説明回。
この回は説明回となります!
西本が不安そうにこっちを見てくる。
ちょっと待て、これって本当の事を言わない方がいいよな?
少し考えた結果、俺は最後の部分以外を包み隠さず西本に話すことにした。
「え!?じゃあその条件を果たすまでこの首輪は取れないの!?」
「…まあ、そういうことになるな」
「そんな…。首、かぶれたりしないよね…」
あ、心配するとこそこなんだ。
「大丈夫。多分その辺はちゃんと考えてくれているだろうし。
ん?考えてくれているよな?
いや、でもオミスだし……」
「お酢がどうかした?」
「いや、なんでもない、こっちの話だ」
この状況でお酢とか言わないだろ。
まさかお前まで天然とか言わないだろうな。
「とりあえず、その首輪は自然に条件を達成するまで無理に外そうとしない方がいい。何が起こるかわからないしな」
「…うん、わかった。
ってことは私、今のままじゃ何も出来ないってこと?」
西本が眉をひそめて言う。
「今は、まあそうだな。でも、何かしら出来ることはあるはずだから、それをしとけばいいんじゃないか?
川口も俺を手伝ってくれてるし、西本は一樹の手伝いでもすればいいと思うぞ」
「わかった!」
一樹の手伝いと聞いた瞬間、西本は一樹の方へ走っていった。
わかりやすいやつだな…。
まあおそらく、西本の願望っていうのは一樹絡みのことだろうし、一樹と一緒にいたら自然に首輪も外れるだろ。
西本が走っていったのを見送った瞬間、俺はどっと疲れが押し寄せてくるのを感じた。
ふぅ、流石に全員の支給品を調べるのは骨が折れる。
あとは、気になってる、『職業について』と『ステータスについて』を読んだら一旦終わるか。
そこで川口から声がかかる。
「芝崎君、お疲れ様!」
「ああ、川口、そっちもお疲れ。手伝ってくれてありがとな」
「うんうん!私に出来ることって言ったらそれくらいしかないから!」
「いや、川口にはみんなの癒しという役職が…」
「えっ」
「いやなんでもない、忘れてくれ」
俺も相当疲れてるらしいな。
川口が顔を赤めているじゃないか、
「よし、じゃあ3番の『職業について』を見ていくぞ!」
「え、う、うん」
無理やり話を変える。
「職業には、種族を表す『固有ジョブ』と、役職を表す『通常ジョブ』と、稀に発現する『特殊ジョブ』の3種類が存在する。
『固有ジョブ』は、人族、獣人族、竜人族、巨人族というふうに、見た目でどのジョブを所有しているかがわかるものがほとんどであるが、例外として、君達の『異世界人』というものが含まれる。
また、固有ジョブの中にはステータスが上がったりと、効果を発揮するものもある」
なるほど、種族も職業に含まれるのか。
「『異世界人』っていうのはどんな効果なの?」
川口が聞いてくる。
それは俺も気になってたとこだ。
「んーと、『他種族の信頼を得やすくなったりと、特別な恩恵を手に入れることができる』だと。
てことは、『異世界人』だとこの世界の人にばらしてもいいのかもしれないな」
ちゃんと考えてるじゃないかオミス。
ちょっと見直したぞオミス。
「とりあえず、固有ジョブについては一旦置いといたとして、次は通常ジョブだな。
通常ジョブは、村人、戦士、魔法使い、鍛冶屋というふうに、個人の役割を表しており、『ジョブ』と念じることでの通常ジョブを確認することができる。
また、そのジョブによって出来ることが異なっており、稀に珍しいジョブが発現する者もいる。だと」
まあ、これが一般的な職業ってやつだな。
多分、産まれた時から発現しているんだろうけど、村人に産まれるか魔法使いに産まれるかって結構違うよな。
「よし、俺達の通常ジョブを確認してみるか」
「そうだね」
ジョブと念じてみる。
『ジョブ』
__________
|通常ジョブ:魔物使い |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
お、できた!
魔物使いか。
魔物を使役して戦うって感じかな。
「芝崎君!私『精霊使い』だって!
なんか凄そうじゃない?」
川口がはしゃぎながら言ってくる。
「俺は『魔物使い』だった。川口のはレアなジョブっぽいな」
少しいじけながらそう言う。
魔物と精霊でしょ?精霊のが凄いに決まってるじゃん。
でも、こういうのは案外『魔物使い』が物凄く強いとかいうパターンかもしれないな。
そう考えたら少しワクワクしてきた。
「もしかしたらジョブの詳細も載ってるかもしれないから、1回調べてみるな」
「うん!」
まずは精霊使いだな。
楽しみは後に置いておこう。
さ行さ行っと。
てかこの本全部名前の順で載ってんのな。
まあわかりやすいからいいけどさ。
「『精霊使い』はやっぱりレアジョブみたいだ。
数十万人に1人しかいないらしい」
羨ましいことこの上ない。
「えっと、
他世界にいる精霊に干渉し、契約を結ぶことで精霊を扱うことが出来るようになる。なお、契約できる精霊の強さは、所有者の器に比例する。
また、精霊にも属性が存在し、扱う精霊によっては魔法を使えるようになる場合もある。だってさ」
つまり、せっかく『精霊使い』のジョブに産まれても器が小さかったら宝の持ち腐れってことか。
実質、強い『精霊使い』だったら数百万人に1人とかかもしれないな。
「よかったな、強そうなジョブじゃないか」
「うん!
でも、精霊に干渉するってどうするのかな?」
まあ、そこだよな。
「どうやら精霊が存在する場所っていうのがあるらしいな。そこで精霊を強く呼ぶんだと。そしたら干渉できるんだってさ」
ということは、今のところ川口が出来ることは無いってことだな。
こ、これは俺が守ってやらないと!
俺が変な使命感に駆られていると、川口がまたがっくりと肩を落とす。
「じゃあ私、まだ何も出来ないんだね…。
足でまといとかになったらどうしよう…」
「まあ、その場合は俺が守るよ」
「えっ!?」
おっと、ついつい口に出してしまった。
普通、一樹に守ってもらった方がいいよな。
訂正しようとすると、川口が笑顔で頷き返してくる。
「ありがと!芝崎君!」
まあ、川口が喜んでるんならいいか。
次に、俺の魔物使いを調べてみよう。
魔物使いっと。
お、あった。
えっと、詳細は……
……え?嘘だろ?
俺は驚きのあまり少しの間放心していた。
想定外だった。
そう。『魔物使い』が想像以上に弱かったのだ。
なんか勝手に『魔物使い』=強いとか思い込んでいたせいで、ショックが二倍ましだ。
まさかレアジョブですら無かったとは……。
「えっと、芝崎君…大丈夫?」
おっと、心配されるほどひどい表情だったのか。
「だ、大丈夫大丈夫!
よし、じゃあ次は『特殊ジョブ』に行くか!」
「え?まだ『魔物使い』の詳細を聞いてないけど…」
……察して欲しかった。
しかし、聞くまで川口は引き下がらないだろう。
渋々口を開く。
「……10人に1人は持っていると言われている、一般的なジョブ。自分と同ランクの魔物までなら、戦って勝つことによって眷属にすることができるが、所有者本人が戦わないといけないため、眷属にできる魔物はかなり限られてくる。
よって、ジョブの中では『最弱』に位置づけられる」
…これは辛い。
ランクがどんな風に上がるかは分からないが、ろくな攻撃手段もない状態で魔物を倒せるはずがない。
つまり、強くなるにはステータスのランクを上げることが必要であり、ランクを上げるには魔物を倒せなければいけなく、その魔物を倒すためには強くならないといけないという完全な矛盾が発生しているのである。
これ、どうすればいいんだよ……。
補足に『現在、最強の魔物使いと呼ばれているイノマは、Cランクの魔物を眷属にすることに成功した』
とか書かれてるけど、どうやってCランクまで上げたのか非常に気になるところである。
まあ、Cランクがどの程度か分からないんだけどね。
「とりあえず、これに関しては4番の『ステータスについて』を読まないとなんとも言えんが、……まあハズレであることには違いないだろうな」
「で、でも、まだ分からないよ!?
もしかしたら異世界人とかでそのランクっていうのが普通より高いかもしれないし!」
川口……その優しさが痛いんだ…。
しかも今盛大なフラグ立てちゃったし。
「そうかもな…。
んじゃ、『特殊ジョブ』に行くぞ?」
「う、うん!」
今度は察してくれたようだ。
「『特殊ジョブ』は、様々な条件を満たした時に、突発的に発現するジョブである。まだ発見されてないものもあり、いつ発現するかは未知数である。だってさ。」
「その『特殊ジョブ』にはどんなのがあるの?」
「んっと、『勇者』とか『英雄』とかだな。
ほとんどが『???』で表記されてるからまだ発見されてないのがほとんどなんだろう」
『勇者』って一般ジョブだと思ってたけど違うんだな。
周りがそう評価したら発現するって感じか?
「職業についてはそれだけだな。
次は4番の『ステータスについて』だ。
んじゃ、読むぞ?」
川口が頷いたのを見て読み始める。
「『ステータス』とは、全ての生物に与えられている恩恵のことである。
体力値、攻撃値、防御値、敏捷値、魔力値が存在し、
それぞれG-ランクからS+ランクで定められている。
人族と異世界人のステータスは基本的にオールFであり、固有ジョブによって初期ステータスは変わってくる。
また、1つランクが上がるだけで、強さが格段に変わると言われている。
なお、ステータスは、『ステータス』と念じるだけで確認が可能である。」
やっぱり異世界人でも変わらないか…。
てか、Fってスライムとかそのレベルじゃないのか?
段々悲しくなってきたんだが。
「……とりあえず、『ステータス』を確認してみるか」
「うん」
も、もしかしたら俺だけステータス高いかもしれないし…。
『ステータス』
_______
|体力値: E |
|攻撃値: E |
|防御値: E |
|敏捷値: D- |
|魔力値: E |
|平均値: E |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
おし!なんか知らないけど普通より高い!
と思ったけど、これよく考えたらこの本で1ランク上がってるんだよな。
じゃあ敏捷値以外全て平均と。
ははは、何故敏捷値だけ高いのかはわからないけど、
そんな上手く物事は進まないよな。
「川口はどうだった?」
「えっと、私は魔力値がE-で後は全部Fかな。
芝崎君は?」
「俺はこの本の効果を入れて、敏捷値がD-で後はEだ」
川口は魔力値が少し高いと。
でも精霊の力がなかったら魔法使えないんだよな。
「とりあえず、現時点で俺らが出来ることと言えば、
自分のできる範囲で鍛えることくらいだな。
まあ、それでステータスが上がるかはわからないけど」
「うん!分かった!」
「それじゃ、流石に疲れたし、一旦終わるか。
なんかあいつらも魔法を使いすぎたのかグターってなってるし」
「そうだね、これからどうするのか決めないといけないしね…」
言いながらまた不安になってきたのか、段々と言葉が尻つぼみになっていく川口。
まあ、無理もない。
俺も、もしも異世界に転移したらどうするか、とか常に妄想してなかったら今頃はパニックになってたかもしれないしな。
ここは男として気の利く言葉でも掛けようじゃないか。
「大丈夫だ。帰れる方法もあるみたいだし、みんなで協力したらきっと帰れるはずだ」
「……うん、そうだよね。ありがとう!
芝崎君、やっぱり優しいね」
その言葉と笑顔に思わず顔が赤くなる。
幸か不幸かそのことに気づいていない川口は、さっきとはうってかわった自信に満ちた表情を浮かべた。
「よし、じゃあまずはこの森を抜けないと行けないね!芝崎君、一樹君達のところへ行こ!」
「あ、ああ」
そう言うと川口は先にあいつらの方へと走っていった。
あれ?
俺よく考えたらさっきまで川口と2人で喋ってた?
…まじか。
テンション上がってて気にしてなかったけど、よく考えたらものすごく恥ずかしいセリフを言ってた気がする…。
俺は頭を抱えながらも、川口の後を追いかけていくのだった。