、『魔物使い』のジョブを詳しく調べてみたところ、眷属にできる魔物の数は平均ランクによって変わることがわかった。
Fランク→1体
Eランク→2体
Dランク→4体
Cランク→8体
というふうに、平均ランクが1上がると眷属にできる魔物が2倍に増えるのだ。
今はDランクなので4体まで魔物を眷属にすることが出来るが、眷属がスライムばかりなのは嫌なので、後に倒した数十体のスライムは眷属にはしていない。
「とりあえず、一旦休憩するわ」
「うん」
足がつらないように気をつけながら、川口が座っている木の下に移動する。
木の下に座り、俺はふと思った疑問を川口に聞いてみる、
「これ、眷属にした魔物ってずっとこのままなのかな?」
そう言って、今も川口を守るために臨戦態勢に入っているスライムを指さす。
「どうなんだろうね。…そうだ!芝崎君の持ってる本に書いてるんじゃない?」
「あ、確かに!」
さっき確認した時は、見る時間が少なかったせいで、眷属にできる魔物の数くらいしか調べられなかったけど、もしかしたら続きに書いてるかもしれないな。
俺は袋の中から本を取り出し、『魔物使い』のページを開く。
「えっと……お、あった!
召喚“名前”と言うことで眷属にした魔物を召喚することができ、応召“名前”ということでその魔物を『モンスターボックス』へと戻すことが出来る。
『モンスターボックス』とは、眷属にした魔物が住んでいる空間の事で、魔物の状態を知りたい時は『モンスターボックス』と念じる事で確認することが出来る。だってさ」
『モンスターボックス』とかあったんだな。
これ、この本が無かったら詰んでたかもしれないな。
とりあえず試してみるか。
『応召“スライム”』
………しかし、何も起こらない。
どういうことだ?何か間違ってたのか?
もう一度確認してみると、どうやら眷属にした魔物には種族の名前ではなく、固有の名前をつける必要があるみたいだった。
うーん、名前か。
名前とか考えたことないんだけどな。
まあ、スライムだし、“ライム”でいいか。
よし、改めて
『応召“ライム”』
そう念じた瞬間、目の前の空間に歪みが生じ、そこにライムが吸い込まれる。
俺は一瞬の出来事に頭が追いつかず呆然としてしまう。
その歪みが元に戻った瞬間、俺の頭は再起動した。
「こ、こんな感じなんだな。
なんか、箱みたいなのが出てくると思ってたわ」
「そ、そうだね、私もびっくりしちゃった」
『モンスターボックス』は説明通り、本当に別空間ということだったらしい。
まあ、これでひとまず魔物の住居問題は解決したとして、後はライムがどんな能力を持ってるかだな。
確か、これも本に書いてあった気がする。
5番の『魔物について』を読んでみる。
『魔物とは魔力を持った生物の事で、SランクからFランクまで存在する。また、様々な能力を持った魔物や、一定以上の経験を得ることで進化する魔物も存在する』
へー、進化とかあるんだな。
まあ、多分一部の強い魔物しか進化しないんだろうけどな。
その下に各魔物の能力が書いてあるので、スライムを調べてみる。
〈Eランク〉
スライム・・・能力:特になし
進化後:〈Cランク〉スライムマン
え?
スライム進化後あんのかよ。
これは嬉しい誤算だな。
てか、Cランクって地味に高いし。
まあ、現段階では能力は特にないみたいだし、経験を積ませるのが難しいのかもしれないけど。
そこまで読んだところで、一旦本を袋に戻し、ライムを召喚する。
『召喚“ライム”』
また先程の空間の歪みが発生し、中からライムが飛び出てきた。
「よし、ライム、さっきと同じで川口を守れよ」
スライムに言葉が通用するかはわからないが、頷いてるように見えるので、おそらく意思疎通出来ているはずだ。
臨戦態勢に入ったライムを尻目に見ながら川口に声をかける。
「ここはスライムしか出ないみたいだし、もう少し進んでみよう」
「でも、芝崎君体力大丈夫?」
「ああ。体力値がDランクに上がったおかげか、もうだいぶ戻ったから大丈夫だ」
ランクが1上がったら格段に強くなるっていうのは本当みたいだな。
さっきまであんなに疲れていたのに、今はほとんど疲れが残っていない。
どうにかして川口の『ステータス』も上げないとな。
そんなことを考えながら、俺達は手を繋いで山を登って行くのだった。
題名通りになるまで後少しといったところです。
あと、「ハーレム要素はありません」とあらすじに書いてありましたが、今後の展開を考えた結果、ないと言い切ることは出来なくなってしまったので訂正することにしました。
ハーレム要素が嫌いな方には申し訳ないですが、ご了承くださいm(__)m