いざ、清涼殿へ
三時間後・・・。
高次と一識はやっとのことで右大臣を見つけ出し、検非違使をつれて屋敷についた。
「望!!」
高次は勢い良く屋敷に入った。そして、その後に一識は続いた。一識は考えていた。なぜ、望が満月鬼ではないのか。そんなはずは無いと思っていた。しかし、現実に満月鬼は四人の前に姿を現した。初めて望と満月鬼に遭遇した時のように。しかし、望は陰陽師何らかの方法でこのような事をするのも可能である。一識は望が一体何を考えているのか解らなかった。
「おい、一識・・。これは一体どういうことだ・・・。」
彼らの目の前には誰もいない庭だけが映っていた。
「どういうことだ一識。満月鬼を捕まえたのではないのか。」
右大臣が威厳たっぷりに一識と高次を睨み言った。
たじろく高次をしりめに一識はあるものを見つけた。
それはすのこの上にあった。一識はそれを拾った。そして、それを握り締めた。
「高次、清涼殿に行くぞ。父上、安望の屋敷に行き望を捕えて下さい。詳しくは後ほど話しますがあの者は帝を今夜、殺す気です。」
一識は高次の手を引き、牛車に乗った。
「一体どういうことだ。一識。」
「さっき俺が拾った紙にはな、天球は今、還る。と記されていたんだ。正頼殿はおそらく望の元にいる。そして、さっき俺達の前に現われた満月鬼は瑠璃香姫だ。そして、瑠璃香姫が望にすべての行動をさせているんだ。望はおそらく正頼殿を瑠璃香姫に握られている。望は瑠璃香姫に脅され仕方なく・・・。」
「だったら、望の屋敷に行って、瑠璃香姫を捕まえて、望を俺たちでかくまった方がいいんじゃないか。」
「もう、遅いさ。望はもう清涼殿に向っているよ。それだったら、父上と検非違使は望の屋敷にやって、俺達だけで望を捕まえて、隙を見て逃がしたほうがいい。」
「しかし、そんなことできるのか・・・。」
「やらなきゃいけないんだ。」
その時だった。蹄の音と一緒に二人の名前を叫ぶ声が聞えた。
「一識様!高次様!」
一識は御簾を上げて声の主を探した。
それは正頼だった。正頼が馬に乗り二人の跡をついてきたのだった。
「正頼殿。無事であったか。よかった。」
「望は清涼殿に向いました。急いで下さい!望はこんなこと望んでないんです!誰かに止めてくれるよう願っているんです!」
「わかってる。だから、今、清涼殿に向ってるところだ。さあ、行こう。」
「私は、この馬で先に行きます。」
そう言って、正頼は勢い良く走っていった。
「あっ、正頼殿!」
一識も先に進んだ。