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公爵令嬢は現代でも完璧淑女を貫く  作者: あんこ
第一章 ”令和”という時代へ
2/18

快適な空間

(どこかしら、ここは)


ふと目を覚ますと、私の周囲は一面、色とりどりの花に包まれていた。どこを見ても果てしない花畑。視界の彼方まで、咲き誇る花々が風にそよいでいる。


ほんのり甘い香りが鼻腔をくすぐる。見たこともないような花もあるけれど、不思議と不快感はなかった。まるで夢の中にいるような、美しい景色だった。


私は静かに起き上がる。柔らかな草の上に寝転んでいたらしい。とはいえ、屋外で横たわるなんて、貴族令嬢としてはあるまじき行動。すぐさま体勢を整え、スカートの裾を払い、丁寧に立ち上がった。


(とりあえず、状況を整理しましょうか)


冷静に思考を巡らせる。私の身に起こった出来事は、まるでおとぎ話のようだ。


足元に穴が開く

穴に落ちる

眠気に襲われる

目を覚ましたらお花畑 ←今ここ


(……整理したはいいけれど、意味が分からないわね)


花の香りと穏やかな風に心は落ち着いているものの、事態は謎だらけだ。まず、なぜ足元に突然穴が開いたのか。どう考えても自然現象ではない。


(魔法かしら? でも魔力の気配はなかったはず。隠されていたのかもしれないわ。私は公爵令嬢。誘拐という可能性も、ありえる……)


自分の立場は十分に理解しているつもりだ。私の身分を狙って何者かが動いたのかもしれない。だが――


(こんなに快適な誘拐なんて、聞いたことがないわね)


見渡せば、花畑の一角に椅子とテーブルが設えてある。なんと、白いパラソルまでついていて、日除けも完璧だ。女性の美を守る繊細な配慮が感じられる。


(……日焼けは美容の大敵。公爵令嬢たる者、外見の管理も嗜みのひとつ)


テーブルには、香り立つ紅茶と焼き菓子が用意されていた。誰が用意したのか分からないけれど、今はありがたく頂戴するのが礼儀だろう。


私は背筋を伸ばし、優雅に歩いてパラソルの下へと向かった。無駄な動きはひとつもない。座り方ひとつにも淑女としての品格を忘れず、椅子に腰掛ける。


(とりあえず、落ち着いて状況を――)


その時だった。


「ようこそ、我が神界へ。待っていましたよ、グレイシア」


不意に響いた男の声に、私は反射的に周囲を見回した。誰もいないはずの空間。なのに、確かに耳元で語りかけられた。


(……今のは、誰? そして“神界”ですって?)


得体の知れない何かが、確実に始まりを告げていた。

更新遅くなりますが一週間に一話は投稿していくつもりなので、根気強く待っていてもらえると嬉しいです!

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― 新着の感想 ―
こういう冷静な感じのキャラ好きです!
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