終末の遺品商Lv999
曇天の下、数万のゴブリンが荒野を練り歩く。
最後尾で担がれた玉座に腰かけるのは、錆びた王冠を被る大柄なゴブリンだった。
ゴブリンの王は卑屈な表情で前方を睨んでいる。
遥か先には、城壁に囲われた人間の都市がそびえ立っていた。
荒野を踏破したゴブリンの軍勢は、城壁を粉砕して都市内へと侵入する。
無力な人々は為す術もなく逃げ惑う。
「助けてくれぇ!」
「もうおしまいだ!」
「世界は滅びるんだっ!」
刹那、数十匹のゴブリンの軍勢が爆散した。
次の瞬間、また別の場所で数百匹のゴブリンがバラバラに飛び散る。
そのような現象が連発し、都市内にいたはずのゴブリンは瞬く間に数を減らしていく。
異変に気付いたゴブリン達は一か所に固まって警戒する。
そこに現れたのは無精ひげを生やしたみすぼらしい男――遺品商ラクレだった。
ラクレは極太の剣を掲げて皮肉っぽく笑う。
彼は刃を一瞥して自慢した。
「気になるか? 轟剣ヒューツっていうんだ。お前らに使うにゃ勿体ない名剣さ」
ラクレは返答を待たずに轟剣を掲げた。
そして渾身の力で振り下ろす。
「ぶっ飛びやがれ」
轟剣ヒューツの刃が地面に叩き込まれた。
発生した破壊力はその場で炸裂せず、ラクレの意思に従って地中を潜行する。
数秒後、圧縮された破壊力がゴブリン達の足元で一気に解放された。
つんざくような爆音と共に、悲鳴を上げたゴブリン達の血肉が迸る。
「あー、疲れるな。そりゃそうか。本来、俺如きが扱える代物じゃねぇからな」
肩を回すラクレは、じっと一点を見つめる。
崩れた外壁を乗り越えて現れたのはゴブリンの王だった。
その手には赤と青の二振りの剣が握られている。
ラクレは意外そうな顔で呟いた。
「炎剣ラミラ、氷剣ベリオン……こんなところで見つけられるなんてな」
ゴブリンの王が二種の剣を振り下ろそうとする。
しかし、その前に両腕の肘から先が綺麗に消失していた。
遅れて断面から鮮血が溢れ出す。
高速移動したラクレは、ゴブリンの王の背後にいた。
小脇には、奪い取った二種の剣を抱えている。
「すまんね。お前にこいつらを振る資格はねぇよ」
ゴブリンの王が咆哮を上げた瞬間、その首が刎ね飛ばされた。
轟剣を鞘に戻したラクレは、新たな武器たちに告げる。
「さあ、俺と一緒に行こう。前の持ち主ほどじゃないが、なるべく頑張って使いこなすよ」




