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満月鬼  作者: 安倍椿
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真実

夜。高次の屋敷。

そこには高次と望の姿があった。

「大丈夫か。高次。」

「望・・・。ありがとう。私は姉上が握っていた兄上からの文を見て。申し訳なくなってしまった。」

「そうか。」

「姉上が持っていたのは兄上が姉上に渡した求婚の歌だったんだ。姉上はとても兄上を愛していてくれていたんだ。それなのに兄上は・・・。」

「きっと、人はそれぞれなんだ。一途に誰かを想っていられる人もいれば、他の誰かを想うことでその者への想いを強くする者もいる。そして、一途になれない者もいる。しかし、高次。お前の兄上はけっして飛鳥姫を愛していなかったわけじゃない。いや、とても愛していた。だからこそ私は飛鳥に無実を証明しにいけたんだ。ただ、口には出さなかっただけだ。」

「無実を証明・・・。」

「ああ、飛鳥姫様は重い病を患っていて、余命いくばくもなかった。一日でもいいから生きて欲しいという気持から兼昌様はあの日の前日、私の元に来て何か良い方法はないかと相談にこられたんだ。そこで私は船岡山に満月の夜にだけ咲く延命草という稀な植物があるとお教えした。」

「そうか、あの日兄上はそれを探しにいっていたのか。でも、それなら公にも説明できたんじゃ・・・。」

「おそらく、兼昌様はその愛人の屋敷に行ってから船岡山にいったんだろう。それに、人目の無い船岡山にいたといっても、無実を証明する理由にはならない。だが、飛鳥姫様にはそれだけで無実の証明になる。だから、私は今日、屋敷に行ったんだ。」

「そうか・・・。」

「兼昌様は飛鳥姫様をとても大切に想っていらっしゃった。」

それを聞いた高次は身を伏して大声をあげて泣いた。


その時、一識の屋敷

そこには一識と正頼の姿があった。二人の雰囲気は重かった。

最初に口を開いたのは一識だった。

「兼昌様のためにも絶対に真犯人を見つけるんだ。私たちの手で・・・。」

「ええ。」


高次の屋敷

高次は伏していた身体を起こし涙で真赤な顔を望に向けた。

「私は決して、満月鬼を許さない。いつかきっと探し出してみせる。協力してくれるか。望・・・。」

「勿論だ。」

望はやさしい表情でいった。

「ところで、望。きみに一つ聞きたいことがあるんだ。」

「何だ。」


一識の屋敷

「正頼殿一つお聞きしたいことがある。」

「何でしょう。」

「望殿とはいったいどういう関係なのか教えてくれないか。」


高次の屋敷

「正頼殿とは一体どういう関係なのか話してほしい。」

望は庭の遠くを見た。


正頼はかしこまった顔をして一識を見た。


「私たちは元夫婦です。」

「正頼は私の元夫だ。」

正頼ははっきりと、望は呟くように言った。


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