自己紹介
舞ったあと、酔いによって俺の意識は飛んで行った。
気持ち悪さによって目を覚ました時、俺の前には長髪の男含め四人の影があった。
「大丈夫だったかい?」
細い目をした羽織袴を着た侍のようななりの男が俺に話しかける。
「何とか、大丈ぶっ」そういった瞬間に吐いた。
隣にいた派手な格好の女が吹き出した。
笑いながら俺に言う。
「大丈ぶっ、てそれ大丈夫じゃねぇーよ笑」
もう一人、詐欺師のような風貌をした笑みを絶やさない男が俺を介抱してくれた。
「災難だったね。その酔いは半年ほど前に僕も経験したから辛さはよく分かる」
どうやらこの男がベットに運んでくれたようだ。
そうして周りを見渡す。割れた窓に床に転がる廃品の山。絵に書いたような廃ビルの風貌だった。
俺の調子が戻ると彼らが自己紹介を始めた。
「僕は真に男と書いてマオと読むんだ、本名じゃなくてコードネーム、偽名みたいなもんさ。気軽にマオと呼んでくれ」
詐欺師よろしくの心地よいテンポで俺にいう。
「どうして偽名なんだ?」俺が問うと長髪の男が割って入って言った
「俺たちは同盟を組んでいるに過ぎない。この徒労に帰属意識を持ってしまったら平和になった後弊害になる可能性がある」
確かに過去、王政へ革命を起こした後、起こした一派が王政をすることが多々あった。同じ轍を踏まないためなのだろう。
「俺のコードネームはシガレットだ」
「この人ニコチンと一緒じゃないと呼吸出来ないタイプの人間なんだ」
マオが口を挟む。
最後に侍のような男が言う。
「名を天無という。数少ないフレーズを持たないものだ。」
俺は驚いた。手や足がない人はいるが、フレーズを持たない人間などこの世にただの一人も存在しないはずだからだ。
この驚きを脇目にシガレットが言う。
今日から君の偽名は「アンチ」だ。
俺は顔をしがめた。