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精霊と助け人、怜華  作者: 水葉
23/30

二筋の光

 結も呼んで3人で警察署の中にいた。

「今から行くところは、探研所というところです」

警察署の廊下を歩きながらイリスさんが話した。探研所は、事件で見つかった証拠を調べるところらしい。そこには、イリスさんの知り合いがいてその人に会いに行くという。

階段を何回かのぼって歩くと、探研所とかかれた部屋を見つけた。扉はガラス張りになっていてたくさんの機械や働いてる精霊が見えた。みんな白衣をきている。

「ここで待っててください」

イリスさんはそう言うと、1人で中に入った。いろんな精霊と話し少しすると戻ってきた。

「入っても大丈夫です」

入るように促す。私たちは部屋の中に入った。イリスさんが進むほうについていく。部屋のいっかくに休憩スペースと書かれた場所があった。一段高くなっていて、畳がしかれている。

「ここで待ちましょう。もう少ししたら彼女もくるはずです」

イリスさんは座った。私たちも隣に座る。ここは畳のスペースがあるだけで、壁でしきられていない。働いてる精霊たちがよく見えた。ここの精霊は人型が多い。人型自体、働きやすい体系なのだとか。

「イリス。待たせたな」

 白衣をきた1人の女の子が、こちらにちかづいてきた。空色の髪を2つに束ねており、銀色の目をしている。身長が私の腰ぐらいの高さしかない。なんで小さい子どもがこんなところに。と思いながら見つめていると。

「君、まさかわしゃのこと、幼女と勘違いしているのではないか」

と私を見て、頬を膨らませた。

「ごめんなさい」

頭を下げ謝る。

「それくらいにしてください。翡夜さんもあまり真に受けないでください。どうせ遊んでいるだけですから」

イリスさんが私たちの間にはいった。

「ひどい言い草だな。言っておかないと勘違いするであろう?」

「優しい言い方に変えてください」

イリスさんが言うと、その女性は微笑んだ。

「成長したな。少し前まで口答えもできない少女だと思ったのに」

「それ、結構前の話ですよ」

イリスさんは呆れた顔をした。心なしか嬉しそうに見える。

「あの…あなたは一体」

結が声をかけた。

「紹介がまだでしたね、彼女は」

「わしゃはな、ネモフィラの精霊。ルカだ」

慌てるイリスさんの言葉を遮るように、ルカさんは自己紹介をした。2人は仲が良さそうに思えた。

「2人はどういうご関係なのですか?」

不思議になって聞いた。

「ルカさんは楓様のお友達です。私もよくお世話になっていました」

私の質問にイリスさんが答えた。ルカさんはうんうんと頷いている。楓さんは薬屋をしている。イリスさんはそこで働いていたため、ルカさんと関わることが多かったらしい。

 私たちは畳の上に円になるように座った。

「ルカさん。林で遺体が見つかった事件担当していませんか?」

イリスさんの質問に、ルカさんは考えた。

「してないが、小耳に挟んだことはある。それがどうした?」

イリスさんが今までのことをルカさんに話してくれた。

「…それで、遺体に毒が付着していなかったか確認してほしいのです」

ルカさんは黙ってすべての話を聞いた。

「なるほどな。ちょっと待っておれ」

と言って、立ち上がり、とことこと棚があるところに向かった。資料をひとつ取り出すと戻ってきた。パラパラとページをめくり、私たちの前に置く。

「これじゃな。中から毒が見つかったとかいてある」

私たちも、書類をよく見る。確かに体内からキノコの精霊の粉が見つかったと書いてあった。

「ある助け人の皮膚にも毒は付着していたんですけど、この毒がユミルさんという方の体からでて、直接ご遺体についたものだと証明できませんか」

イリスさんは書類の文章を指さした。ルカさんは腕を組んで考え込んだ。

「こちらが助け人から採取した毒で、こちらがユミルさんから採取した毒です」

イリスさんがジッパーを取り出した。

「ちょっと見せてみろ」

ルカさんはジッパーを持って、天井の電球に透かして見たり、近くでよくみていた。

「ちと、難しいな」

ジッパーをおいて、手を顎に当てた。

「そうですか」

私たちは残念そうな顔をした。ルカさんは私たちの顔を見て、不思議そうに

「できないとは言ってないぞ」

と言った。毒の一致を調べるのは簡単らしいのだが、その毒が体からでて直接入ったことを調べるのは時間がかかるという。

「では、それって」

結が食い入るように聞く。ルカさんは頷いた。

「3日。3日、時間をくれ。その間に突き止めよう」

真剣な顔をして約束してくれた。

「そうとなれば、これ借りるぞ」

と言って、ジッパーを取った。イリスさんは頷く。

「ではな。これから忙しいのでな」

と手を振り、畳から降りて行ってしまった。

「ルカさんは優秀な方です。安心して待ちましょう」

ルカさんが作業をしているのが見えた。邪魔をしないように、私たちは探研所をあとにした。

 警察署の玄関に戻ると、イリスさんは掲示板に近づいた。

「紗夜さんの判決までにはまだ時間がありそうですね」

私たちも見ると、判決待ちと書かれた紙が張ってあった。そこにはいろんな生き物の名前が書いてある。紗夜さんの欄を見た。あと6日後。それまでにルカさんの結果がでる。どうにか助けられるように考えないと。と言っても、今はルカさんの結果だよりだった。


 いつの間にか2日たった。1日を過ごしながらいろいろ模索していたが新しい発見はなかった。空界にいつものように向かった。正装着に着替え王城に向かおうとすると、ドアをノックする音が聞こえた。返事をして、ドアを開ける。そこには郵便屋さんがいた。赤い帽子にポストのマークが描かれている。

「こちら、お届けものです」

と封筒を差し出した。私はお礼を言って受けとる。差出人の場所に紗夜と書かれていた。なにかあったのだろうか。急いで開けて読んだ。

"急にごめんなさい。実は判決が下るのが今日になったの。予定ではまだ先だったんだけど、なぜか前倒しになったみたい。きっとまだ、証拠は見つかっていないのよね。だからお別れを言うために手紙を送りました。短い間だったけど、翡夜さんに会えてよかったわ。ありがとう。さようなら

追伸、紀夜にも手紙を送っています"

これで終わっていた。結は知っているのだろうか。急いで結の部屋に向かった。

トントントン

ドアをたたく。返事はない。まだ、来ていないようだった。どうしよう。ひとまず、地界に戻ろう。考える暇はなかった。速足で部屋に向かっていると

「これは、翡夜殿ではないか」

声が聞こえた。足を止め声が聞こえたほうを向いた。そこにはオルさんがいた。

「オルさん…」

オルさんはのそのそと近づいてきた。私の顔をみた早々

「何かあったようじゃな。どうした?」

と聞いてきた。話していいものか。迷ってると

「困り事か?わしに話して見るといい」

そう言って、じっと私を見た。オルさんに話してどうにかなるものなのかわからなかったが、わかりましたと頷いた。

 ベンチに座り、事件のことを話した。紗夜さんが殺人の罪で捕まっていること。キノコの精霊が関与していること。探研所に鑑定を依頼して明日、結果がでること。そして、判決が今日になり、焦っていること。特に重要なところをかいつまんで伝えた。

「そうだったのか。だとしたら申し訳ないことをしたな」

オルさんは呟いた。

「何か知っているのですか?」

私が聞くとオルさんははっとした顔をした後、申し訳なさそうに

「その、前倒しを決めたのは主様なんじゃ」

 と言った。私は驚いた。

「なぜですか?」

「翡夜殿は主様が助け人を決めているのは知ってるじゃろ」

私は頷く。主様が心優しい人間を選別し助け人にひきいれている。

「だから、助け人が関わることを決めるのは主様なんじゃ。助け人が精霊を殺したという、書類があがってきて主様はすぐに判を押していた。わしもその書類を見たが、助け人がやったという証拠がそろっていてな。だから、早めたらしいのだが、そんなことがあったなんてな」

オルさんはため息をついた。

「鑑定は明日、でるんだろう?誰に依頼したんじゃ」

「ルカさんです」

私が言うと

「そうか。ルカか。あいつなら安心してよいな」

うんうんと頷いた。オルさんもルカさんのこと知ってるんだ。内心驚いたが、特に何も聞かなかった。

「翡夜殿」

オルさんに名前を呼ばれ、私はオルさんを見た。

「この件を主様に伝えようと思う。これでひとまず今日の判決を止めれるだろう」

「本当ですか!!」

止められるなら、ひとまず安心できる。オルさんは真剣な顔をした。

「わしの方で証拠を探そう。だからそなたたちは手を引け」

「なぜですか」

私は聞く。確かに私たちでは証拠が見つからないかもしれない。だけど、なにもしないで待つよりはましだった。

「これから先、新たな事実がわかったとき、それは大きな事件に変わるかもしれん。そうなったときは助け人では太刀打ちできん。ましてや、相手はキノコの精霊だ。そなたや紀夜殿が罪を着せられたら今度こそ助けることが難しいであろう」

厳しく。しかし、諭すようにオルさんは言った。確かにそうだ。私は素直に頷いた。オルさんはそれを見て、微笑んだ。

「では、主様に伝えてくる。そなたは紀夜殿たちにこのことを伝えるんじゃ」

と言って、ものすごい速さで王城に向かって行った。

 さて、結に会いに行かないと。私は再度、結の部屋に向かった。トントントン。ドアをたたく。

「結。いる?」

すると、数秒もしないうちに勢いよくドアが開いた。

「怜華、どうしよう。紗夜さんが」

今にも泣きそうになっている。私は結を慰めながら

「そのことなんだけど、なんとかなりそうだよ」

と言った。結は、え?と不思議そうにしている。私はオルさんがなんとかしてくれることを結に伝えた。

「そっか。オルさんが」

なにか納得いかないようだった。

「どうかした?」

私が聞くと、なんでもないと首を横にふった。

「よかった。ひとまず安心した」

結は微笑む。

 私たちはオルさんに後のことを任せ、いつも通り過ごした。しかし、心のなかではずっとそわそわしっぱなしだった。


 紗夜さんの判決の日になった。私はやはり落ち着かなかった。それは結やイリスさんもそうだろう。あれから、オルさんからなにも連絡はこなかった。

「イリスさん。行ってくるね」

お皿の片付けをしてるイリスさんに声をかけた。

「いってらっしゃいませ。なにかあったらすぐに戻ってきてください」

私は頷いた。

 空界で起きると、結とおち合った。判決を言い渡す場所は、警察署の隣にある建物で行う。

 指定された部屋に入った。後ろ半分には椅子がたくさん置いてあり、前半分には長い机が3つ。その真ん中に椅子が置いてあった。まるで法廷のようにも思える。私たちは一番前の席に座った。

 時間になると、紗夜さんが入ってきた。警察官が近くに寄り添い誘導している。紗夜さんが椅子に座ると、警察署の偉い精霊が現れた。その精霊は持っていた巻物を広げ読み上げた。最初にこの出来事の詳細が話され、証拠となったものが提示されていく。

『助け人、紗夜の指紋が犯行現場や袋についていたこと。ご遺体の中から、ストラップが見つかったこと。また、自宅から血のついた鈍器が見つかったこと。これらすべてをみると重罪であるが、探研所でキノコの精霊からでた毒の詳細を鑑定したところ、紗夜は一切、遺体に触れていないことがわかった。この毒には、人間を操る成分が含まれている。この成分による副作用も脳波検査で確認済みである。キノコの精霊に操られていたと断言できる。

 この事件は第三者がいる可能性が高いため、再度調査を行い真犯人を逮捕することとする。

 助け人、紗夜の殺人の疑いははれたが、遺体を埋める手伝いをした事実は変わらない。よって、20年、助け人の資格剥奪とする。その間は空界に行くことも、精霊をみることもできなくなる。この20年間しっかりと己と向き合うように。以上』

読む終えると、巻物を紗夜さんに渡し、一礼して去っていった。無事でよかった。心から安堵した。結も隣で嬉しそうにしている。警察官によってつれられる紗夜さんに結は声をかけた。

「紗夜」

紗夜さんは立ち止まり、にこっと笑った。"ありがとう。結たちのおかげだよ"そう言うかのように微笑んでいた。それから紗夜さんは地界に送られ、刑が執行された。

 1週間がたち、部屋でのんびりしていると、結から連絡がきた。

『紗夜からお礼を言いたいので、お店にいらして下さいだって』

 私は家をでて、紗夜さんのお店にむかった。お店につき、ノックする。

「いらっしゃい。はいって」

紗夜さんが扉を開け、私を招き入れた。中にはいると、結が先にきていた。お店には商品とかはなにもなく、棚だけになっていた。当分、商売はできないため、貧しいあやかしたちに配ってほしいと警察に渡したと紗夜さんは言っていた。私たちは作業場に入り、椅子に座った。

「あらためて、ありがとう」

紗夜さんは頭を下げた。

「私たちはなにもしてない。知り合いのあやかしに怜華が話しただけだよ」

結が言う。私も頷いた。

「そうだったの。主様、直々にお越しになって話を聞いてくださったの」

「主様がいらっしゃったのですか」

驚いてつい聞き返した。紗夜さんは頷く。オルさん。主様を紗夜さんのところに行かせるなんて。主様が行くのは異例だという。

「手助けしたことは反省してちゃんと罪を償っていくから」

それを聞いて、私たちは頷いた。

 少し話し帰ろうと外にでると、紗夜さんに声をかけられた。

「翡夜さん。紀夜のことよろしくお願いします」

と頭をさげる。

「紗夜。それは本人がいないところで言うんだよ」

私の隣にいた結が慌てていた。

「わかりました」

その様子をほっこりしながら、私は笑顔でそう言った。

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