不思議な夢
王城の庭にて
『姫様、姫様。どこにいらっしゃいますか』
『ばあやったら、心配性ね。ここにいるわよ』
ばあやと言われている精霊が探していると、草むらから小さな精霊がでてきた。着ている高貴な服が汚れていた。頭や腕にブレスレットなどの装飾品がついている。2人とも精霊の姿といわれる形ではなく、人型だ。姫様と言われていたこともあり、階級が高いことが分かる。
『姫様。まあ、こんなに汚れて。何をしていたのですか』
ばあやは女の子に近寄り、服についた泥をはらった。
『友達の子供がいなくなって探していたの』
子猫のように小さな精霊を見せる。紫陽花の精霊なのか、体中に紫陽花の花びらがちりばめられている。女の子の手の中で、ヒャーとあくびをしている。
『姫様はいつも、自分のことより他の精霊のことが大事なのですね』
と頭をなでる。女の子は嬉しそうに笑っていた。
『でも、姫様。主様にどう言われるか』
ばあやはため息をつく。この先が思いやられるようだった。
『ヨンファ』
低い声が響く。顔を見えていないが、手を振っているようにみえた。女の子は振り向き
『お父様』
と言って走っていった。
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目を開けると、そこは私の家だった。いつの間にか、寝ていたらしい。一体、なんだったんだろう。不思議な夢だ。まるで、現実のようにリアルに思えた。ぼーっとしてる体を奮いたたせ、支度をし学校に向かった。
「おはよう」
教室で景色をじっと見てる私に結が声をかけた。はっとして挨拶を返す。
「どうしたの?空界で何かあった?」
いつもと違う雰囲気を察したのか、声をかけてきた。
「違うの。ただ、変わった夢を見て」
「夢?」
「そう。とてもリアルな夢だった」
私は結に夢のこととオルさんにブレスレットを貰ったことを話した。
「わかった。空界に行ったときに貰うね。夢って空界の話だよね。精霊がでてきたってことは」
結が言う。
「そうだと思う」
私はうなずいた。王城の庭園にいて、主様、姫様というワードがでてきたということは、王族なのだろう。
「その夢で何か気になることでもあるの?」
結が私をみて言う。
「空界にいってから初めて夢を見たから気になっちゃって」
「あー。強く頭にのこるとそれ関係の夢みるよね。そういうのじゃないかな?」
「そうかも知れないね」
ふふと微笑んだ。
「主様って娘いるの?」
さりげなく聞いた。すると、結は難しい顔をした。
「私たち助け人って王族に詳しくないんだよね。習わないし。でも、息子がいるのは知ってるよ。たまに重臣の会議に参加してる。王族は表舞台にでてくることがたまにあって。でも、その時に娘はいなかった気がする。確実ではないんだけどね」
苦笑いしながら言った。なるほど。だとしたら、本当にただの夢なのかもしれない。まるで同じところにいて、実際見てたような感覚に陥っていたが、夢をみると現実かどうか曖昧になる。そのせいかと結論づけようとしていると、結がなにかをひらめき
「100年ぐらい生きてる精霊がこの近くに住んでるんだよね。よかったら、その疑問きいてみない?」
と聞いてきた。
「いいの?」
結はうなずく。やはりうやむやのまま終わらしてはいけない。私はお願いした。
学校が終わると、私たちは下駄箱で待ち合わせ、100歳の精霊のところにむかった。
「すみません。主様に姫様っていますか?」
塀の上にいる年老いた精霊に声をかけた。亀のような姿で、苔の塊が甲羅の役割をしているその精霊は快く答えてくれた。
「今はいませんよ。昔はいらっしゃったんですけどね。火事で亡くなってしまって。好奇心が旺盛だったと聞いております」
「その方のお名前って何て言うんですか?」
私は聞いた。その精霊は少し悩み
「うろ覚えではありますが、たしか、ヨンファ様。だったかと」
私たちは顔を見合わせた。ヨンファ。夢に見た精霊と同じ名前だ。私たちはその精霊にお礼を言って別れた。歩きながら考える。姫様が生きてた時のできごとを私は見ていたことになる。確信はないが頭がそうだと感じている。でも、なぜ急に。私の頭の中に1つの仮説が思い浮かんだ。結を見ると、結もなにか気づいたように思えた。
空界で目を覚ます。少し横になっていたが、王城に行くかと起き上がった。右手に違和感を覚える。それは昨日、オルさんに貰ったブレスレットがついていた。そういえば、取らずに寝たんだった。そう思った時、はっとした。ブレスレットをよく見る。間違いない。仮説が確信に変わった。授業の時間までまだ時間がありそうだ。私は王城に走っていった。
王城に入り、重臣たちがいる階につくと、2人の兵士が立っていた。上に行くには、ここを通るしかない。しかし、見習いはこれ以上にいけない。私は兵士に声をかけた。
「あの、オルさんはいらっしゃいますか?」
すると、兵士たちは
「オルというものはおりません」
と答えた。そんなはずはない。
「雪柳の精霊で主様の側近だそうです。合わせてください」
あわせてくれと言い寄る。
「お帰りください。これ以上騒ぐと捕まえることになります」
そんな...睨むような鋭い目線で言われて、しぶしぶ諦めた。
いないなんて。そんなはずはない。オルさんは側近だと確かに言っていた。兵士が知らなかっただけなのか?それとも。王城の庭にふらふらと出てベンチに座った。空を見上げる。雲1つない青空が私を見下ろしていた。
「わしを探していたとか」
声が聞こえた。前を向くとオルさんがこちらに歩いてきていた。私は急いで立ち上がり、駆けよる。
「オルさん。兵士にオルさんのことを聞きましたが、そんな精霊はいないと言われてしまいました。なぜですか」
そう聞くと、オルさんは少し悲しい顔をした。
「それはすまなかった。あの兵士たちは王城の内情に詳しくないんじゃ。重臣、何人か知ってたとしても、主様の側近までは分からないはずじゃ」
尻尾が垂れ下がり、しゅんとなっていた。犬みたい。微笑みそうなのを抑えた。
「まあ、仕事してるときは人型だし、違う名前で呼ばれておるからな。オルと言っても伝わらないだろう」
と付けたした。なるほど。だからか。納得した。
「それで、なにか用か?」
私はブレスレットをはずし、手の上に乗せた。
「これって、主様の娘さんのものではありませんか」
そう言うと、オルさんは驚いたような顔をした。少なからず、動揺してるようにも思える。
「なぜ。それを」
私はこのブレスレットをつけたことで、姫様がでてきた夢を見たことを話した。そして、その子がつけていた装飾品の中にこの"龍の飾りのブレスレット"があったことを伝えた。話終えると、オルさんは頷いた。
「確かにこれは、姫様のものじゃ」
「ではなぜ、これを私たちに?」
すると、オルさんは話始めた。
オルさんは元々、姫様の護衛をしていたという。姫様が亡くなった後、主様が側近に添えてくれたらしい。
「姫様がまだいらっしゃったとき、わしにくれたものじゃ。助けてくれたお礼をどうしようかと考えていたときに、目に止まったのじゃ。私はブレスレットはつけんし、どうせなら翡夜さんたちのような若者につけてほしくてな。姫様も喜んでくれてるだろう。主様には許可をもらっておる。安心して持っておれ」
オルさんは微笑んだ。
「わかりました。大切にしますね。紀夜にも伝えておきます」
そう言うと、オルさんは笑顔で頷いてくれた。




