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公爵令嬢は現代でも完璧淑女を貫く  作者: あんこ
第一章 ”令和”という時代へ
1/18

プロローグ

「あら」


「お嬢様っ!」


突然、足元の感覚がふっと消えた。視界がぐらりと揺れて、私を呼ぶ侍女の顔が一瞬にして遠ざかっていく。どうやら私は落ちているらしい。下へ、どこまでも、深く。


(これは……少しまずい状況なのではなくて?)


冷静さを失わずにそう思う自分に、わずかに安心する。パニックに陥るような粗相は、貴族としての品位を損なうものである。


周囲を見回しても、見えるのは真っ白な空間だけ。まるで何も存在しない、空っぽの世界。けれど不思議なことに、不安よりも安らぎの感覚が勝っていた。ふわふわと身体が宙に浮かぶような感覚。温かくて、優しくて、まるで――


(母様の腕の中のよう……)


それは私にとって、幼いころの記憶のなかでもっとも安らげる場所だった。けれど、今はもう戻ることは叶わない。


(それにしても……どうしてこんな場所に?)


思い返せば、さっきまで私は確かに屋敷にいた。侍女と一緒に、午後の紅茶の準備をしていたはず。それが、急に足元が崩れ――


(……そう、不思議な穴に落ちたのよね)


まるで絵本の中の冒険譚みたいな話だけれど、現に私は今、落ち続けている。しかも、かなり長い間。普通の落下ではあり得ない。これは尋常ではない事態だ。


(魔法……かしら?)


そう思っても、魔力らしきものは感じられない。けれど何かに守られているような、穏やかな感覚は確かにあった。


(……あら?)


意識がふわりと揺れる。頭がほわほわと軽くなって、まぶたが勝手に下がってくる。いけない、これは眠気。しかも、ただの眠気ではない。意識を奪おうとする強い力がある。


(……本当に、まずいわ。こんなところで……気を……)


抗おうとしたけれど、まどろみはそれすらも優しく包み込んでしまう。


(せめて、姿勢だけは……崩さず……)


意識が完全に落ちるその瞬間まで、背筋を正していられたかどうか、それだけが少し気がかりだった。


そして、私――グレイシア・オズワード公爵令嬢は、意識を失った。

これからも連載していく予定なのでどうぞよろしくお願いします!

面白いと思ったら感想などと書いてもらえると嬉しいです…!

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― 新着の感想 ―
疑問をじこ解決するスタイル好きww
続きが楽しみです!すごい冷静ですね…お嬢様…
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