借りない場合
ピンポーン。
住宅街の一角。何の変鉄もない一軒家のインターホンが、綺麗な音色を主人に鳴らす。
中から声は聞こえないが、ガサガサと音が聞こえるので主人はいるようだ。
そして「はーい」
インターホン越しにその家の主人は応答した。少し年のとった女性の声だった。
「あの、すいません。私サポート会社ゴッドの浜田と申します。少しお話したいのですが、ただいまお時間のほうはありますでしょうか?」
丁寧な声だ。インターホンを鳴らした男は、サラリーマンのようで黒のスーツを、しっかり着用していた。
「あー、えっと。今、ちょっと忙しいので~」
女性は戸惑ったように答える。どうやら早くもインターホンを切るつもりだ。
それを察した浜田という男は行動を起こす。
「あ、あの。単刀直入に申します!」
「は、はい?」
浜田の声があまりに鋭かったので思わず返事をしてしまった。
「超能力、お貸しします。いかがでしょうか?」
万勉の営業スマイルだ。
「…」
数秒の沈黙が続いた。
そのあとに、返事とは別に「ガチャ」っと鍵を閉めるような音が聞こえた。
そして浜田は察した。
「はぁ、またダメか」
どうやら本当に家の鍵を閉めたようで、インターホンも既に浜田の声は届かなくなっていた。
「な、なんだったの今の人は」
意味不明なことを言った怪しいサラリーマンが怖くなり、いつのまにか鍵を閉めていた女性。
その数秒後だった。
鍵をしめ、玄関に立っていた女性から何かがとんだ。
「あれ?私何してたんだっけ?」
彼女の記憶からサラリーマンに関する情報が綺麗さっぱり消えていた。
誰かが言った。
「神は平等に人を助ける。しかし、神を信じたもののみを」