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断罪と憤怒

今回はラナ視点でお送りします。

途中でメル視点に戻します。

「「メルちゃんっ!!」」


砂煙を立て始めたと思ったら、突然ドラゴンがメルちゃんを攻撃した。

振り下ろされた長い尻尾はメルちゃんに直撃した。

衝撃が強すぎたのか、メルちゃんはランタンを手放し、ランタンは地面に突き刺さる。

そして、メルちゃんはそのままランタンの浄化範囲外まで吹っ飛ばされた。


「ジャスミン!!」

「わかってる!」


ボクが指示を出すよりも早く、ジャスミンはランタンを回収しようと動く。

浄化範囲外には致死量の数倍の瘴気が満ちている。

恐らく……持って30秒。


剣を構え直し、ドラゴンに向き合う。

メルちゃんを救うためにも、ボクはこいつの足止めをしなくちゃならない。


「はぁぁぁあっ!!」


声を上げ、正面からドラゴンに切り込もうとした時、どこからか凛とした声が聞こえた。


「……意識レベルの低下を確認。これより自己防衛を開始します」


どこか無機質な、それでいて聞きなじみのある声に、私は困惑する。

今の声は、明らかにメルちゃんの声だ。



切り込むのを中断し、バックステップでドラゴンと距離を取る。

そして、メルちゃんが吹っ飛んでいった方向を見る。




メルちゃんが立っていた。

瘴気が立ち込める中、まるでダメージを全く受けていないように平然と立っている。


……でも、何かがおかしい。


「メルちゃん!」


ジャスミンがランタンを持ってメルちゃんに駆け寄る。

ランタンが近づき、メルちゃんの周囲の瘴気が浄化される。


「……ッ!!」


メルちゃんの姿を見て絶句する。

メルちゃんの左腕は曲がるはずのない方向に折れ曲がっていた。

腕からは血がぽたり、ぽたりと滴っている。

口元からも血が滴っており、常人なら動くことも不可能なはずだ。


「……」


メルちゃんは無言で、ドラゴンに向けて目立った外傷のない右手を突き出す。


「……断罪(コンヴィンツィオーネ)


聞いたことのない魔法名。

直後、メルちゃんの右手からチュンッという音を立て閃光のようなものが走る。

閃光はドラゴンに吸い込まれたかと思うと、胴を真っ二つに切り裂く。


「……憤怒(ラヴィア)


メルちゃんは右手を空に掲げながらそう唱える。

すると、メルちゃんの頭上に巨大な魔法陣のようなものが出現する。


「……貫け(ペルフォラーレ)


そう言いながら、右手をドラゴンに向けて振り下ろす。

次の瞬間、魔法陣から矢の雨のように閃光が降り注ぐ。

あまりの眩しさに、目を覆う。


閃光が収まると、そこにドラゴンの姿は無かった。

逃げたのかとも考えたが、あの閃光を搔い潜りながら逃げるのはほぼ不可能だろう。

恐らく……


ドラゴンがどうなったのかを想像し、背筋をつうと冷や汗が伝う。



ドサッ……


突然、背後から何かが倒れこむような音がした。

急いで音のした方に向かう。



メルちゃんが倒れていた。

近くで見ると、メルちゃんの怪我の様子が手に取るように分かった。

左腕は折れており、肋骨も何本か折れている。

こんな重傷で、今の今まで立っていただけでも奇跡だろう。


「……肉体(ボディ)消耗率64%。これより自己修復(オートリペア)を開始します」


メルちゃんが何か呟いたと思うと、メルちゃんの体がぼんやりと光りだす。

何が起こっているのかと、メルちゃんの様子を伺う。



……骨が元の状態に戻っている。


明らかにさっきまで曲がるはずのない方向に曲がっていたのに、今見るといたって正常に見える。


「信じられない……」


あまりに非日常的な光景に、思わず声が漏れる。

ジャスミンも、何が起こっているのか理解できないといった様子で、目を見開いている。


「……肉体(ボディ)消耗率9%。一定値に達したため、修繕を終了します」


またメルちゃんが呟き、光が収まる。


「……ジャスミン、今のって……」

「さ、さぁ……私にもさっぱり……」

「……おーい、メルちゃ~ん……大丈夫~……?」


光が収まってから何も言わないメルちゃんが気になって、声を掛ける。


「……すぅ……すぅ……」


かすかに聞こえてきたのは、寝息。

どうやら寝てしまったらしい。


「「はぁ~~~~……」」


張り詰めた空気を吐き出すように、息を吐き、その場にジャスミンと2人で仰向けになる。

体中が悲鳴を上げている。

かなりの無茶をしたから当然と言えば当然だけど……


……いや、今はやめておこう。

考えたってわからないことはいくらでもある。

とにかく、休もう。


ボクはそっと目を閉じた。





「ん……あれ……?」


ふと、目が覚める。

どうやらあの後、気絶するように眠ってしまったらしい。

私は体を起こす。

……全身が恐ろしく痛い。

一体何が……


「……そうだ!ドラゴン!!」


私の意識は半強制的に覚醒する。

私は確か、ドラゴンの尻尾に当たって吹き飛ばされて……


私は辺りを見回す。


「……!!」


ジャスミンさんとラナさんが少し離れたところで倒れている。

足を縺れさせながら2人に駆け寄る。


「ラナさん!ジャスミンさん!!」


私は泣きそうになりながら名前を呼ぶ。

どうしよう……私のせいで……


「……ん……あれ、メルちゃん起きたの?」

「ひゃっ?!」


突然ラナさんの声がして、驚きのあまり少し飛び上がる。

どうやら寝ていただけらしい。


「ラナさん……ラナさぁぁぁぁあん……」

「ちょっ?!メルちゃん急に泣き出してどうしたの?!」


目からぽろぽろと涙が零れ落ちる。

私はラナさんを抱きしめながら泣いた。


「……2人だけずるい……」


後から起きてきたジャスミンさんに気が付いたのは泣き止んだ後だった。

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