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精霊と助け人、怜華  作者: 水葉
27/30

会議への参加

 空界に行くと、お母様の屋敷に向かった。主様の元で働くことを伝えるためである。チャイムを押すと、いつも通りミョンイさんがでてきた。

「あら、いらっしゃいませ。お部屋にいらっしゃいますにゃ。今、お客様がいらっしゃっていますにゃ」

ミョンイさんは私を迎え入れ教えてくれた。

「お客さん?じゃあ、出直しましょうか」

私が聞くと、ミョンイさんは首を横に振った。

「大丈夫ですにゃ。妃主様は誰かいらしたら、通して良いと仰せですにゃ。それにお客様は翡夜さんもご存じの方らしいです」

「知ってる人?」

ミョンイさんは頷いた。

「楓様ですにゃ」

楓さんが来てるんだ。ちょうどいいかもしれない。私はお礼を言って部屋に向かった。楓さんとお母様は顔見知りらしい。私のことをお母様に告げたのも楓さんだった。楓さん、結のことも知ってるし顔が広いな。まあ、主様の助け人だったから当然なのかな?これから私もたくさんの精霊と仲良くなれるといいな。淡い期待を抱きながら上の階に向かっていった。

 部屋の前につき、ノックをする。

「どうぞ」

お母様の声が聞こえた。

「翡夜です。失礼します」

ドアを開け、中に入る。中に入ると、ベットの横のテーブルで楓さんとお母さんはお茶をしていた。

「いらっしゃい。翡夜も座って」

楓さんの隣に座るようにうながす。私は頷いて、座った。少しするとミョンイさんがお茶を持ってきてくれた。

「こちらは、妃主様が作られたマフィンですにゃ」

「ありがとうございます」

ミョンイさんはチョコチップの入ったマフィンを置いた。これをお母様が。私はお母様の顔を見る。

「この頃調子が良いからひさしぶりに作ってみたの。食べてみて」

いただきます。マフィンを口に運んだ。

「美味しい」

自然と口からもれた。それを聞いてお母様は嬉しそうににこにこしていた。

「あの、私、お暇しましょうか」

楓さんが申し訳なさそうに言った。親子の団らんを邪魔してはいけないと察したのだろう。

「大丈夫よ。ありがとう」

お母様は首をふって微笑んだ。そして、私の方を向き真剣な顔をした。

「それで、どうするか決めたのね。それを私に伝えるために今日は来たんでしょう?」

「はい」

返事をしながら驚いた。お母様は何でもお見通しのように思えてくる。その言葉でふわふわとした雰囲気から、真面目な空気に変わった。今までの親子の会話が嘘だったように感じる。親と子ではなく、今は妃主様と助け人の関係なんだ。そうはっきりと感じた。主様でなれてはきたけど、やはり緊張する。私はマフィンをお皿の上に置き、主様のところで働くことを伝えた。

「そうか。やはりそうしたのね」

お母様は頷く。楓さんは驚いているように見えた。そして少し沈黙が続いた。

「頑張ってね」

妃主様はにこっと微笑んだ。その瞬間、ふわふわとした雰囲気が戻ってきた。それと同時に私の緊張もほどけた。

「はい」

「そうなると楓と同じなのね。不思議なものだわ」

お母様は楓さんを見る。

「そうですね。なにかわからないことがあれば、聞いてください」

楓さんの顔が一瞬曇ったが、すぐに微笑んだ。

「はい。ありがとうございます」

とても心強く感じた。

「じゃあ、そろそろ王城に向かいます」

私はマフィンを食べ終えると、立ち上がった。

「あらもうそんな時間なのね」

近くにあった杖を持ち、お母様は立ち上がった。楓さんはお母様を支えていた。

「また来ます」

私の言葉にお母様は頷いた。

「翡夜さん。近々、執務室に顔をだします」

楓さんが声をかけた。

「お願いします」

私は頭を下げる。

「では、お邪魔しました。いってきます」

そう言って私は王城に向かった。

_______________________________________________

 妃主様と楓は怜華が帰ったことを確認すると、元の席に座った。

「妃主様。いいのですか?翡夜様を主様の側において。もしばれたりしたら」

楓さんが心配そうに聞いた。姫と主様が一緒に仕事をしている。それに気づかれると大きな争いが起きてしまうことに危惧していた。

「かつて怜華を狙ったものは全員、亡くなっていますし、問題や争いがおきそうなときは私がなんとかします。それに」

妃主様はベットサイドに置いてある、写真立てを手に取った。怜華の小さいころが写し出されている。

「あの子は、肉体は人間。魂は精霊。兄とは違う混ざりあいをした特殊の半霊半間。だからこそいつか決めないといけないときがきます。私はその選択肢のひとつを与えたにすぎません」

「選択のひとつを与えた…妃主様、まさか」

楓の言葉に妃主様は頷いた。

「主様はよく私のところに顔をだしてくださいます。その時に助け人、2人と仲良くなったということを聞きました。そのときは気にも止めていなかったのですが、最近その1人が怜華だということを知ったのです。そこで私は主様に提案しました。助けてもらったお礼に主様の元で働かせてみたらどうかと。主様は悩んでいる様子でしたが、2人に話したようですね」

妃主様はふふっと笑った。楓は妃主様をすごいと思う反面、恐ろしくも感じていた。

「怜華は悩むと思います。しかし、楓。私たちは決して口をだしてはいけません。怜華が自ら決めること。いつかはわかりませんが。見守りましょう」

________________________________________________


 許可証をだして、執務室に向かった。トントントン。ドアを叩くと返事が聞こえる。

「失礼します」

そう言って入った。主様は集中してなにかを書いている。私は邪魔しないように、書類を整理し始めた。

 時計の針が3周した頃、主様が私に声をかけた。

「翡夜。図書館から辞書を取ってきてくれないか?」

「はい。辞書の種類はなんでしょうか」

立ち上がり、主様の前にたった。主様はメモ用紙に書き渡した。私は受け取り読む。

"立法伝 地形書 古典解読"

「図書館は下の階の一番端にある」

「わかりました」

頭を下げ、執務室をでた。下の階に降りると、何人かの重臣と助け人にすれ違った。ここは重臣の部屋が続いている。ドアには重臣の名前が彫られてあった。一番奥に行くと、高級そうな扉があった。扉には、図書館と書かれている。ここか。扉を開けて中に入った。中にはたくさんの棚が並んでおり、広い部屋の真ん中にはいくつかテーブルがおいてあった。本は種類別に別れている。私は辞書が置いてある棚に行き、目的のものを探した。

「あら、あなたは」

声のする方を見ると、見覚えがある助け人がたっていた。眼鏡をかけてる女の子。王城で迷子の女の子を探したときに手伝ってくれた子だった。名前はたしか

「伊夜さん。お久しぶりです」

笑顔で挨拶した。

「久しぶりですね。探し物ですか?」

「はい」

私はメモを見ながら、必要な辞書を揃えた。大きな辞書のため両手で抱える。それを伊夜さんはじっと見ていた。伊夜さんたちは1ヶ月前に終了日を向かえたらしい。少しずつ慣れてきたと言っていた。

「そういえば、主様のところで働いているんですってね」

「そうなんです」

私は頷いた。

「なにか困ったことがあれば、相談してくださいね。力になれるときもあると思うので」

伊夜さんは微笑んだ。

「ありがとうございます」

私は頭を下げる。

「では、私は用があるので。後でまた」

と言って、図書館をでていった。ん?伊夜さんと会うことあるっけ。頭の中に?がうかんだ。私も手続きをして、図書館をでた。

 「戻りました」

分厚い辞書を机のあいてるところに置いた。

「ありがとう」

主様は顔を上げ、辞書を持ち開き始めた。私はソファーに戻り、整理を始める。

「そういえば」

主様は手を止めこちらを向いた。

「重臣たちに翡夜が私の元で働いていることを伝えた」

「はい」

私は頷く。

「なんだ。知っていたのか」

主様は驚いたようだった。

「紀夜から聞きました」

「そうだったのか。もしかしたら私の考えを探ろうとして、翡夜に近づく重臣がいるかもしれん。もし、近づいてきたとしても、何も話さずにいるんじゃよ。情報が漏れるとよくないからな」

「はい。気をつけます」

主様の目を見て、しっかりと頷いた。

 少しすると、主様は書類をまとめ立ち上がった。椅子にかけてあった上着を羽織る。

「これから会議ですか?」

と聞くと

「そうだ」

と支度をしながら頷いた。やはり会議か。私は整理を続けようと書類に手を伸ばすと

「何をしておる。翡夜も行くのだよ」

と声をかけられた。

「え?いいんですか?」

私は驚く。いつも会議は主様と重臣がでると結から聞いていた。

「助け人になりたての人たちがでれる会議が1回だけあってな。それがが今日ということなのじゃ」

そうなんだ。伊夜さんの言葉を思い出す。だから、ああ言ってたんだ。納得した。もうちょっと早く知らせてくれても。 

「わかりました」

と言って、立ち上がった。主様につれられ、会議室に向かった。

 重厚なドアの前にいた兵士が開けた。中には横長い机がおいてあり、重臣が座っていた。

「奥にいるのが、南妖。手前にいるのは北妖じゃ」

後ろにいた私に主様はそっと教えてくれた。主様は机に向かって歩いていく。主様のあとについていきながら、重臣たちを見た。座ってる重臣の後ろには助け人たちが立っていた。前に迷子探しを手伝ってくれた子たちもいる。手前の席に伊夜さんもいた。一瞬目が合い、軽く頭を下げる。手前にいるということは北妖ということがわかった。主様はひときわ豪華な椅子に座った。私はその後ろにたった。

「助け人の皆さん、この会議で行われることは外に漏らしては行けません。いいですね。では、会議を始めましょう」

主様はそう声をかけ、会議を始めた。議題は来年の人事異動の決定と新たな提案を議論することだった。重臣たちは自分の言いたいことをいい、決定したことが納得しないと反発していた。主様はなだめながら、しっかりと決定した理由を伝え、重臣たちを納得させていた。

「階級により納付する税金の割合を変えてから、半年がたつ。ちゃんと納付されているかどうか、改善点があるかどうか、助け人が調べてほしい」

「かしこまりました」

重臣たちは声を揃え、頭を下げた。さっきまで言い合っていた人たちとは思えないぐらい息があっていた。

「各地域の行く場所を各々決めておいた。助け人たちに渡しといてくれ」

と言って主様は右手を上げた。すると、人が現れ書類を配りだした。主様も受け取り目を通すと、私に渡した。私は小さな声でお礼を言って受けとる。

"山源地域、南部地区"

知らない街の名前が並んでいた。後で聞こう。紙を折りたたみしまった。それから長い議論のすえ、やっと終わった。会議室から重臣たちが少しづつ退室している。主様は使った資料を整えながら

「今日はもう終わりだから、帰ってよいぞ。調査の詳しいことは明日説明する」

と言った。

「わかりました。失礼します」

頭を下げ、会議室をでた。私が離れてから主様は残っていた重臣と少し話をしていた。廊下には重臣何人かが話していた。その中に伊夜さんがいた。私に気がつくと、微笑み、近づいてきた。

「また、会いましたね」

「そうですね」

私も微笑む。

「あの...」

「翡夜‼」

伊夜さんは何かを言おうとしたが、私を呼ぶ声でかき消された。振り向くと、そこには結がいた。

「あ、紀夜」

私も名前を呼んだ。結は小走りで向かってきた。

「ねえ、これからカフェに行かない?」

「これから?いいよ」

「決まり。あれ、お話し中だった?」

結はちらっと申し訳なさそうに伊夜さんを見た。

「うん。そういえばさっき何か言いかけていませんでした?」

思い出して私は伊夜さんを見る。伊夜さんは首を横に振り

「いいんです。では、私はこれで」

そう言って去っていった。

「なんか私、邪魔した?」

結が伊夜さんの背中を見て、私を見た。伊夜さんを見る結の目が一瞬細くなった。

「大丈夫だと思う」

私は頷く。

「そっか。じゃあ行こうか」

私たちは下に降りていった。

 結に連れられ大通りの喫茶店にはいった。2人で奥のソファーに座り、ケーキを頼んだ。

「それで会議どうだった?」

結が興味津々に聞いてくる。

「凄かった。じゅうしん?たちは自分たちの意見を通そうといろんな議論してた。反論をしたりする人もいて、熱意がすごい伝わってきた。何よりすごいのは主様かな?否定するときはしっかりと否定してるけど、質問して妥協案をだしたりとどちらもが納得できるように心がけてやってるように見えた」

結はにこにこしながら

「そっか。主様ってやっぱりすごい精霊なんだね。オルさんとして接してたときは思えなかったけど」

と納得していた。確かにそうかもしれない。私は頷いた。

 フルーツがたくさん乗ったケーキが届き、2人で食べた。

「私たちへの仕事とか言ってなかった?お父さんに聞きそびれちゃったんだよね」

何口かケーキを口に運んだ後、結は聞いてきた。

「そういえば、税金が変わったからその確認をするとか言ってた。行く地域が割り振られたんだ」

「怜華はどこ行くの?」

私はポケットから紙を取り出して、結に見せた。結はそれを見ると怪訝な顔をする。

「どうしたの?」

私が聞くと

「山源地域ってどんな場所か知ってる?」

と、聞き返してきた。私は知らないと首を横にふる。

「山源地域は山に囲まれた場所にあって、純民が住んでるとこなの」

「そうなんだ。純民って一番下の階級だよね」

そう聞くと結は頷いた。精霊の国には階級があり上から、王族、貴族、平民、純民となる。

「それがどうかしたの?」

「純民の町って助け人あまり行かないんだよね。東部は駅から近くて都会だから、資料集めに行くこともあるんだけど、南部は田舎だから、こういう大がかりな調査の時しか行かないんだ」

山源地域は貴族から追いやられた純民の場所だという。王城の周りには純民は少ない。それは貴族から嫌がらせを受けてきた過去があるためらしい。主様がどうにか純民を王城の周りで住まわせようと努力してきたが、最終的には貴族に提案を潰されてしまったらしい。王族は何もしてくれない。そう恨んでる純民もいるという。そのため精霊たちがどう接してくるかわからないと、結は心配そうに言った。

「主様に変えてもらうように言ってみたら?」

結が提案をしてくる。私は少し考え

「大丈夫だよ」

と答えた。危険かもしれない。だけど、私は行ってみたい。そう思った。

ケーキを食べ終え、私たちは部屋に戻った。

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