エピローグ:気ままな明日へ
この春、私は相変わらず大学生だった。
故郷を離れ上京し、はや三年目に差し掛かろうとしていた。
親は……父は相変わらず心配している。心配に心配した父は、彼氏に冬の決闘をふっかけて……以来少しだけ緩和した模様。
それはまぁ、いい。彼がその、認められたっぽくて嬉しいし、
内緒で同棲が正式になったというのは結構な進歩だろう。進歩だろうけど……。
「……ねぇ」
「なんだい?」
「大学行きたいんだけど」
「うん、僕も行きたかったよ。けどさ。行ってらっしゃいのキスの筈だったのにさ。君がやけに情熱的にするのが悪い。つまり君が悪いから僕はもう君を離さんぞぉ!」
いや、なんでだ。
という私の主張を無視して、彼は私を抱き締めたまま「柔~ら~か~い~」何て大喜び。
やれやれ。なんて思いながらも、私は結局彼のハグから抜け出せない羽目になった。
羽目はおかしい。だってこれは、私にとってはいい方向に話が転がっているのだから。
だって彼が悪い。今日は授業がお互いに一コマだけだったのに。終わったらデートの約束だったのに。
夕方の中途半端な時間に急なバイトが入るなんて……!
ちょっと寂しくて。けど頑張って夜まで待つよ。そっちも頑張って的な感じで……ちょっとムキになっただけだったのに。
何で別な方で頑張ろうというのか。
「ちょっと寂しくて涙目! ヤバイよ。僕の彼女が可愛くてあかん! もう食べるしかないっ!」
「意味がわからな……って、コラ! ここ玄関……んもぅ!」
別に語尾にかっこ嬉し。が入ってたりはしない。ないったらない。
でももうこうなったら止まらないのは知ってて。というか。
「変態。……ベッドがいいのに」
「君が悪い。ホント止まりません。ハイ」
まぁ、私も止まらない。
関係は進歩したけど、肝心の私達は結構変わってなかったりする。……それが幸せとは、決して口には出さないけれど。
「……優しくして」
「野獣にする台詞止めてくれませんかねぇ……。するけどさ」
何気ない平日の朝。玄関と、私達が炎上した。そんな日常風景でした。
これは、どこにでもいる男と女の話。
ヤマもオチもない。日々の一ページを切り取った――。そんな物語の詰め合わせ。
願わくば、なるべくこの幸せな日々が長く続きますように……。
因みに、一回目以降はベッドででしたとさ。
ちゃんちゃん。
~fin~




