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精霊と助け人、怜華  作者: 水葉
19/30

お母様の昔ばなし

 結を見送り、私はお母様の家に向かった。結は朝早くから用事があるらしい。帰ってもよかったのだが、誰かと一緒にいたかった。悪夢でも見ると思ったのかもしれない。お団子を買って持っていく。細い道を通り、たどりついた。

 チャイムを鳴らすと、ミョンイさんがでてきた。

「あら、妃主様の。どうぞにゃ」

快くいれてくれた。私はミョンイさんにお団子を渡した。

「これ、よかったらどうぞ」

「ありがとうございますにゃ。妃主様は部屋におりますにゃ」

丁寧に受け取られ、行くように促す。私はお辞儀をして中に入った。

 ノックをする。返事はない。入っていいのかな。静かにドアを開け、部屋に入る。お母様はすやすやと眠っていた。近くに椅子を持ってきて座った。お母様を見ていると、昔の思い出が思いおこされた。


『お母様、見て。花輪作ったの』

 王城の外の庭に私とお母様はいた。小さい手で作った花輪は不格好だったがお母様はにこにこしながら

『すごい上手ね』

と褒めてくれた。私はお母様の手を取り花輪を渡す。

『お母様にあげるね』

『ありがとう』

受け取って、花輪を頭の上に置いた。どう?と私に見せてくる。私は手を叩いて喜んだ。


 そんなこともあったな。クスッと微笑む。

「怜華...きてたのね」

体を起こそうとしたので手伝う。体を起こしたお母様は枕元に置いてあったボタンを押した。

 少しすると、ミョンイさんがお茶とクッキーを持ってきた。私は礼を言って受け取る。ベットの隣にある台に置いて、2人で食べた。

「今日なにかあったの?」

食べながら聞いてくる。顔になにかでていたのだろうか。私は首を横に振って

「いや、なにもないよ」

ととぼけた。今日あった出来事を言えるわけがなかった。お母様は微笑みながら頷く。

「そういえば、私って何歳に見える?」

唐突に聞いてきた。痩せているが、若いように思える。なにより私の小さい頃の記憶とそんなに変わっていない。

「うーん。50..?」

お母様はにこにこしながら首を横に振り

「80歳よ」

と答えた。私は驚いた。80には見えない。空界と地界では時間の流れが違う。そのせいなのだろう。お母様は自分のことを話始めた。

 精霊は人間と結婚することもある。実際、国民の1割は人間と結婚していて、大体は地界で住んでいるという。ただ、主様が人間と結婚するのは珍しい。普通は貴族の中から選ばれるのだとか。

 お母様も昔は助け人をしていて、主様とは地界で会ったらしい。

「初めて会ったとき主様は自分を役人と言ったわ。それから何回か会うようになって、2人で仕事をしたりもした」

懐かしそうに話す。

ある日、お母様は主様に呼ばれた。なにかやらかしたのかひやひやしていたらしい。そこに行くとあの役人がいた。お母様はそこで知った。役人が主様だったということを。

「驚いたわ。だけどもっと驚いたのは婚約してほしいということだった」

嬉しそうに言う。お母様は主様のことを好いていたため、すぐに返事をした。しかし、主様と結婚するということは地界には戻れなくなる。それは王族と結婚する人間の運命(さだめ)だった。そのため、なにもかも両親に話したときとても反対された。

「当たり前よね。一生会えなくなるんだから。両親にとっては私が死ぬのも同じことだった。最終的には反対を押しきってこっちに来てしまったのよ」

少し暗い顔をした。

「後悔してる..?」

私は聞いた。

「最初はね、黙ってでてきたようなものだから。でも、主様や精霊たちの方が好きだから。後悔はしてないわ」

とにこっと微笑んだ。

 お母様はそれから結婚して、ヒジャン様と私が産まれた。あやかしの世界はゆっくり時間が過ぎていく。その流れに身体は耐えきれなかった。私を産んだ後、体調を崩した。診断された病名は空界(シエール)病。空界病は人間が長くこちらにとどまると発症する病気。人によって症状も死亡率も変わる。お母様はこの病気のことを知りながら、空界に住むのを決めたのだった。なにかの病気だろうとは気づいていたが、空界病だったなんて。

「あなたは精霊の遺伝子が身体に刻まれているから、きっと大丈夫ね」

そっと微笑む。そうか、精霊と人の間に生まれたから、精霊の遺伝子も持ってるんだな。不思議な感じがした。

「話したのは、変な心配をさせたくなかったからよ。幸い症状は軽いし、進行もゆっくりだから気にしなくていいわよ」

私は頷いた。お母様は強いな。病気というものを怖がらず、しっかりと受け止め、前に進んでいる。ひとまず元気そうで安心した。

 ゴーンゴーン

王城の鐘が鳴る。私は帰ろうと立ち上がった。

「玄関まで送るわ」

ベットから降り、そばにあった杖をついた。ゆっくりと歩く。私はお母様が転ばないように気をつけながらついていった。

 「これ、作ったの。よかったら食べて」

お母様がキッチンから箱を持ってきた。開けるとぎっしりとクッキーが詰まっている。良い匂いが漂っていた。

「ありがとう」

私は笑顔で受け取った。

 お母様に見送られながら、部屋に戻った。

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