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ウンディーネシリーズ番外編  作者: 咲佐きさ


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4/7

ルーの誕生日前日の話

『気の狂った亡霊どもよ、欲望を目当てに奔れ』という題で短編にあげていた話です。まとめるためにこちらに移動しました。

 シャンゼリゼのブティック前で、ショーウィンドウに映る前髪をちょいちょいと整える。今日は朝から上機嫌なセデュが念入りにブラッシングをしてくれたおかげで、僕の髪もこころなしか艶めいて見える。

 明日は僕の誕生日で、セデュは1日予定を空けておいてくれているそうだ。

 忙しい彼の時間を僕のために浪費することに罪悪感がないわけじゃないけど、まあ1日くらいいいじゃないか、なんて開き直った気持ちもある。

 ちなみにセデュは今日の夕方からオフなので、こうして待ち合わせているというわけだ。

 ショーウインドウには、セデュに買ってもらったばかりのラクダ色のダッフルコートに、チェックのズボン、コートと同色のベレー帽をちょこんと頭に乗っけた僕が映っている。

 僕の趣味より若干、可愛さに寄っているというか、パディントンみたいなコーデに見えなくもないけど、まあたまにはね。セデュにサービスしてやるのもいいだろう。…1年に数回しかない、記念日、なんだし。なんだかこんなの、照れくさいけど。

 長い前髪のかたちがいまいちキマらなくってガラスと睨めっこして格闘していると、ショーウインドウの中のマヌカン人形と目が合う。…あんまり見ないでくれよ。悪いけど、僕は彼氏を待ってるんだ。残念だけど、君とは遊べないよ。僕の彼氏はねえ、すっごく格好いいんだ、優しくて、でろでろに僕を甘やかしてくれるんだ。へへへ、いーだろー。

「ルー、…悪い、遅くなった」

 唐突に声をかけられて僕は飛びのく。セデュが近づいてくるのに、全然気が付かなかった。店の時計は15時半を差してる。…約束の時間より、30分も早い。

「全然待ってないよ! ていうか早い! 君ちゃんと仕事終わらせてきたんだろうな!? ちなみに僕は君が来るまで、暇つぶしにうろうろしてただけだから!」

「…ああ、…首が寒そうだ」

 僕の言い分をやすやすと受け流して、セデュは首に巻いていたワインレッドのマフラーを解いて、僕の首に被せる。

 ふわりと暖かくて、なんかいい香りがする。肌の弱い僕にはウールのマフラーはちくちく痒くて、でもセデュに抱きしめられてるみたいで安心するから、解いてほしいとは言えなかった。

 いつもの、黒のチェスターコートにシンプルなアーガイル模様のVネックセーターを着こんだセデュはむき出しの首元が無防備で、視線がついついそこに吸い寄せられる。

「食事まで少し時間があるな。どこに行きたい?」

「…え、ああうん。じゃあ、君の出ている映画でも観に行ってみる?」

「シャンゼリゼか、ポワソニエールに行くか。今は何が掛かっていたかな…」

「移動もめんどうだから、近場でいいよ。行こ!」

 セデュに甘えるように腕を組むと、彼の頬が匂やかなアザレアみたいに綻ぶ。

 溶けてるみたいな飴色の目に見つめられ、身体がほかほかして、熱くなってくる。

 僕はムズムズを抑えて、彼の腕を引っ張った。



 立ち並ぶ映画館では最新作の『シラノ・ド・ベルジュラック』と、ボリス・ヴィアンの『日々の泡』のリバイバル上映がやっていた。

 『シラノ』のほうはセデュは主演じゃあなくて、アホの美青年騎士様の役だ。…クリスチャンを演じるには、セデュは理知的すぎるというか、知性が顔に滲み出ているようなタイプなので、ミスキャストと言わざるを得ない。まあ彼の顔を観に来る大勢の女性ファンをあてこんでのキャスティングなんだろうから、僕がどうこう言うような問題でもないけど。

 そんなわけで、僕らは彼が数年前に主演した『日々の泡』のほうを観た。

 画面いっぱいに散らばる花びらだとか、シャボン玉だとか、スケート靴にカクテルピアノ、ハツカネズミに心臓抜きの大ハサミ、肺に睡蓮が咲く少女、と原作どおりなんだろうけど荒唐無稽なことが次々起こる童話のような芸術映画で、めまぐるしい映像とめくるめくような音楽の中、セデュは純朴な青年コランを演じていた。愛する少女の治療のために、没落する主人公だ。

 25か、それとも26かな。まだ20代半ばのセデュは初々しくて、可愛らしくて、一生懸命で、…何かを求めるような、焦がれるような、切実な表情がひどく寂しげな青年として、スクリーンで生きていた。

 僕の隣に座ったセデュ本人は淡々としている。仕事は仕事、と割りきっているみたいで、自分の出た作品もあんまりちゃんと観たことがないといつか言っていた。

 でも僕は、スクリーンのセデュを観て、僕が離れていた間のセデュが観られて、なんだかうれしかった。

 彼が俳優をしてくれてたおかげで、何歳のセデュはこんな感じ、ってスクリーンを観ればわかるんだから、それってすごく、贅沢なことなんじゃないか? って思う。

 …離れている間、僕はセデュの映画は観たことがなかった。

 成功している彼が羨ましいとか、没落した自分が怨めしいとか、そんな感情が、まあなかったとは言わないけど、それよりもっと、僕の手の届かないところに行ってしまったセデュを、目の当たりにするのがつらかったから、ってのが、ほんとのところだ。

 あの頃の僕は、彼が生きて元気にしてるってことがわかるだけで、十分だって思ってた。

 彼が確かに生きているんだから、僕も生きてやるぞって思ってたんだ。

 …二度と彼に会えなくっても。

 ぎゅう、とセデュの手を思わず強く掴んでしまった僕の手を、彼が優しくそっと握り返す。

 慈しむように優しい、いつもの握り方で、セデュの体温が僕に移って、どくどくと暖かい。

 僕は彼の柔らかいマフラーに頬を寄せ、彼の甘い匂いを嗅いで、デューク・エリントンの軽快で哀切な調べを聴いていた。


 映画館を出たらもう日が暮れていた。ちらちらと雪も降っている。さむいわけだ。

 パリっ子は基本的にはみんな個人主義で、他人に無関心なので、セデュと僕が腕を組んで歩いていても誰もじろじろ見たりしないし、握手やらサインやらを求めてセデュの前に列を作るようなこともない。

 だから僕たちはぞんぶんにいちゃつけるってわけだ。サイコーだね。

 レストランの予約まではやっぱりまだちょっとだけ時間があって。セデュは僕に要望を尋ねる。今日と明日は、まるっきり、僕のためだけに使おうって考えてくれるんだろう。まあ、今日明日だけじゃなくて、だいたいいつも、僕といるときのセデュはそうなんだけど。

「モンマルトルに新しくできた店に行ってみたいんだ。いいかな?」

 セデュは僕の頭に乗った雪を軽く払って、ゆるみかけたマフラーを巻きなおしてくれながら了承する。寒さに赤く染まった僕の鼻先をちょんと摘まんで悪戯っぽく笑う。

 少年時代の彼を思わせる表情に吐く息が熱くなる。

 僕と再会してから、セデュはなんだか、子供みたいな顔をするようになった。これは僕の悪影響かもしれない。…大人なセデュも、子供っぽいセデュも、どっちもひどく魅力的なので、全然問題ないんだけどね、僕的には。

 僕はセデュの腕を引いて流しのタクシーに乗り込み、夜の帳がおりつつあるモンマルトルへ向かった。



 坂道をいくらか下って、裏道に入った通りに、その店はある。

 陰気な雰囲気の冷たい階段を下りると一転、蛍光ピンクのライトが光る看板が見えてくる。

 店内では大音量のUKロックが掛かっていて、スキンヘッドの店員がカウンターで煙草を吹かしている。この寒いのに二の腕がむき出して、そこに裸の女の人のタトゥーがある。いかにも怪しげな佇まいだ。

 ガラス張りのショーケースには、黒やピンク、肉色の毒々しい物体が所せましと陳列されている。店内にはほかにも大人向けの雑誌やら、ゴムやら、裸のマヌカン人形もある。

 お育ちのいいセデュはこの店に入った時から固まってしまって、ずっと無言だ。

 僕が棚に積み上げられたゴムの箱を取り上げても何も言わない。

「君のゴム、終わっちゃってただろう? 僕のもそろそろ切れそうだし」

 ハイ、と何食わぬ顔で差し出しても彼は無表情のままだ。どうコメントしたらいいのかわからないって感じの顔だ。

「もしかして自分で買ったことなかった? まさかメイドさんに買わせてたのかい!?」

「…バロットに、頼んだことはあった」

「あーそっか。彼なら詳しそうだよねえ、非合法のお店とかも…」

「…」

「…」

「…」

 沈黙である。なんというか、あまりにウブな反応にこっちが戸惑う。いや、ゴムを使うようなことをしておいてその反応はどうなんだ? 今夜も君は、その、僕とゴムを使うようなことをする予定だったんじゃあないのか? というか僕はそのつもりだったんだけど!?

「あ、これ、君の大きさくらいだね」

「…」

「こっちは僕かな。なんていうか、形? がさ。こう見ると、結構個人差ってあるもんだねえ」

「………」

 グロテスクなピンクの男性器の模型を指さし話題を作るも、セデュは口をぱくぱくさせるだけで何も言えない。ただ、眉間にどんどん深い皺が寄って、仏頂面になってきている。うーん、そろそろ彼のお小言が始まるかなあ? それはそれで楽しみだ。

「…欲しいのか」

「んえ?」

「そういうものが、使いたいのか? おまえは」

「えっ…」

「…おまえが使いたいのなら、私には止められないが、…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…いやいやいや! 待ってくれ、ちょっと、ひとを淫乱みたいに言うのはやめてくれ! え? 僕が悪いのかこれ!?」

「…そういう意図で、連れてきたのではなかったのか?」

「いやそこまで考えてないって! それに道具なんて使ったら、…」

「…今よりも、スムーズに、できるかもしれないな」

「や、…いや、だよ、それは。やめてくれよ」

「…」

 狭い店内で、うようよ電動で動くぶっとい毛虫みたいな黒のディルドの前で、僕らふたりは真っ赤になって口ごもる。カウンターの男は興味なさそうに、極彩色のグラビアを眺めていた。



 結局、レジカウンターに置いたのはゴムの箱2つだけだ。…するときに役立つような、ローションとか、刺激剤? みたいなのもあったけど、とりあえず今回はこれだけでいい。僕たちはまだ、その、セックスに創意工夫が必要なところまでいけてはいない、ので。

 渋々ながらカードで払おうとするセデュを制し、尻ポケットから出した現金を僕はカウンターに放り出す。

「ばかだな、履歴が残るだろ。こういう店では、現金がいいの」

「…今更のような気もするが」

 半ばむりやりアダルトショップに連れ込まれたセデュは遠い目で呟く。

 確かにいくら個人主義のパリっ子でも、今をときめく人気俳優が男と一緒にアダルトショップで買い物するところなど目撃したら、遠巻きにヒソヒソするだけじゃあ止まらないかもしれない。

 …そういうところまで考えが及ばなかった。相変わらず、軽率な僕である。

「…じゃあちょっと離れて歩く?」

「それは嫌だな」

「…」

 即答されて黙り込む。チャラチャラと渡されるお釣りのコインをポケットに突っ込んで、ゴムの箱はコートのポケットに突っ込んで、僕は足早に店を出た。



 一応、立ち止まってきょろきょろ通りを見渡して、パパラッチの類がいないか確認する。

 日の落ちたモンマルトルはムーランルージュの電飾に赤く石畳を染められて、行き交う人影はみなそわそわと浮ついているように見える。

 毛皮に網タイツ姿の娼婦が紳士の手を引いて誘い、通りでは客引きする声、どやどやと大学生くらいの集団がふざけ合いながら歩く姿もある。

 大学生の集団が行ってしまってから、僕は後ろで怪訝な顔をしているセデュを見上げた。

「いまだ。いいよ、行こう」

「…探偵ごっこでもしているようだな」

「そんなんじゃないけどさ。君がまた悪く言われるかもしれないってのに、平然とできないっていうか…」

「ここに連れてきたのにか?」

 なんだか面白そうに言うセデュを睨みつける。こいつ、さっきはあんなにモジモジしてたくせに。店に出た途端、余裕ぶりやがって。

「お坊ちゃんにはいい社会勉強になったろう。今みたいな店、君は初めてだろう? 僕は何回も来てるけどね!」

「できたばかりなのに?」

「この店だけってことじゃなくて! もう、ワザと言ってるだろう!」

 ふふ、とほどけるように笑うセデュがにくったらしい。照れて恥ずかしがるこいつを揶揄ってやろうと思ったのに、これじゃいつもとおんなじだ。

「君が思うより、僕はずっと薄汚れてるってこと。それだけ」

 むしゃくしゃして、ついつい余計なことを言ってしまう。セデュはふと黙り込んで、僕の手を握る。

 これから食事に行こうってときに、食欲の失せるようなことばかりしちまう。僕ってどうしていつも、こうなんだろ。



 汗が冷えたシーツは湿って冷たい。僕は身体をまるくして、セデュの寝ていた場所についたシーツの皺を睨みつける。

 …今日もだめだった。ちゃんと最後までできなかった。どうしても痛くて、声が抑えられなくて、生理的な涙が止められなくて。

 そうなるともう、セデュはいつも、途中でやめてしまう。僕を傷つけたくないんだって、大切にしたいからだって、彼は言うけど、これじゃあいったいいつになったら僕は、彼のものになれるのかわからない。

 …もしかして、無理なのかな。

 だって到底、僕のちっさいあそこに、…セデュのあれ(詳細は省く)が、入るとは思えないし。

 …世の中の恋人同士は、どんなふうにして乗り越えるんだ? こういう、高い壁…いや小さい穴…の障害を…。

 セデュは今ひとりでシャワーを浴びている。さあさあと降り続く雨のような、静かな音が聞こえる。

 できなかったいつもの夜、セデュは僕をあやして、寝かしつけて、それからいつもひとりでシャワーを浴びる。

 神経質で潔癖症のきらいのある彼だから、汗みずくの身体で眠りたくないんだろうって漠然と思っていたのだけど、…もしかしたら、はち切れんばかりに怒張した息子さんを、鎮めてやっているのかもしれない。…いやそれ以外考えられないな。一応、手で互いに慰め合って1回ずつ出しはしたけど、あんまり何回ももたない僕と違って、その、セデュの体力はありあまってる感じだったし。


 …ますます申し訳なくなってきた。ベッドカバーに潜ってうんうん唸る。こんなんで果たして、恋人同士って言えるのか!? 最後までさせてくれない彼女なんて、僕は一度も持ったことなかったぞ! 皆、相手のほうからグイグイ来てくれたから、つきあったような子たちだったけど。こんなんじゃあ、たとえセデュが浮気しても、しかたがないんじゃあないか? 僕に責める権利なんてあるか? いやないだろ、どう考えても。

 どんどん気分が落ち込んでくる。セデュよりはるかに経験豊富なくせに、彼をリードできない自分が悔しい。あいつを悦ばせてやりたいのに。僕しかいないって、夢中にさせてやりたいのに!


「ううううう…」

 ベッドの中で呻っていたら、がばりとカバーを捲られた。

 そこにはセデュの、困惑したような、躊躇うような瞳があった。

「大丈夫か? 具合でも悪いのか」

「だいじょうぶ…自分の情けなさに、のたうち回ってただけ…」

 ますます困惑を深めるセデュが見ていられなくって、僕はのろのろ身を起こす。


 ここは、セデュが予約してくれたレストランにくっついてる高級ホテルだ。

 僕があんまり大きな声を出すから、屋敷で致すよりも、ここのほうが、気兼ねなくできるって思ったんだろう。それだけあいつも、この日を期待してたってことだ。

 …不甲斐なさに、身の置き所もない。穴掘って埋まって、そこに定住したい。


「君、浮気したいならしてもいいよ…君にはそうする権利がある…」

「一体、何の話だ」

 セデュは呆れたように言って、軽く笑って、上半身裸の、腰にタオルを巻いたままのひどくセクシーな姿で、僕の隣に腰かける。

「日付が変わった、25歳の誕生日おめでとう、ルー。生まれてきてくれて、ありがとう」

「…これで僕も25かあ。今日、…もう昨日か、スクリーンで観た君と、同い年くらいかな」

「お前を必死に探し求めていた頃の私だな。…あまり思い出したくもないが」

「そうなの? 僕は嬉しかったけど。僕の知らなかったころの君を観られて…」

「ルー、…」

 セデュが熱っぽく囁いて、僕を抱き寄せる。

 素っ裸のままの僕の胸と、シャワーを浴びてさっぱりした彼の瑞々しい肌とが重なって、ドキマギする。…もう1回、やるのかな。やるとしたら、今度は、絶対叫ばない。歯を食いしばって我慢する。そうしたら今度こそ、最後までできるかな?

「誕生日プレゼントだ、受け取って欲しい」

「…え」

 僕を腕に抱いたまま、セデュが小箱を渡す。戸惑いながら紫のベルベットの小箱を開けると、飴色の宝石の嵌った一対のピアスがあった。 

 銀色の針の部分を摘まみ上げた僕は、今はエメラルドのピアスが嵌っている耳にそれを翳してみる。

「きれいだね、月の光みたいにきらきらしてる。…ありがとう、大事にするよ」

「…うん」

「エメラルドと、こいつと、一個ずつ付けてもいいな。そうしたら、君にもう一方をあげる。お揃いだよ。いやだったらつけなくってもいい。持っててくれるだけでもいいよ、君はあんまりピアスってイメージでもないしね。つけたらなんだか、色気が増して、もっとモテちゃいそうだし…」

 セデュはほほえんでそんな僕を見て、顔を傾け、ふわりと羽のようなキスをくれる。

 セデュにキスされると、僕は余計なことはなんにも考えられなくなって、へなへなになっちゃって、ぱたりとシーツに倒れる。

 ギシ、とベッドを軋ませて、僕に覆いかぶさった飴色の瞳が潤んで僕を見つめる。美味しそうな色だと思って、僕は顎を上げて、彼の眼球をぺろりと舐めた。

 甘い匂いのセデュの瞳は少しぴりっとする塩味で、ぱちぱち瞬く長いまつ毛が舌に残る。

「アハ、きみはどこもおいしいねえ」

 舌を伸ばしてへばりついたまつ毛を摘まみ上げる僕の手をセデュは性急に掴んで、それでまた、今度はいくぶん切羽詰まったように、舌を絡ませる。

 朝が来るまでそうして僕らは、互いの形をたしかめあった。


 …この話はここまで。あとは僕らの、秘密だからね。



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