表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満月鬼  作者: 安倍椿
13/15

放たれた矢

「望!!どこにいる!?」


高次と一識は紫宸殿までたどり着いた。


二人は辺りを見ました。満月が二人の視界を助ける。


「よくきたな二人とも・・・。」


その声を聞いて二人は玉座のほうへ向き直った。そこには帝がいた。


しかし、その声は違った。その声は二人の聞きなれた声、望の声だった。


「遅かったじゃないか。待ちくたびれたぞ。」


そういって何かがゴトンといって転がってきた。


「うっ・・・うわぁ!!」


「帝!!」


それは帝の首だった。


望は帝の遺体を玉座からどけ、自分が玉座に着いた。その瞬間、望の眼が青々と光り始めてあたり一面が青の炎で覆われ始めた。


「もう、お前たちは手遅れだ。天球はわが一族の元へ還った。お前たちはこれから私たちにひれ伏し、この世界はわが一族のもり、暗黒と恐怖に包まれる。」


「そんなことはさせない!!」


一識は剣を抜いて望にむかって歩き始めた。そして、望の首を切り落とした。


首は地面に落ち、真っ赤な血しぶきをその体の中からあふれ出させた。


一識は肩で息をしながら、血しぶきを浴び望を見続けた。


「これで私が死ぬと思うか?」


望は眼を見開き、体は一識の襟首をつかみ一識を投げ飛ばした。


望の体は望の首を拾うとそれをもとに戻した。


そして、飛び上がり、一識の首に剣をつきたてた。


「ここで、私への非礼をあやまればお前の命許してやろう。さぁ!!どうする!!」


「やめろ!!望!!」


そういって高次は一識から望を突き放した。望は剣を高次に突きつけた。


「望、こんなことしても何にもならない・・・。もう、お前の一族の時代はとっくに終わってるんだ!!」


「だまれ!!わが一族はこれから復活するのだ!!そのためにながきに渡り、一族の者たちは魑魅魍魎に姿を窶しても待ち望んできたのだ。お前たちには言い知れぬ恐怖を与えてやる!!この世界の支配者は私たちなのだ!!」


「そんなことはさせない!!」


一識が背後から望に切りかかった。


「小賢しい!!」


望は全身から青い光を放ち、二人を吹き飛ばした。


そして、二人の首をつかみ、持ち上げ首を絞め始めた。


「死ね。」


「のっ・・望、やめてくれ・・・・。」


「望・・・・。」


「やめるんだ!!望」


そこに現れたのは正頼だった。


正頼は望に向けて弓を構えた。


望は修羅の表情から一変して少し、涙を浮かべながら正頼のもとへ歩み寄った。


正頼は弓を下ろしてしまった。そして望はその正頼の震える手を握って胸に寄せた。


「どうしてわかってくれないの・・・。やっと二人が結ばれる時がきたのに。やっと、なんの邪魔もなく一緒にいられるのよ。」


正頼は黙って聞いていた。決して目をあわさなかった。


「正頼。私はずっとあなたしか見ていなかった。どんなときもあなたを想って胸が張り裂けそうだった・・。でも、この世界のままだったら二人は永遠に離れ離れ・・・。だから私はこの世界を手に入れようとがんばったのよ・・・・。なのにどうして私に弓を引くの・・・。あぁ・・・。」


望は正頼の胸に取り縋って大声で泣き始めた。


正頼は抱きしめなかった。そして、大きく深呼吸をして、望を突き放し、弓を構えた。


「ひどい・・・・。どうしてわかってくれないの・・・。」


正頼は何も言わなかった。すると望の表情は一変した。


「わかってくれぬならもうよい・・・。お前も殺すまでだ。射貫くならするがいい。お前が気の済むように。そんな小細工じゃあ相手にならんからな。」


そういって立ち上がった。不気味な笑みを浮かべた。


正頼は思いっきり弓を引いた。そして、目をつぶった。


そして、小さくつぶやいた。


望、愛してるから・・・。


弓は正頼の手を放れた。












評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ