4 芽生え
遅れたので二話投稿です。
長い廊下を歩いて大きな扉の前でマリーがとまる。
「こちらが魔王様のいらっしゃる、王座の間になります。きっと心待ちにしていますわ!!でわ私が先に入って――」
マリーが言い終える前に茜は重い扉を引いた。
「…無礼だな」
長い絨毯の先には漆黒と言えるほどの艶やかな長髪の男が立派な石の椅子に座り足を組んでいる。
「無礼なのはどっちなのよ!勝手にこっちの世界に呼んで嫁さんになれですって?!ふざけんじゃないわよ!!!さっさと帰しなさいよ!!」
「クックック…威勢がいいようだな。こっちに来い。」
「はぁ?!なんで――」
クイッと魔王が指を引くと茜は引っ張られるように前に進んだ。
「ちょ!!ちょっと!キャ!!」
キスできるほどの近さに顔を引かれマジマジと見られる。
茜は誰の目から見ても美人で明るい性格も相まってかなりモテるが実際男性と交際をした事がなく、至近距離まで顔が近づいた事に顔を赤くし目を泳がせた。
「そうか。手違いであったか。それはすまない事をした。もとの世界に戻す。だが7日待ってほしい。月の巡りが悪くてな。滞在中は好きにしていい。侘びだ。」
そう言い残して奥の部屋へ消えてってしまった。
展開が速すぎて茜は頭が真っ白になってしまった。
――さま…あかねさま?
ハッと気づくとマリーが目の前にいた。
「どうなさったのです?」
「い…いや、なんでもない」
「手違いだったのですね。でも好きになさっていいとの事なのでこのマリーになんでもお申し付けくださいませ♪満足していただけるよう手をつくしますわ♪でわお部屋に戻りましょう?」
そうして部屋に戻った茜だが、ずっと窓から見える庭をただボーっと眺めている。
心配になったマリーはお茶を出したり、茶菓子を出したりするが無反応だ。
召喚で体がどうにかなってしまったのだろうか。
なんとかしなければ!とマリーは話かける事にした。
「魔王様は今日も素敵でしたねー♪フェレンデル一素敵な方ですわ♪」
「フェレンデル…?」
「えぇ、この国はマジェロ大陸の西に位置するフェレンデルという国ですの。人間はいません、魔族が支配する国ですの。歴代の王の中でも魔王は大変魔力に溢れていてこの世界の人間なぞ足元にも及ばないのです!!それだけでも資質があるというのに内政にも力をいれていて民にも慕われる王の中の王ですわ!」
「ま…魔王はなんて言うの?その…名前は」
「メンフィス様ですわ」
「ふーん…」
「そちらのお庭は魔王様が将来お后様になる方にと部屋から絶景になるようにデザインされたお庭ですわ、ご覧になられますか?」
「…ううんいいや」
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綺麗な目をしてた。
淡い紫なのに今にも引き込まれそうで…
あたし、今まであんなに綺麗な人を見た事ない。
顎をつかまれた時に感じた血が通っていないような氷ついた手。
でもあたしの顎はカッと熱くなった。
ずっと頭から離れない…
なんかおかしい。
魔法とかいうやつかけられちゃったのかな…
マリーが教えてくれた庭を見てチクリと心がいたくなった。
ウブな時ってひょんな事で恋に落ちちゃいますよね。
お正月にはもうちょい長い話を書きたいです