恋したいね、できるかな
恋愛など興味はありませんね、何て言う今時の高校生はどのくらいいるのだろうか?
自分としては幼馴染みや小学校の同級生、クラスの人とも卒なく会話出来ると自負している。
だからそこまで女子とも意識せずに話せていたし恋愛もしてみたいと思っていたのだが。
「青春よ、高校生は青春しなさい。」
なんて言ってきた一年Dクラスの担任春川夏希先生。
彼女は黒髪ロングの大人な女性で生徒からも人気のあるかっこいい先生だ。
「青春はしたくてもDクラスに所属してる時点で詰んでますよ。夏希先生。」
「そんなことはないぞ。女子と話せば世界が変わる!」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだよ、世の中は。さて、男子たる君には女子たる私の頼みを聞いて貰おう!」
「先生は女子で………あ、何でもないです。」
僕の高校生活は始めは順調そのものだった。
今は入学してから約2ヶ月の6月半ば。
この2ヶ月間は酷いものだった。
4月は特に問題もなくお互いに自己紹介し合いながらクラスメイトとも徐々に打ち解けていっていた。
ただ、ゴールデンウィーク前がやけに女子達は色めきあっていた気がする。
ゴールデンウィークが明けた5月に入ってからの女子達は絶望した表情の子や異様に男子と話したがらない子など絶対何かあっただろと言いたくなるような状況だった。
それはDクラスにいる3人のイケメン男子が原因であった。
クラスメイトの女子は全員ゴールデンウィーク前後にその3人に告白していたようなのだ。
(春川夏希先生の面談確認済)
その結果見事に全員撃沈し、クラスの雰囲気は最悪になった。
けれど、イケメン3人組以外の男子達もなんとか女子達に話しかけ雰囲気をよくしようとしたんだ。
気がつくと男子が一人、また一人と女子達の精神攻撃にやられ不登校になってしまった。
だが、自分だっていつまでも怯えていられない。
さて、今日は元気よく挨拶していこうじゃないか。
お、今早速目があったぞ。
自分の隣の席の桜川 紅葉さんだ。
「おはよう!桜川さん!今日いい天気だね!」
「うっさい、話しかけないで!これだから男は嫌なのよ!」
お、今度はいつもより遅めに登校してきたギャルっ子こと綾瀬 真希さんだ。
入学当初は誰にでも明るく接してくれていたギャルっ子だ。もしかしたらまた明るい笑顔で教室の雰囲気を変えてくれるかも。
「おはよう!綾瀬さん!今日は慌てて来たみたいだけど何かあったのかな?」
「お願いだから私の視界に入らないで。」
……さあ、気を取り直して他の人に
キーンコーンカーンコーン♪
「みんなー!席についてー、HR始めるよー」
春川夏希先生が来てしまったので今日はここまでのようだね!
明日も頑張ろう!!!
お昼休みになり、屋上へ駆け込む僕。
ガチャガチャ、ドン。
ドアを静かに閉めた。
手で口を塞ぎながら叫ぶ。
「おおおおー、ああああー!!もう無理だろこんなーん!!」
~2日前~
「頼む!残ってるのは秋山しかいないんだよ。」
僕の名前は秋山 真冬。
担任の先生、春川 夏希先生に頼まれたのは他でもない、クラスメイトの女子達に話しかけ告白のトラウマを克服させよという依頼だ。
「あ、僕も明日から学校来ません。」
「そうか、引き受けてくれるか!」
人の話を聞かないタイプのようだ。
「すみません、間違えました。」
「おお、やる気充分のようだね!」
「やっぱり学校やめます。」
「良かった良かった、君以外のまともな男子生徒が最近学校に来なくなって焦ってたんだよ。」
やはり人の話を聞かないタイプのようだ。
「僕もう学校やめ」
「おい、秋山!それ以上言うなよ!言ったら今後点数関係なく補習授業に強制参加だ!」
選択肢はハイかYES!しかないようだ。
「わかった。その代わり協力してほしい。」
「おい、教師にその態度はなんだ?」
あなたからの依頼ではないですかー。
~時が今に戻る~
何なんだよ、クラスメイトだろうが!!
もっと優しくしてくれてもいいじゃないか!
じゃなかった、どう解決したものか。
うーん。
あれ?誰かの気配がするな。ここ屋上だから僕の前に誰かが先に来ていたのかな?
とりあえず人がいそうな物陰を覗いてみますか。
「多摩野くん、胸毛が一段と輝いてるよ!」
「生天目くんのほうがすごいよ!」
「木尾くんのお尻もなかなかプリティーだね!」
……僕は何も見なかった。
何も見えてない。記憶から消そう。
僕は屋上から離れた。
夢中で階段を下りて購買エリアまで来ていた。
何を買おうか悩んでいるとふと先ほどの光景を思い出す。
そういえばあの3人組は何処かで…。
そうか、D組のイケメン男子達だった。
なるほど、クラスメイトの女子達がフラれるのも納得だ。
……解決方法がわかったぞ!
早速担任の夏希先生の元へ向かう。
「先生!D組の女子は全員○○○になれますか?」
「勿論だとも!私が保証しよう!」
「では先生!カメラを貸してください!」
「ほら、大切に扱えよ!」
夏希先生からカメラ借りて先程の屋上へもどる。
~7日後~
クラスメイトの女子達が皆明るく笑顔を見せていた。
「いやー、秋山くんのお陰で私達毎日充実してるよ!ありがとうね!」
「フフフ、そうね。Dクラスがここまで纏まったのは秋山くんがいたからだよ!」
「私はね、男同士って嫌っていたんだけど秋山くんのお陰で好きになったわ!」
「そ、それは何よりだよ!」
イケメン3人組をカメラに納め、そのまま布教活動に勤しんだ僕。
担任の夏希先生から許可を貰っていろいろ頑張ったのだ。
「やっぱ、ナバ×タマだよね!」
「はぁ?何言ってんの?タマ×ナバしかありえないっしょ!」
「私はね、キオ×タマかな!あの逞しい腕でお尻を」
「フフフ大本命はズバリ、キオ×アキだと思いますけど」
何か嫌な予感がするので静かに教室から出る。
するとタイミング悪く担任の夏希先生と鉢合わせる。
「おお、秋山!丁度良かった!」
「ん?何ですか?」
「クラスの女子達は解決したから今度は不登校男子達を頼む!」
「…」
どうやらまだまだ恋愛などできなさそうだ。