第弐話 王都を目指そう……と考えながら、今日も野宿
※弱下ネタ有り、gdgd、その他諸々。
我思う。故に我有り。
……なんか格好いいですよね。
今、目指すべき場所は王都だろう。
僕等は一応打倒勇者を目指している……と言うことになっている。
つまりは、そう言うことだ。
始まりの街……であろう王都に行けば、少しくらい何かしらの情報があっても良いと思われる。
いや、まぁ、何だ。
僕としては、取り敢えず野宿ではなく宿屋で一休みしたいと思っている。
毎朝、毎朝キノコだけで凌ぐのはそろそろ辛くなってきたからな。
時々毒キノコ……とは言え効果としては性欲が増す程度のものだが、それを食べてしまうコトがある。
その度にナイフ相手にムラムラしている自分を殺したくなる。
「……と、言うわけで王都に行こう」
「うん、例え火の中、水の中、草の中、あの娘のスカートの中だろうとマスターに憑いて行くからね」
「女が言う言葉じゃないね」
「あ、マスターって私を女として見てくれてるんだねぇ。嬉しいなぁ」
「ナイフも紅くなるんだな」
まさかナイフの真ん中位の部分が少し紅くなっている。
コイツは吃驚だ。
と、言うことはパンツとかも憑き神がついたら紅くなるのか……。
うん、全然ワクワクなんかしてない。
僕は決してそんな破廉恥でえっちぃコトでワクワクなんかしない、決してしないったらしないんだ。
とは言え、思春期男子たるもの興味はありドキドキはする。
だが、僕はワクワクはしない。
「とは言いつつも女の子のパンツが見たいんでしょ?私が人型の時にちらちらコッチを見ているの知ってるんだよ?本当にワクワクしてないの?」
「何でニヤニヤしながらそんなコトを言うのか僕には解らない。僕は決してワクワクはしない。ただ、ドキドキはするがな」
「だったら、ほいっ」
そう言って神無は一瞬で人型になり、自分の履いているスカートを捲り上げた。
僕は凝視した。
まごう事なき凝視だ。
コレを凝視と言わずしてどれを凝視というのだろうか?とドヤ顔しながら言える程僕は凝視した。
だが、スパッツだ。
「騙しやがったな、このヤロウ!!なんだよ!思春期男子虐めてんのか、コンチクショー!!」
「矢っ張り見れると思ったらワクワクしてたじゃん。しかも物凄く凝視してたじゃん。思わず濡れちゃったよ」
「そんなこと言うな!?」
なんで、コイツは全年齢対象であるここでそんな発言を平気でするのだろうか?
馬鹿じゃないか?馬鹿なんじゃないか?馬鹿なんだろうな。馬鹿だな。
「そんな馬鹿馬鹿言わなくったって良いじゃん!私だってコレでもキッチリしっかりバッチリがっちり自重に自重を重ねて更に自重で包んでオブラートにした物を燃やしてという行程を三回程繰り返して、その後にオブラートにしてから発言してるんだよ!」
「長ぇよ」
「ツッコミが冷たいよ!?」
「大切なコトだからもう一度言わせて貰う。長ぇよ」
「酷いっ!」
知るか、馬鹿。
本当に長い。
取り敢えず長かった。
どれほど長かったかというと、時計の針が18°位回るくらい長かった。
「たった三分じゃん!」
「某大佐は言いました。『三分間だけ待ってやる』。その言葉には、もうラストなんだから早めに終わらせてくれよ。この世界の王に俺はなる!と言う意味があったのです」
「意味が解らないよ!なんでそんなに誇らしげに人差し指を立てながら喋ってるの!?しかも何処からだしたのか解らない眼鏡もつけてるし」
「どこからって、ここからだよ」
そう言って僕は自分のポケットに指を指した。
ポケットを叩くとビスケットが一つ……ではなく、眼鏡が一つ出てくる優れものだ。
しかも度は入っていない。
「意味無いよ!」
「なんで僕がボケてるんだろう?僕はツッコミの筈だったんんだけど」
「知らないよ!!」
いつの間にかナイフ状態に戻ってた神無が、ナイフの中央部分を少し紅くしながら、ハァハァと息づかいを荒くしている。
此処でボケたら色々と駄目な気がしたから僕はこれ以上ボケない。
「と、言うよりさっきから殺気をうしろから当てててくる変なヤツは誰なんだろうか?」
「さぁ?それと『さっき』と『殺気』で掛け合わせてるの?だとしたら痛いよ?」
「言っとけ」
そんなつもりは無かった。
言われて気づいた。
そう言えば言われて気づくことは結構沢山ある。
例えば、今の地の文の『結構沢山』という言葉だ。
普通に喋っていて使うと話し相手に結構沢山ってどっちなんだよ、と言われてしまう程度の言葉である。
ここでの程度は~程のと言う意味だ、其処を勘違いしないでいただきたい。
他にも『完璧』という文字を『完壁』として居ることに大人になるまで気づかず秘書に突っ込まれるなんてこともあるらしい。
「情けないな」
「家から魔法が使えないから追い出されて自殺を考えたマスターも相当情けないけどね」
「ほっとけ」
実際、誰でもそうなると思う。
僕だけではなく、誰でもきっと。
初恋だった幼なじみに嫌われ、尊敬してた兄達に的にされ、挙げ句の果てに家名を剥奪され追い出される。
うん、これで途方に暮れないヤツが居るとしたら僕は畏敬の念を抱くだろうね。
しょうがないじゃない、死に逃げてしまうのもしょうがないんだよ。
「本当に情けないなぁ……。ま、そんなマスターでも私は好きだけどね。寧ろそういうところがなければ出会ってなかっただろうし」
「どういうこっちゃ?」
「なんで変に訛ったのかは気にしないでおくよ。疲れるし」
「スルーされると僕は寂しくって笑っちゃうんだよ。ぐへへへ」
「きゃーへんたいー」
棒読みだねぇ。
ま、なんにも反応されないよりかは大分マシだけどさ。
本気でスルーされると、なんか滑った感じがして恥ずかしくなっちゃうんだよね。
「滑ってましたからっ!残念!」
「何そのどっかの侍みたいなの」
「さぁ?で、どういうことなんだ?」
「いや、マスターに会えたのもマスターが樹海に向かってたからでしょう?」
「あぁ、把握」
「っと、目の前に久々の肉がいるよ。どうするぅ?」
「狩るに決まってるでしょ、常考」
……神無を握り直し、肉に向かって切っ先を向ける。
心を静めて、つま先で少しリズムをとり……。
「……ッフ」
一気に距離を詰め、神無を横にスライドする。
肉は、あっという間に真っ二つになり、ずれ落ちる。
切断面は自分で言うのもなんだが、ガラスの表面の様に綺麗だ。
「やっぱりマスターは私を扱うのが上手いねぇ。惚れ惚れする!」
神無がナイフ状態で微妙に震えている。
僕の身体には返り血の一滴すらかかっておらず、神無にも血が付いていない。
神無が言うには、『マスターと出会うのは運命だったんだよ!!』らしい。
「取り敢えず、丸焼きにするか」
「あ、私も食べる!」
「了解、んじゃあ丁度……でも無いけど二つに分かれてるし、大きい方やるよ」
「いやいや!大きい方はマスターが食べて!育ち盛りなんだから!!」
「……さいでっか。んじゃ、捌くから待ってて」
そう言って僕は肉に向かう。
僕はこの魔物の名前を知らないので、『肉』と呼んでいる。
僕は友達が少ない(迫真)。
変なボケを入れつつ、肉に向かって一礼をする。
「貴方の命、僕の明日への糧とさせていただきます」
そう言って僕は包丁を片手に肉を捌く。
臓器は食べられないので、土に埋め、その上に種をまく。
コレは僕が肉に遭い、食べる時にする決まりだ。
決まりとは言っても誰もそんなことは絶対にしろとか決めてないんだけどね。
「……よいしょ」
最初の内はどうにもこうにも上手くいかなかったんだが、何十回と繰り返す内にしっかりと出来るようになっていた。
やはりなんでも繰り返しが大事ってことなんだろうな。
「神無、焼くの手伝って」
「あいあいさ!」
そこから僕等は調理を始め、三十分後には全部食べ終わっていた。
『肉は生焼けは絶対に駄目』。そんな言葉をを聞いたことがある。
実際、生焼け肉を食べて死んでしまう人間はごまんと居るのだ。
やはり先祖の言葉は偉大でしっかりと護らないといけないと感じる
「やっぱ肉は生焼けが旨いな」
「だね~」
……僕等は何せ病気にかかっても死ぬことはない。
ならば、いっそのことガンガン馬鹿しようではないか。と僕は考えた。
よい子は絶対に真似しちゃ駄目だぞ?
……え?さっきと言ってることが違う?
ま、気にするな。