1 混乱
「茜ちゃん‥‥!茜ちゃん茜ちゃん茜ちゃん‥!!」
目を覚ますなりいきなり叫びだす志乃。
だがいくら見渡しても見当たらない。
――ここは一体‥‥
とても薄暗い、証明は薄い光を放っているのは大きな水晶のみ。
志乃の下には蒼くひかった見た事もない文字が無数に広がっている。
「おぉ‥これは‥‥これは?」
人に指を指しながら怪奇な表情をする整った顔立ちをした金髪の男性。
夏の空を想像させるほどの透き通った青い瞳。
肌も白雪姫が実在していればこんな肌だっただろうと思えるほど白かった。
その姿はただ「かっこいい」と言うより「綺麗」と言う方がふさわしいほどの人だ。
すると白い布に蒼い柄の入ったローブを着た老人とインテリな雰囲気の男性が今にも冷や汗をダラダラかきそうな表情をしながら答えた。
「運命の妃様でございます」
は‥‥?き‥きさき?
なんの事‥‥?
「そっそんなこ――」「ふざけるな!!!!!!」
志乃が言い切る前に指をさしたままの男がわなわなと震えながら怒鳴る。
「こっこんな醜女が私の運命の相手だと?!はっ戯れ言を‥」
過去散々見た目の事をからかわれた志乃もこんな堂々と指をさして男性に醜女と言われたのは初めてだった。
室内が静まりかえった。
――き…気まずい…
ローブを着た老人が「ゴホン」とこの場の空気を払拭するように咳払いした。
「殿下」コツコツと志乃の周りを歩きながらインテリメガネが言った。
「后と言うのは見た目の優劣で決まるものではございません。」
「魔力だけ見ればやはり王国1、2を争うほどの保有値でございます。」
老人と交互にフォロー《・・・・》をいれていく。
「さぞかし立派なお世継ぎが産まれる事でしょう…」
この場には不釣り合いなニカッという効果音がつきそうな顔でインテリ眼鏡が締めくくった。
「ふん、后というのは王国の顔。こんな醜女がテラスに出て我が民に手をふる?末代までの恥だ!!!近隣国にも何を血迷ったと言われるに決まってる!!召喚しなおせ!!」
そう言い放ち石でできた床をツカツカと歩いて言ってしまった。
なんであんな素敵な人があんな暴言吐くんだろ?!気分悪い!醜女って!末代までの恥って!
血迷ったって言われるって!召喚しなおせって!
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥召喚?
「后様、私、この国の宰相をつとめておりますグレン・アンソニーと申します。以後お見知りおきを‥‥」
「后様、わしはこの国の魔導師のアルフレッドでございます。此度の召喚に力を尽くしてまいりました、お会いできて光栄にございます」
「‥‥‥‥わっ私は‥‥‥ただの学生の堀北志乃です!!しょ‥‥召喚って‥」
「まぁまぁ、ホリキタ様。ここは冷えますしホリキタ様の私室へご案内いたしますのでそちらでお茶でも飲みながらゆっくりご説明いたしますので。殿下もそのうちいらっしゃいますよ。あぁ、うちの殿下は素敵でしょう?ホリキタ様にピッタリでございます!今はあんなですがご結婚なされれば殿下も――」
「グレン!!‥‥‥ホリキタ様が困っておる!自重せんか!自ら冷えると言っておきながらペラペラとなにを!」
「おっと、失礼いたしました。さぁまいりましょうか?」
有無を言わせないグレンさんの喋りとペラペラ喋るグレンに睨みをきかせながらブツブツと文句を言うアルフレッドさんに囲まれて私はただついていく事しかできなかった。
はい、短くなってしまいましたorz