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精霊と助け人、怜華  作者: 水葉
21/30

哀れみという名の毒

 検査が終わるまで待合室で待った。数十分たつと、お医者さんがでてきた。

「あの、大丈夫ですか?」

結が聞く。お医者は頷いて

「はい。先ほど気がつかれました。入っても大丈夫ですよ」

そう言って、他のところに行ってしまった。結は急いで病室に入る。私たちも後ろからついていった。

「紗夜。なんであんなことを。でも、助かってよかった」

ベッド横の手すりに手を乗せ、身を乗り出した。

「なんでここに...そっか。紀夜。ごめんね」

紗夜さんは横になりながら結の顔を見て謝った。そして、天井を見つめる。

「もう、紀夜には会えない」

「なんで、そんなことを言うの。心配したのに」

紗夜さんはじっと結を見つめた。

「わからない?精霊を殺したからだよ。助け人失格の私は紀夜に会う資格はないの。だから、帰って」

強い口調で、結に言い放った。

「帰らない。紗夜がその事を話してくれるまで帰らないから」

結も強い口調で言い放つ。紗夜さんはぼそぼそとなにかを言ったあと

「ほっといて。紀夜なんて。あなたなんて大嫌い!!」

冷たい目線を結に送り、背を向けた。冷たい目線は鋭く、本当に紗夜さんなのだろうか。そう思わせるほど、私がお店で会った時の紗夜さんとは違っていた。なにかおかしい。私は引っかかっていた。それを聞いた結は、何も言わずに病室を飛び出した。

「結!!」

私は結のあとを追いかけた。

 病院の玄関の前で立ち止まってる結に近づいた。

「信じられない。あんなに心配した私がバカみたい」

そう言って、帰ろうとする。私は結の腕をつかんだ。結は驚いた顔をして私の方をむく。

「結。紗夜さんのところに戻ろう」

腕を強く握り、真剣に言う。

「なんで..」

結が目をそらした。

「紗夜さんに話を聞かないと。それに結も本当はわかっているんでしょ」

紗夜さんが嫌いだと言ったことが、嘘だと言うこと。なにかおかしいと感じるのは結もわかっているはずだ。なにかそう言わざるおえない理由があるのだろう。となると、紗夜さんは精霊を殺してない可能性がある。

「信じてるんだよね」

落ち着かせるように、そっと掴んでた腕を離し結に言う。私も紗夜さんのこと信じてる。だから。目で訴えた。

「わかったよ」

私の気持ちが伝わったかわからないが、結は頷いて病室に戻っていった。

 病室の前に着くと、イリスさんがでてきた。

「紗夜さんも、反省しております。2人で話してください」

結に入るように促す。結が入るとイリスさんは部屋の扉を閉めた。中の会話は聞こえない。私とイリスさんは扉の前で、2人が仲直りするのを待った。

 1時間ぐらいたつと、扉が開いた。

「お待たせ。仲直りできたよ」

私たちは頷き、病室に入った。紗夜さんは起き上がっていた。

 近くの椅子に座り、本題に入った。

「紗夜。教えて、なぜこんなことをしたの?」

結がきりだす。

「私が精霊を殺したから」

「本当に?本当に紗夜がやったの?」

その言葉に紗夜は下を向いた。なにかを隠しているように見える。

「教えて。私、紗夜を助けたいの」

すると、ポトポトと紗夜さんが涙を流した。

「仕方なかったの。あの子を守るために…」

紗夜さんは話してくれた。

 紗夜さんはお店をやっている他に、貧しい精霊のために、お弁当を作って渡している。そこで知り合った、ユミルさんという精霊が数日前にお店にやってきた。つばが大きい帽子を被り、長い赤髪、真っ白い肌で美人らしい。1人で5人の子供を育てる母だという。きた早々、泣きじゃくる姿を見て、紗夜さんは事情を聞いた。どうやら、亡くなった旦那さんの借金を返すために奮闘していたが、生活にぎりぎりで返すのに遅れがでてきてしまったらしい。毎日のように取り立て屋が来て、子供たちも売られそうになった。そのため、子供たちを守ろうと殺してしまったと話してくれた。捕まってしまうと子供たちだけが残されてしまう。紗夜さんも母子家庭だったため、母親がいなくなるという寂しさを知っていた。なんとかしてあげたい。そう思い、いつの間にか口からでていた。"手助けする"ということを。そこから死体の処理を手伝い、廃校にある扉から直接入って、私たちが見つけたあの場所に置いてきたという。

「そこからのことはあまり覚えてないの。気づいたら結に手紙を書いて、紐に手をかけていた。そこまでやるつもりはなかったのにね」

苦笑いをした。

「そこまでしなくても」

しばらく沈黙が流れ、イリスさんが立ち上がり、紗夜さんの前に立った。

「あの、少し体を見させていただいても良いですか?」

紗夜さんは困惑していたが、頷いた。それから、腕をさわり、目や口を見ていた。私と結は、何をしているかわからず、ただ見ていた。

「やはり、そうでしたか」

呟き、手を離した。紗夜さんが声をあらげた時からイリスさんは気になっていたらしい。

「紗夜さん。ユミルさんという方はもしや、キノコ類の精霊ですか?」

「そうですけど」

不思議そうな顔をした。イリスさんは頷いている。そして私たちを見た。

「紗夜さんは自分の意思で死のうとしたわけではありません」

私たちの頭に?が浮かんだ。

「誰かが紗夜さんを操っていたってこと?」

「それに近いかもしれません。世の中には人に害を及ぼす植物があるのをご存じですね」

と言って、ある可能性を話始めた。

 植物の中には毒があるものもある。その植物を食べたり、さわったりすると、食中毒やかぶれを引き起こす。もちろんそれらの植物にも精霊は存在する。食べて起こるものは精霊、人に害は少ない。しかし、触って炎症を引き起こす植物の精霊は体自体に炎症を起こす成分が含まれている。そのため、手袋やフード、袖が長い服を着たりと、肌の露出を控えているらしい。

「ですが、問題なのはキノコ類の精霊です。怜華さん。キノコ類はどうやって増えるとおもいますか?」

と聞いてきた。

「胞子を飛ばして増えます」

私の答えに、イリスさんは頷き、続きを話し始めた。

 キノコの大半が毒キノコだという。そのため、毒キノコの精霊も同じように露出を減らした洋服を着ている。食べることで引き起こされることが多いため害が少ないと思うかもしれないが、キノコはそれだけではない。胞子を飛ばす。それは精霊も同じで、小さな胞子が、体の近くを漂っている。その胞子自体が毒であり、精霊や人に危険をおよぼすのだという。

「その胞子には、人間に害を及ぼすものがあります。その胞子を吸うことによって、意識障害やしびれ、吐き気を引き起こします」

そもそも精霊は、胞子を見ることができるので、ある程度気をつけることができるが、人は見えないため、知らない間にたくさん吸うことがある。しかも、紗夜さんが吸った胞子は特殊で、同情や共感をするとその精霊の思うがままになってしまうという。

「ユミルさんの子供がかわいそう。と思ったことで、相手の思うがままになったのでしょう。相手が願うことで、勝手に相手が行動してくれる。性格が変わることもありますし、その時の記憶は時間がたつほど曖昧になっていきます。ユミルさんはそれを利用して。無意識かもしれませんが。紗夜さんがすべて背負ってくれることを望んだ。だから、あなたはあんな行動にでたのだと思います」

「そんな..」

すべての話を聞いた紗夜さんは、ショックを受けた様子だった。無理もないだろう。

「大丈夫?」

結が心配する。紗夜さんは大丈夫だというように微笑んだ。

「イリスさん。紗夜は胞子を吸ったのですよね。大丈夫ですか?」

結が聞く。イリスさんは頷いた。

「胞子は半日たてば、少なくなります。先ほど、結さんと喧嘩をなさったときが、ピークだったと思われます。明日になれば完全にぬけるでしょう」

その答えに2人は安心したようだった。

「気持ちの整理をしたいから、今日は帰ってもらっていいかな?」

紗夜さんは結を気にしながら、私たちに言った。

「わかった。また明日、来るからね」

立ち上がって、言う結に紗夜さんは頷く。

 手を振る、紗夜さんに見送られながら、私たちは病院を後にした。

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