もし、月華が誰かと一日入れ替わってしまったら①
どうも!ルノです。
またまたやってしまいました!
勢いにのってもしも話を展開してしまいました!
……というのも、こういうの書くの大好きなんですよ、想像というか、妄想するのが!(笑)
さてさて、これから始まるのはアナタと私が織りなす想像の世界でblanketメンバーが日常を過ごすお話。
◆いつでもリクエスト受付中です◆
気軽にメッセ、感想でリクください♡←←
時間は掛かりますが必ず!執筆しますので。
因みに、本編と関係ないのが殆どです、多分(笑)
ではでは物語すたぁと★
【月華side】
「ふあ〜……」
珍しく昼間から私を眠気が襲った。
昨日遅くまで夜更かししていた訳でもないし、今眠くなる理由が見つからない。
なんで、眠くなったんだろう……。
「ハッ」
飛び起きてみると、もう次の日になっていた。
何だか体がすごく軽い。やっぱり沢山睡眠しておくと違うなぁ。
ぐぐっと背伸びをして部屋を見回すと、そこは私の部屋ではなく。
「ふえぇぇぇええええ!?」
驚いた声も自身の声では無くなっていた。
この声は聞いたことがある。確か………。
って何でこうなっちゃったの!?
焦りが支配する私の脳はショートしたらしく、考える事を放棄。
取り合えず普通に生活して戻る方法を探そうと思う。
ふかふかなベッドからおり、部屋をうろつく。自分の部屋ではないのでどこが何の部屋なのか分からず、プライバシーの尊重を考えると、部屋を詳しくは見れない。大体なんの部屋なのか分かった時点で探索は終了させることにする。
それにしても、広いなこの部屋……。
一回り探索してきたところで自室であろう部屋に戻るとテーブルの上で何かが震えているのが分かった。
バイブレーションの発信源は……携帯だ。
どうしよう、あけていいのかな……?
取り敢えず着信が来ているようなので、誰から来たかだけは確認しようと画面を見るとなんと自室の名前が表示されていた。スクリーンに映るのは月華の二文字。
これ、もしかして入れ変わっちゃったってやつなのかも。それで向こうも焦ってアイコンタクトをとろうとしてるのかもしれない。これは、電話に出るべきだよね。
私は覚悟を決めて携帯をタッチした。
「もしもし。」
名は明かさずに話を続ける。
「……もしもし?」
声の主は、自分だった。いや、自分の姿をした誰かのほうが正しいかもしれないけれど。
「もしもし、どなたですか」
「うわ、自分と喋ってるみたいで嫌だな。」
私の声で、彼の口調だと何かおかしい。
逆に彼の声で私の口調も、おかしい。笑そうになる。
「そうだね。……紫綺さん……で合ってるかな?」
「合ってる。」
「やっぱり入れ替わっちゃったんだね。」
「そうみたいだな」
どうやら私(月華)と紫綺さんが入れ替わっているらしい。
誰と入れ替わってしまったのかはっきりしたのは嬉しいけれど、戻り方が分からないんじゃあどうにもできない訳で。
「そうだな……とりあえずこのまま一日過ごしてみるか。もしかしたら明日には戻ってるかもしれないし。」
「そ、そうなのかな……?うん、じゃあ頑張ってみる。えっと、紫綺さんの真似したほうがいいかな?」
「……いや、自分が月華の真似をできそうにないから任せるよ。でもこれだけは守って。千佳には優しくしないこと!後々面倒だから。あと、千佳に隠し撮りされないこと!あ、家にある食べ物は食べていいし、お金も携帯も使っていいから。その代わり、こっちも使わせてもらうよ」
「わ、分かった……」
「じゃあ明日を楽しみにして頑張ろうか」
その言葉を最後に、通話は切れた。
そのあとすぐに電話が掛かってきたけれど、千佳ちゃんだったのでスルー。
ごめんね、千佳ちゃん……!
少し立つと電話の嵐は止み、すっかり静かになった。
お腹もすいてきたので、紫綺さんの家の食材でご飯を作る事にする。
〜〜♪
少しだけなら他の人と変わってみるのも楽しいかもしれない。
そんな事を思いながら台所へ向かうと、見るからに豪華な食材の入っていそうな冷蔵庫。
ちょっと躊躇いながら開けるとやはり、有名な高級食材が入っていた。
うーん、こんな高価なもの、食べられない。
そう考えた私はご飯を炊いて、卵と醤油をいただき、TKG(卵かけ御飯)でお腹を満たした。
どうやら米や卵や醤油にもこだわっているらしく、いつもと味が違うのが分かった。
紫綺さん、豪華な生活してるんだなぁ……。
簡単にいつもの事を済ませ、時間を持て余していると何だか落ち着かない。
何かがしたいけれど何をしていいのか分からない。
読書でもしようかと本棚を覗いてみたりしたけれど、難しい本ばかりで楽しめそうにないし、家には動物もいない。いつも私が家でしていることといえば音楽聴いたりテレビみたりだけれど……。
テレビを見ようとソファーに腰掛けチャンネルを操作しても落ち着かず、また音楽を聞いても落ち着かない。どうしようもなくなった私は特に理由もなく外へ出掛けた。
出掛け先はいつものショッピングセンター。ここにくれば誰かしらとは会えるはず。
歩きでショッピングセンターに向かい、疲れてカフェで寛いでいると声を掛けられた。
「おや、紫綺じゃないですか。」
「奇遇だな。散歩か?」
緋威翔さんと璢夷さんだ。やっぱり誰かと会えた!!でも誤算。まさか男子に会うとは……。
これじゃあ入れ替わってしまったという話をし辛い…。
それにしても、緋威翔さんってば紫綺さんのこと呼び捨てにしてるんだ。何だか羨ましいなぁ。
「ま、まぁね」
何とかバレないように紫綺さん風に返事をすると、特に何を気にすることもなく話を続ける。
「そうか、なら聞くがこの後暇か?」
「? 暇だけど、それがどうしたの?」
「今からトランプでもやろうかと話していたのです」
「お、やるやる!でも何処で?」
「そうだな、緋威翔の部屋はどうだ?」
「いいですよ。特に誰かがくる予定はないですから。」
「ちょぉぉぉおおおっとまったぁぁ!!」
突然の女声。一体どこからかと思えば、自分の後ろから声がする。
「ん?」
「それ、私も連れてってよ!」
「千佳さんじゃないですか、どうしてここに?」
息を荒くしてそ膝に体重を掛けた千佳ちゃんがそこに立っていた。
いつの間に来たんだろう?全然気付かなかった。
「紫綺くんを追ってきたに決まってるじゃない♪」
「おっ、おいっ」
「ひゃーん、いつもながら戸惑う紫綺くんもカワイイーっ♡」
内心色んな意味で焦りながら、何とか紫綺役をつとめる私を誰も知らない。
結局、千佳ちゃん以外にも来てもらおうということで、緋威翔さんと璢夷さんがそれぞれ人を呼び、計6名でトランプをやることに決まった。誰が呼ばれるのか今からドキドキ。
特に、緋威翔さんが誰を呼ぶのかーーー。
「紫綺くぅうううん、ほら、こっち向いてよーー」
「え?」
「パシャっ」
「おーっ、とぼけ顔ゲットぉおー」
緋威翔さんに集中しすぎた私は千佳ちゃんの不意打ちに敵わず写真を撮られたようだ。
あー、紫綺さんになんて言い訳しよう……。
そんなことを考えている間に二人は電話をかけ始めた。
緋威翔「もしもし月華さん?今から僕の部屋でトランプを皆さんとやるのですが、ご一緒にどうですか?」
………!!
私に電話掛けてくれてる!まぁ、今は紫綺さんだけど……。でもなんだか嬉しいな。
緋威翔さんは私になってる紫綺さんを呼んだけど、璢夷さんは……?
璢夷「もしもし、今暇か?……なら、これから緋威翔の部屋でトランプでもしようと思うんだが、どうだ?たまにはお前も遊びに参加しろ。コミュニケーションだって必要だろう?……では後で迎えにいこう。それまでに支度しておいてくれ」
璢夷さんが呼んだ人、誰だか分からなかったな……誰だろう。気になる。
緋威翔「では行きましょうか。一度部屋についたら、僕は月華さんを迎えに行きますので部屋で寛いでいてください」
千佳「やったぁ!!紫綺くんと二人きり♡」
紫綺「分かった」
それから皆で道を歩き、寮まで到着。二人はそれぞれ迎えにいくようなので、私と千佳ちゃんでお留守番だ。何度か訪れている場所でも、目線が違うとこうも違うらしい。今まで見えていなかった部分が見えてくる。それもそうだ。だって紫綺さんの方が私より大きいんだもん。
千佳「ねぇ、紫綺くん。今日は何だかえらくご機嫌みたいだけど、何かあったの?」
流石千佳ちゃん。結構の頻度で紫綺さんを見ているだけある。中身が私であっても今は紫綺さんの顔だから、私が喜べば紫綺さんが喜んでることになる。……ということは、どうやら私は無意識の内に楽しげなオーラを放っているらしい。それを紫綺さんの顔を通して千佳ちゃんが感じ取っているのだと思う。
「別に……何もないよ」
必死に誤魔化すも千佳ちゃんはお見通しのようで、嬉しそうに視線を逸らした。
「ふふっ、分かってるよ。ファンクラブの会長をやってるんだから、分からない訳ないでしょ?じゃあ、皆が来るまでに支度しとこっか。」
緋威翔の部屋は全体的に赤や茶色が占めており、至る所にトランプが飾ってある。中にはいかにも高級そうな物もあった。流石にそんな高級そうなトランプを使うわけにもいかないので別のトランプを探す。
「あった!これで良いんじゃない?」
別の部屋から千佳ちゃんの声が聞こえてきた。その手には一般的な模様をしたトランプ箱が握られていた。よく手品で使う、あの赤い箱だ。
「よし、それで良いんじゃない?」
早速箱を受け取り中身を確認。
当たり前ながら、ちゃんと全てのカードが揃っていた。
ジョーカーを二枚、山とは別に置き他のカードをシャッフルしたところで皆の帰りを待つ。
「ねぇ紫綺くん。紫綺くんはどのマークが好き?」
トランプの山を見てから、意味ありげな目線を送って来る千佳ちゃん。
そして私は紫綺さんの好みのマークなど知っている訳もなく。どうしようもないので適当にそれっぽいのを選ぼうとしたが、無意識に自分の好きなマークを答えてしまっていた。
「……ハートの、エース。」
聞かれているのはマークだけなのに何故か数字まで答えた私を不思議がるように、千佳ちゃんが首を傾げて問う。
「何でそのマークなの?」
「……なんとなく。」
そう、特に意味はない。パッと浮かんだのがそのカードだったのだから。
「そっかぁ。じゃあ紫綺くんは彼女とか大事にするタイプなんだね。流石だなぁ」
「なんでそうなるの?」
「ハートは愛情とかのシンボルだし、エースって1でしょ?だから、一番として考えてるって事かなって。カードにうつるハートマークも一つだし、一途なのかなぁと。」
「あ〜、成る程。」
「なんか、安心しちゃった。紫綺くんが女好きじゃないって分かって。」
「わかんないよ?もしかしてって事もあるかもしれないし?」
「紫綺くんが一途なら、勝つのは一人でいいの。だから安心したのっ。誤魔化すのも照れ隠しだって分かってるから。ふふふ」
なるべく紫綺さんの真似をしながら千佳ちゃんと接していると、何と無く二人の関係が分かって来る気がする。
「ガチャ」
「あ、帰ってきた」
ドアが開く音がしたのでドアの方に目を向ける。そこには緋威翔さん、璢夷さん、私の見た目をした紫綺さんに続き、璢夷さんに誘われたであろう美麩さんの姿があった。
美麩さんが璢夷さんに呼ばれた相手だということには然程驚かなかったが、私の見た目をした紫綺さんが美麩さんと手を繋いでいるのにとても驚いた。一体どういう経緯で?
「おや、トランプを準備してくださってたんですね。有難うございます。」
緋威翔さんが早速というようにカードの山を受け取ると見事な手つきでシャッフルをしていく。普段から使い慣れているものだけに、その行為だけでマジックのようだ。
「美麩さん、どこに座りますか?」
「月華ちゃんと、璢夷の間がいいかな」
「了解」
そんな二人のやりとりが聞こえる。
「じゃあ私は紫綺くんの隣♪」
「勝手にすれば?」
「では僕は紫綺と月華さんの間に。」
その通りに並ぶと、緋威翔さん、私、千佳ちゃん、璢夷、美麩さん、(私の見た目をした)紫綺さんの順になった。
座る場所も決まったところで緋威翔さんがカードをシャッフルする手を止めた。
「何からしようか?」
「まずは簡単にジジ抜きでもどぉ?」
「私は千佳さんの案に賛成かな」
「な、なら私もそれで良いと思います」
千佳ちゃんの提案に対し、美麩さんに続くように意見を述べる紫綺さん。私にそっくりなので、ついつい驚いてしまう。
ジジ抜きという案には特に異論もなく、すんなりと決まった。…と同時に緋威翔さんが凄まじい早さでカードを配り始める。
カーペットすれすれを飛んでくるカードは、プレイヤーの目の前で見事に止まる。まるでカードに意思があるかのように。そんな中、璢夷さんにだけはカードを腕近くの高さまで飛ばしていた。璢夷さんはこれまた見事にカードをキャッチし、自身の手札に加えて行く。
「ではこの残りのカードをジジとします」
こうして始まったジジ抜きは、何とも和気藹々とした雰囲気の中行われた。順番はじゃんけんの結果、美麩さんから時計回りで、美麩さん、月華(紫綺)さん、緋威翔さん、私、千佳ちゃん、璢夷さんの順で引く事になった。
つまり、紫綺さんの見た目をした私は千佳ちゃんからカードを引く事になる。
カードを引く順番になると、千佳ちゃんの顔が正面にくる訳で、逆からすれば、千佳ちゃんは私のターンの際に紫綺さんと顔を合わせているも同じになるという事。
見つめ合う機会にはもってこいなので、ここぞとばかりにじっと見つめられ、女である私ですらちょっとドキッとしてしまう。
しかし紫綺さんの体を借りている以上、千佳ちゃんに何らかのそぶりを見せる訳にはいかず、すぐに目を逸らしカードだけを引くようにした。
周りのカードは徐々に減って行き、残り三枚程度になった。まだ誰も抜けていない。
……とここで緋威翔さんの番が来た。
「どれを取るの?まぁ、どれをとっても変わらないだろうけど」
紫綺さんに扮した私がそういうと、緋威翔さんは微笑み言った。
「きっと変わりますよ。このターンで状況が」
言い終わるか終わらないかぐらいで私からカードを一枚引くと、そのカードを確認した緋威翔さんは優美な微笑みを浮かべ二枚のカードを場に投げる。
そう、今まさに彼は当たりのカードを引いたのだ。
残るカードは一枚。しかも後は引かれるのを待つだけだ。
順番が回り、簡単に緋威翔さんが上がってしまった。それがさも当たり前のように璢夷さん達はゲームを続けている。緋威翔さんはそんな私達を見ながら、お菓子を用意しにキッチンへ向かう。
暫くして、璢夷さん、美麩さんが上がった。
緋威翔さんが作ったケーキを頂きながらまったりとゲームを続ける。
「紫綺くぅん、さぁさぁどっちにするのー?」
残りのカードが少なくなった今、一回の引きの重みが大きくなる。
慎重に選びたいところだが、ここは直感に任せるべきか。
一度深呼吸をしてから一気にカードを抜くと、ハートのエースだった。先ほどの話に出てきただけに印象強い。だが一つ気になるのは、カードがなくならないこと。まさかこれは……?
「あがったー」
私のカードを引いた月華(紫綺さん)があがった。
「なー、あと紫綺くんと私だけじゃーん」
千佳ちゃんが悔しそうかつ嬉しそうに呟く。そう、残っているのは私と千佳ちゃんだけ。
残りは一対二。一枚が決着をつける。
「さぁ、どっち?」
「じゃあ……下♡」
上下に分けたカードの内、千佳ちゃんは下のカードを選んだ。ゆっくりと差し出したそのカードを千佳ちゃんが確認した瞬間、勝負がついたと悟った。
「勝ったぁあああぁあ」
「ま、負けた……」
残ったのはハートのエース。
まさかのまさかで、だった。
残ったカードを見つめ、がっくりと肩を落とすとその肩を璢夷さんが軽くぽんぽんと叩いた。
「珍しいな、お前が負けるなんて。何かあったのか?」
心配そうに顔を覗きこまれ、内心焦る。
紫綺さんもゲームに強いんだっけ。
いつもと違う調子なのを悟られ、心配されているのだ。
「あー、えーっと、じゃあ私がその理由を説明するね」
隠す事を諦めたらしい紫綺さんが言う。
皆の目線が一斉に私の姿をした紫綺さんに注がれた。
「何かあったのか?」
「実はさ、俺と月華の体が入れ替わっちゃったらしくて。何でか知らないけど」
私の声で紫綺さんがは話すものだから、おかしくてしょうがない。皆驚いた表情を見せる。
「その話し方……紫綺か?」
「あぁ」
「ぜんっぜん気づかなかったぁ!じゃあ、今月華ちゃんの姿してるのが紫綺くんなの?」
「そーだよ」
「ほぇえ!あ、じゃあ月華ちゃん!ちょっと私に協力してよ…♪」
意味深な笑顔をこちらに向け、手を伸ばす千佳ちゃん。其の手は自然と服へ。
「ちょっ、千佳ちゃん!なっ、何する気…!?」
「紫綺くんの腹筋が見たいのでーす!」
「や、やめてぇええっ!」
「紫綺くんがショタみたいでかわうぃーっ‼」
「ちょ、やめろよ!」
必死に止めようとする紫綺さん。しかし私の体なせいか、力は強くないようで。
「よぉーし、月華ちゃんの姿をした紫綺くんげっとぉお!可愛い!」
あっさりと捕まってしまった。
そんな彼は今、千佳ちゃんの膝の上に座らされている。
「なっ、月華お前力なさすぎ!抵抗できないじゃ…!…ッ!」
兎に角ハイテンションになった千佳ちゃんは紫綺さんの体をした私の服を引っ張りながら、私の体をした紫綺さんを抱きながら膝に座らせるという荒技を披露中。
「あーん、もう幸せ〜♡」
「千佳さん、それ位にしてあげたらどうです?」
困り果てる二人を見兼ねた緋威翔さんが仲裁に入ったが、
「えー、もっと一緒にいたーい」
やはり千佳ちゃんは簡単に放してくれなかった。
「……仕方ありませんね…。」
「緋威翔!助けてよ!」
頭を撫で回され頬をすりすりされている紫綺さんは限界だというように悲痛な叫びをあげる。
「………。」
璢夷さんと緋威翔さんが目を合わせた。
……と同時に千佳ちゃんに捕まっていた私と紫綺さんが解放された。
二人により、お姫様抱っこによって。
「……絵になりますね。」
美麩さんが呟くその視界には、璢夷さんにお姫様抱っこされた月華(紫綺さん)と緋威翔さんにお姫様抱っこされた紫綺さん(私)の姿があった。
「すまないな紫綺。月華と精神のみ入れ替わっているとなると無理に引っ張りだすのは出来なかった」
私の体をした紫綺さんをゆっくり下ろすと璢夷さんが申し訳なさそうに言う。
「……それはしょうがないよ。…それにしても、お姫様抱っこってこんな感じなんだ…」
「む、どうした?気分が優れないのか?」
「いや、その……何でもない。」
一方、緋威翔さんにお姫様抱っこされた私はどうしていいのか分からず焦っていた。
「…では、下ろしますよ?」
「はい」
ゆっくりと下ろしてもらいながら、内心紫綺さんと入れ替わって良かったかもなどと考えていた。こんな体験、滅多に出来るものじゃない。
「それにしても、何故入れ替わってしまったのでしょう?」
場もひと段落済んだ所で話は戻る。
「さぁ?別に月華と何かあった訳じゃないしな…」
「そうですよね」
紫綺さんの意見に頷くと、脳裏に昨日見た夢が過る。
「そういえば昨日、変な夢をみたような」
「どんな夢なの?」
美麩さんが詳しく教えてほしいとせがむので、詳細を話した。話は長くなるので要点をまとめると、まず夢の中で蛇に会い、暫くしてそれが魔女だと判明した。その魔女が薬をつくり、無理やり私に飲ませたが、見るからに薬が不気味だった割に変化はなく、そのまま起きた。……とまぁこんな感じ。
「その夢なら俺も見た!」
紫綺さんが叫んだ。
「抵抗したら、秘密をばらすって言われて仕方なく薬を飲んだんだよ。特に何の変化もなくて不思議に思ってたら……そういう事か」
「なら〜、それは正夢ってこと?」
「そうなるな」
「ではその蛇魔女が作った薬が原因で……」
「へ、蛇魔女なんて名前じゃない!」
ん?
誰の声?
突如響いた謎の声に皆反応。だって誰の声でもない割に、しっかりと聞き取れたから。
「今の声……誰です?」
「俺じゃないぞ」
「私でもない」
全員が首を横に振る。
「では一体……?」
「ま、まさか例の…?」
「蛇魔女?」
その瞬間、ボトッという不気味な音と共に何かが落ちてきた。しかもそれは私の頭の上で。恐る恐る確認すると、何やらつるっとした物体が。こ、これは……!
「蛇!!」
思わず叫ぶ。
しっかりとこの目で見たが、やはりそれは蛇だった。
蛇は暫く私達の反応を楽しんだ後、姿を消した。その代わりに、私達と同じくらいの年齢の女の子が現れ、私を押し倒した。
「誰だぁ!私を蛇魔女と言ったのはぁ!」
緑の髪はセミロングで毛先がカールしており、目は紫。服は魔女が着るような黒いローブでその頭には魔女の帽子。
見るからに璢娘さんが見たら喜ぶ格好だ。
「ちょ、私の上に乗らないでくださ……」
「あ、まだ一日経ってないけど、元の身体に戻してあげるワ。」
そう言うなり自己中な魔女は手に持った杖を一振りした。
「ちょ、ちょっとま…!」
私達の声など聞いておらず、何やら怪しげな呪文を唱えると、私達は元の身体に戻っていた。……つまり、さっきまで下敷きにされていた私は解放され、代わりに紫綺さんが下敷きに。
「〜〜ッ、言わんこっちゃない!」
「キャー!紫綺くんに何すんのよ!!」
千佳ちゃん激怒。
「あらぁ〜可愛いわねボウヤ♡顔赤くしちゃって♡」
しかし蛇改め魔女さんは千佳ちゃんに見向きもしない。
「ボウヤじゃないし、お前がおもーーむぐぅ!」
「思ったよりも美人?いやーん、照れちゃうワ♡」
ゴーイングマイウェイな魔女さん。紫綺さんの口を手で塞ぎ、勝手に言葉の続きを決めている。
「ところで…誰です?貴方は」
こんな状況の中冷静な緋威翔さん。凄すぎる。
「あ、私?私は……魔女っ仔るびあたん♡なんちゃって。るびあよ。宜しくね?」
「るびあ!お願いだからど…!」
「どうしてここに居るのか?良いわよ、聞かせてあ・げ・る♡」
るびあさんはそう言いながら紫綺さんに顔を近づけウインクする。一方で紫綺さんは苦しそうに表情を歪ませた。
「あー、違うと思うぞ。多分息が出来なくて苦しいんだろう。とりあえず紫綺の上からどいて、椅子にでも座ってくれないか?」
そこに璢夷さんの助け舟が。
「なぁーんだ、そういうコト。はーい。」
意外にもるびあさんは紫綺さんからあっさり降り、近くにあった椅子に座って話を続けた。
「今回、作者に頼まれて二人を入れ替える薬を作成。後は二人に飲ませただけよ。」
「作者のせいか……」
「でも、何だかんだで楽しかったかも。」
「そう?そう言ってもらえると嬉しいワ。でね、私が作る薬は他にも色々あるのよ♪」
「例えば?」
「惚れ薬とか、命令を聞かせる薬とか、性別転換の薬とか…そのた盛り盛り!」
「な、なんとっ!惚れ薬!?ちょうだあああい!」
流石千佳ちゃん。惚れ薬にすぐ食いついた。
しかし他の皆も少し気になる様子。
「絶対敵に回したくないな…」
「……そうですね…。」
「気をつけないと…」
男子陣に焦りが見える。
「るびあさんって、魔女なの?」
「そうよ?」
るびあさんに興味深々の美麩さん。
るびあさんが魔女だと肯定すると、目を輝かせた。
「じゃあ、空を箒で飛んだり出来るの?」
「エェ♪出来るワ。但し、飛行薬を飲んでからだケド。」
「へぇ〜。」
こうしてワイワイしながら過ごし、夜になり皆帰宅した後、男子陣は警戒していたせいか一睡も出来なかったという……。
一話目はManaryさんリクエストの、月華が一日誰かと入れ替わってしまったら。でした!次回もです(笑)
今回は紫綺と入れ替わって頂きました。
次回は誰になるやら……?ww
因みに今回初登場の、るびあちゃん。
密かに気に入っているキャラで、本編にも出そうと思っているキャラクターです。
次回は先程言った通り、入れ替わってしまったらシリーズ第二弾です!
ではでは!
リクエスト、感想、お待ちしてまーす★