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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ガチムチおせち

作者: affyaffy10

読んで気持ちが悪くなったら、すみませぬー。

ワタクシ川上さくらは婦女子である。あ、まちがえました。「腐女子」こっちです。

毎日毎日、腐った小説を読んでは、グフグフきみの悪い笑い声をたてています。

でも、それを気味悪がる家族は誰も同居しておりませぬ。

なぜなら、母はワタクシを生んですぐ儚くなり、父はそのショックでワタクシを祖母に預け、放浪の旅へと旅立って行ったからです。

去年、その祖母もワタクシを心配しながら他界したので、今、この古い屋敷にワタクシ一人で住んでおります。


そんな訳で、ワタクシは、今年のお正月も一人寂しく...一人...?ん?あの、門の所に所在無さげにたたずんでいる、大きな影2つは何でしょうか?

押し売り?いやいや今時、訪問セールスはないでしょう。

じゃあ、もしかしてワタクシのストーカーでしょうか!ワタクシこう見えても花の女子高生ですから!!

まあ、何にしても、一応声をかけてみる事にしました。

「あのー、何かご用でしょうか?」

ワタクシの声に、はじかれたように顔を上げたのは、何か見覚えのある顔でございました。

んー、この頼りなさそーな細面に、悲しそーな下がり眉...おや?18年前、ワタクシの事を捨てて、放浪の旅へと去って行った親父殿ではありませぬか。

「あら、お久しぶりです。今日は急ぐのでしょうか?中でお茶でも...?おや、そちらの方は?」

見れば、細い親父殿の陰に隠れて、なにやらがたいの良いお兄さんがニコニコとこちらを見ております。

「ああ、こちらの方は、さくらにビックリプレゼントをする為に、わざわざ来てくださったんだよ!!」

ビックリプレゼント....

ワタクシは親父殿のこの言葉に、イヤーな予感を感じておりました。

親父殿はこうして、2年に一度くらいヒョコっとプレゼントを持って、ワタクシの前に現れます。

がっ!!そのプレゼントというのは、毎度毎度おぞましいものばかりでございました。

今年はいったい何をプレゼントしてくださるというのでしょうか。

そして、そのプレゼントに、このお兄さんは何を関係しているのでしょうか?

「まあ、ここでお話もなんですから、取り合えずお入りください」


ワタクシが高校の制服を着替えている間、お客様にはお茶をおだしし、待っていただく事にしました。

「サクラちゃーん、プレゼントの準備、しておくからねー」

下の客間から、親父殿の声が聞こえます。

「はーい。分かりましたー、なるべく早く下に行きますからー」

一応そう返事をし、普段着に着替えます。それにしても、親父殿は何故帰ってきたのでしょうか。

祖母の葬式にも帰ってこなかったのに..

私は親父殿の謎の行動について、不思議に思いながら身支度をし、客間へ降りて行きました。

「お待たせしました。ところで、プレゼントってなんですか?ん?」

「じゃじゃーん!!サクラちゃーん、見て!プレゼントとは、おせち料理の男体盛りだよ!!」

見るとそこには、ガチムチの先ほどのお兄さんが、客間のテーブルに裸で寝そべり、その上におせちの具材が載っております。

「お..親父殿...これは一体?」

困惑を隠せず、親父殿の顔を見ますと、親父殿はドヤ顔でワタクシにこう言いました。

「いやー、おばあさまから、サクラちゃんが、男と男の乳繰り合う本ばかり読んで心配だーって、メールが着てたから、サクラは今流行りの腐女子なんだってピンと来てさ、今回帰って来る時に、急遽2丁目のジローさんに頼んでこうして来てもらったんだよ!」

...2丁目って、新宿2丁目ですか?

...このお方の名前はジローさんですか?

あまりのショックで、一瞬どうでもいい質問が頭の中をグルグルしてしまいました。


いや、親父殿、ワタクシの好きな世界は、美少年同士が乳繰り合うもので、ワタクシの世界の中には間違ってもジローさんのようなガチムチの方はいらっしゃいません。

「とにかく、サクラちゃん、ここに座って!!ほら、これを食べなよ!!」

ニコニコ顔で伊達巻きを差し出され、ジローさんにも何やら微笑まれて、とても嫌だとは言えませんでした....

が!!しかし!!なにこれ?毛がついてる...と思い、ふとジローさんの事を見ると、伊達巻きはジローさんのマッチョな太巻きの部分に置いてあります。

ぎゃー!!!ワタクシその場でリバースしてしまいました...

親父殿、無理!!腐女子歴の浅いワタクシには、このようなガチムチの方は困りますし、ガチムチの毛も食べられません!!

リバースしたワタクシの脇で、「大丈夫?大丈夫?おかしいなあ、2丁目の皆さんに相談した時に、絶対喜ばれるって言われたプレゼントなんだけどなあ?」と親父殿が心から困惑したように話しております。

「サネ、だから言ったろ?女子高生がおっさんの男体盛りなんて、喜ばねーって。あんた2丁目の奴らにかつがれたんだよ」

その時、今まで一言も発しなかった、ジローさんが、何やら優しげに親父殿の肩を抱いてなだめ始めました。

ジローさん、その伊達巻き、いい加減捨てた方が良いですよ...

...というか、この二人の関係は何ですか?

親父殿、2次元では良いですが、3次元で、しかもガチムチは許しませんよ。

ワタクシの冰の視線に恐れをなしたのか、親父殿はそそくさと、ジローさんのおせちを口に運び始めました。

食うんかい!!

「ジローさん、やっぱりジローさんの料理最高だよー。サクラ、この辺なら食べられるでしょ!全部ジローさんの手作りなんだよ!」

あ!胸毛のついたチョロギを渡すな!!

しかし、母が死んでから18年、かつて無い程幸せそうな親父殿に、ワタクシ胸が熱くなりました。

ようやく、ベターハーフを探し当てる事ができたのですね。

お相手がガチムチジローさんであった事以外は、良くやったと褒めてやりたいくらいです。

あ!伊達巻き食うな!!

美味しそうに伊達巻きを食べる親父殿の顔にホッと安堵しながらも、毛のついた伊達巻きを思い出し、再びリバースをしてしまったワタクシなのでした。

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