表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢は現代でも完璧淑女を貫く  作者: あんこ
第二章 新たな人生
10/18

家族の中で

私、三条美咲は、上流階級の家庭に生まれ、幼い頃から日々厳しいしつけの中で育った。


父・三条義晴は冷静沈着で厳格な実業家。家族に対しても期待と規律を求めた。


母・三条和子は元華族出身の教養ある女性。娘の品格を何より大切にし、礼儀作法を厳しく教え込んだ。



ある日の夕食後、母が静かに語りかけた。


「美咲、お辞儀の角度が浅いわ。礼には、心が表れるもの。何度も言うけれど、忘れてはならないのよ」


私は背筋を伸ばし、深く頭を下げる。


(淑女は形だけではなく、心から敬意を示すべき……)



父はビジネスの話をする時とは違い、家族の前では時折柔らかい笑みを見せる。


「美咲、学問にも励め。将来は、三条家の顔として恥じぬようにな」


言葉は厳しいが、その重みは愛情に裏打ちされていると知っていた。


そんな時、私は心の中で自分に誓う。


(私は、ただの三条美咲ではない。グレイシア・オズワードとしての誇りを携え、この家でも淑女であり続ける)



しかし、日常の中での立ち居振る舞いは容易ではなかった。


周囲の視線、細やかな言動のチェック、そして時には無言のプレッシャー。


例えば、使用人の前でも「美咲様」として礼儀正しく振る舞うことが求められ、少しでも崩れると、すぐに母から注意が入った。


「美咲、咳払いの音ひとつとっても、淑女は品を保つのよ」


(前世で”白百合の君”とまで言われた私でもまだまだ完ぺきではない)


そのたびに私は小さく息を吐き、再び背筋を伸ばした。



それでも、心の中で私は確かなものを掴みつつあった。


幼いながらも、父や母の期待を受け止め、ひよりとの友情を糧に、自分の歩む道を模索していた。


「完璧に」とはまだ遠い。けれど、少しずつ「私らしい淑女」に近づいている。


そんな日々が続いていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ