シーちゃんとの別れ
お待たせして申し訳ないです。
ようやく書き終わりました。
遅いとは言わせません。
ここ最近一話一話がかなりヘビーになってきているような気がしたので、久しぶりに少し軽めにしてみました。
誤字等ありましたら教えていただけるとありがたいです。
「私が気絶した後、一体何が……?」
泣き止んでから数分。ラナさんとジャスミンさんに何があったのか尋ねる。
「「……」」
2人は無言で見つめあうと、何か決心したように頷いた。
「ん~とね~、私たちにもよくわからないんだよね~……」
「気が付いたらいなくなってて……」
どうやら2人にも分からないらしい。
……何はともあれ、あの状況から全員生き残ったのは奇跡と言えるだろう。
私に至っては、ドラゴンの攻撃をまともに食らったはずなのに目立った外傷はない。
きっと、当たり所が良かったか、手遅れになる前に回復してもらったのだろう。
『…………あの、何か忘れていませんか?』
シーちゃんがそう話しかけてくる。
そう言えば、ここには要石を正常に戻すために来たんだった。
「……やりたくないよぉ……失敗した時が怖いじゃん……」
『大丈夫ですよ。元はと言えば私の一部ですよ?私が制御できないはずがないじゃないですか。失敗するなんてありえませんよ。多分」
「多分って言ったよね?今多分って言ったよね??」
『はいはい、いいから早く要石のとこまで歩いてください』
シーちゃんはめんどくさそうに私を催促する。
私は渋々要石のところまで歩く。
「……んで、どうすればいいんだっけ?」
『要石に触れてあげてください。そこからは、私が」
私はシーちゃんに言われるがまま、要石に触れる。
その瞬間、私の中から何かがぬるりと抜けていくような感覚を覚える。
きっと、シーちゃんが私の中から出ていったのだろう。
そこからは、私が何かするまでもなかった。
私が要石に触れているだけで、辺りの瘴気は見る見るうちに晴れていき、枯れていた草花は元気を取り戻し、どんどん周りの風景と馴染んでいく。
その光景は、さながら神話の一部を見ているかのようだった。
『ありがとうございました。これで暫くは大丈夫でしょう』
何処からともなく、シーちゃんの声が聞こえる。
2人は特に違和感を感じてはいなさそうだけど、私は違和感を感じた。
どこかぽっかりと穴が空いたような、そんな喪失感を感じる。
「……そっか、お別れしなきゃいけないんだね」
私はそうシーちゃんに話しかける。
考えてみれば、当たり前のことだ。
ずっと、一緒にいられる訳が無い。
『そうですね。今まで本当にお世話になりました』
「……また、会える?」
少し涙ぐんだ声でシーちゃんに尋ねる。
『ええ。あなたが会いに来てくれれば』
「……約束できる?」
『もちろんです。私は嘘はつきませんよ』
少し偉そうにそう答えるシーちゃん。
私はもう、泣いているのか笑っているのかさえ分からない。
「メルちゃん……」
ジャスミンさんが、私のことを抱きしめる。
とても暖かく、優しい。
「……じゃ……さん……わたっ……」
言葉がつかえて、うまく話すことができない。
そんな私を、ジャスミンさんは優しく包み込む。
私は泣いた。
『全く……今生の別れってわけでもないんですから、そんな泣かなくてもいいじゃないですか』
「う、うるさい!別れは悲しいもんでしょ!!」
気が付くと、辺りは夕日に照らされて神秘的な光景になっていた。
シーちゃんが呆れたように話しかけてきたせいでムードはぶち壊されたけど。
「……もうこんな時間か~。そろそろ帰らないとだね~」
「そうだね、一日留守にしてるから依頼とか溜まってそうだし……」
ラナさんとジャスミンさんはそう言いながら帰る支度を始める。
『ほら、あなたも早く帰らないと真っ暗な森の中に一人きりになっちゃいますよ?』
「……一人じゃないもん。シーちゃんと一緒だもん」
『そういう問題じゃなくてですね……』
シーちゃんは呆れたようにそう答える。
「……また、会いに来てもいい?」
『もちろんです』
「すぐ出てきてくれる?」
『寝ていなければ』
「……そっか」
私は涙を拭い、シーちゃんに向けて叫ぶ。
「……またね!シーちゃん!!」
『えぇ、また』
こうして私たちは、帰路に就いた。
きっと、大丈夫だろう。
シーちゃんも、私も。
涙は、既に乾いていた。