俺の支給品が有用すぎる。
目次にはこう書かれていた。
1.この世界について
2.支給品について
3.職業について
4.ステータスについて
5.魔物について
6.魔法について
7.アイテムについて
8.パーフェクトな神、オミスについて
……うん、とりあえず8番には突っ込まないでおこう。
「まずは1番の『この世界について』を読んでいくぞ?」
「うん」
えっと、なになに?
「この世界は君達の住む世界とは異なる世界である」
ふむ、やはり異世界ということか。
「元の世界に帰るためには、君達をこの世界に転移させた張本人を見つけ出し、条件を達成させる必要がある」
いや、この本がオミスのくれた物だっていうんなら犯人絶対オミスだろ。
「ヒントは無いので、なんとか自力で正体にたどり着いて欲しい」
8番見ろ8番。ヒントどころか答えだぞこれ。
「またこの世界の言語については、この世界に転移させた際に自動で習得させてあるので安心して欲しい。
ただ、この本は特別な文字で著されているため、所有者以外は読むことができない」
「あー、だから芝崎君だけ読めるんだね!」
「そういうことらしいな」
ということはこの本を他の人に見られる心配はないということか。
それは安心だ。
この世界の人に見られたらめんどくさいことになるからな。
「この後には、この世界の歴史とか、まだ俺達にわからないことが書いてあるから一旦省略するな」
「うん、わかった」
ぶっちゃけこの世界がどう作られたのかとか全く興味がないしな。
しかもチラッと見た感じだとなんかオミスの自慢ばっかり書いてあるし。
会ったことないのにオミスの株が既に大暴落してるぞ。
「あと、この世界は大陸が1つしかないらしい。
ミカラム大陸っていうそうだ」
「わかった、覚えとくね!」
ていうか、さっきから川口の適応力が凄いんだが。
普通もっと戸惑うもんじゃないか?
今も一樹が頑張って演説してるけど、みんなは未だに困惑してるしな。
そう考えたら一樹も凄いのか。
「すごいな、川口。普通もっと戸惑うと思うのにすぐに適応して」
「え、いや、その………芝崎君が見てるアニメとかを見てたから」
「ん?何か言ったか?」
「うんうん!何でもないよ!」
何か言った気がするんだけど声が小さくて聞こえなかった。
なお、自分のことは棚に上げていることは気にしない。
「そっか。じゃあ次は2番の『支給品について』を読んでいくぞ?」
「うん!」
よし、このページからだな。
「支給品は身につけている間、所有者に能力を与える道具である。なお、この本の所有者には全ステータスを1ランク上げる能力を与えている。だと」
「じゃあ芝崎君はそのステータス?っていうのが上がってるんだね」
「そういうことだな。まあ、そのステータスが何を指すかはまだわからないけどな」
「ステータスについては何か書かれてないの?」
「ん?ああ、4番に書かれてるな。後で確認しよう」
「うん」
「あとはどうやら支給品の効果が書かれているみたいだな」
「それじゃあこの指輪も書かれているの?」
「待ってくれ、ちょっと探してみる」
指輪か、これなんてアイテムなんだ?
とりあえず指輪で探してみるか。
どうやら名前の順みたいだし。
や……ゆ……お、あった。
「指輪は『ある条件を達成すれば効果を発揮する指輪』としか書かれてないな。自分で条件を見つけろってことか?」
「じゃあ今は効果を発揮しないんだね…」
川口ががっかりしたように肩を落とす。
「まあでも、条件を達成した時の効果がすごいんじゃないか?そう考えれば当たりかもしれないな」
じゃないと割に合わない。
「わかった!頑張って条件を探してみるよ!」
「ああ」
とそこで、一樹がこっちに走ってくる。
「お、演説は終わったのか?」
「演説って。ただ説明してただけだろ」
一樹が苦笑しながら続ける。
「みんな俺に任せるって言って指示を待ってるんだけどどうすればいい?」
おお、さすが人気者。
「じゃあみんなに支給品を確認してもらえないか?」
「支給品?」
「ああ、一樹のその剣もそうだ」
俺はそう言って一樹の腰につけてある剣を指さす。
「えっ、うわ!ほんとだ!いつの間に…」
「いや、気づけよ」
指輪とかならともかく突然剣を持ってたら気づくだろ。
まあそんなことにも気づかないほど切羽詰ってたってことかもしれないけどさ。
「この本には支給品の詳細が書いてある。
全員の支給品の詳細を知りたいんなら呼んできてくれ」
「そういうことか、わかった」
そう言うと一樹はまた走っていった。
あいつ、忙しいな。
その間にあいつの剣の詳細でも見るか。
というかあの剣の名前は何なんだ?
とりあえず『剣』で調べてみるか。
……うーん、やっぱり無いな。
まあでも支給品の数はクラスメイトの数と同じはずだし、探せば見つかるか。
上から探していこう。
あ行…か行…さ行…た行…なかなか無いな。
途中で『呪いの首輪』とか不吉なものがあった気がしたけど一旦置いとこう。
おっと、や行のところにあった。
『勇者の剣』か。
そんな気がしてたが、やっぱり一樹が勇者か。
効果は『所有者が悪と認めたものと戦う時、攻撃値と敏捷値が3ランクずつ上昇し、その他のステータスも1ランクずつ上昇する。また、剣に魔力を貯めることで剣の威力を上昇させることができる』と。
ほうほう。
なにこれ、チートすぎない?
さすがは勇者の剣ということか。
「芝崎君どうかした?」
俺があからさまに変な顔をしているのを不思議に思ったのか、川口が聞いてくる。
「ん?ああ、ちょっと一樹の剣を見ててな。
少し強すぎるんじゃないかと神様に文句言ってたとこだ」
ほんとにオミスの野郎何考えてんだ。
「どんな感じなの?」
川口が聞いてくるので本に載ってた内容を説明する。
「……確かに、それは強いね」
「だろ?…俺の本が1ランクアップなのに、この格差はなんだ」
まあその分有益な情報を貰えてるからいいかもしれないけど。
と、そんなことを考えていると、一樹がこちらに歩いてくるのが見えた。
正確に言えばクラスメイト全員だが。
一樹タイミング良すぎるだろ。
見計らってないよな?
「ん?どうかしたか?優斗」
「いや、なんでもない」
まあそんなわけないか。
「おい芝崎!この道具の詳細がわかるって本当か?」
「まあ一応…」
「じゃあさっさと教えてくれ!」
クラスメイトが口々に言ってくる。
なんかこの態度はムカつくな。
まあ慣れてるからいいけどさ。
「ちょっとみんな!教えてもらうのにその態度は何なの!?」
しかし川口はそれを許せなかったようだ。
突然俺を庇いだした川口に、女子は戸惑い、男子は俺のほうを睨みつけてくる。
まあクラスの美少女が俺を庇ったりしたらこうなるよね。
「いいよ、川口。別に気にしてないから」
「…で、でも」
「大丈夫大丈夫」
そう言ってまだ不満そうにしている川口を押し黙らせる。
「えっと、及川君、だったよな?及川君の道具は何だったんだ?」
「俺の道具はこれだ」
そう言って俺に念珠を見せてくる。
俺を睨みつけることは忘れていない。
いや、念珠て……。何故念珠を選択したんだオミスよ。
「それでこの道具はどんな力を持ってるんだ?」
「あ、ああ、念珠ね。ちょっと待ってくれ」
な行の、ね…ね…お、見つけた。
「念珠は腕につけている間、神聖魔法を使えるようになるらしい。状態異常を治したり、魔物に大ダメージを与えたりできるそうだ」
なんか見た目通りだな。
「神聖魔法か、ちょっと練習してこよかな」
そう言って及川?は近くの木に歩いていった。
別にいいんだけどさ、人になにかしてもらった後は礼くらい言おうぜ。
また川口怒り出してるしさ。
その後も、怒りのボルテージが上がっていく川口をなんとか抑えながら、クラスメイトに道具の詳細を教えていく。
ちなみに一樹はちょっと調子に乗っていた。
もちろん他のクラスメイトもだ。
まあほとんどのやつが魔法の能力だったしな。
中には音を消す能力とか珍しいのもあった。
俺は今も木を剣で斬りまくっている一樹や、魔法で岩を攻撃しているクラスメイト達を遠目に見つめる。
ていうか、なんであいつら魔力の込め方知ってんだよ。
そんな疑問も挟みながら、ついに最後の1人になった。
ちなみにクラスは全部で40人である。
「芝崎、疲れてるかもだけど私もお願い」
「大丈夫。それで西本はどんな道具だったんだ?」
最後の1人は西本だった。
「私のはこれ」
と言って、首につけている首輪を指さす。
「これどこにも外すところがないんだけど、どうすればいいの?」
「うん、ちょっと待ってくれよ」
首輪か………ん?首輪?
もしかして…いや、まさかな。
『呪いの首輪』・・・所有者の1番の願望を果たすま で外すことができない。また、その願望は心の奥底で思っている事なので、所有者が知ることはできない。
この首輪を外すことが出来た時、所有者に幸福が訪れる。
なお、この首輪を付け続けると体が衰弱していき、最終的には死に至る。
『呪いの首輪』持ってたの西本かよ!!
このままだと題名詐欺になってしまいますがもうしばらくお待ちを!(><)