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森の捕食者

「もうそろそろポイント……だよね?」

「うん、気を引き締めていこう」

「は、はい……!」


途中ところどころにあった瘴気をランタンに吸い込みながら、私たちはシーちゃんが言っていたポイントへと順調に歩を進めていた。

が、突然ラナさんが足を止めた。


「う~ん……」

「ラナさん……?どうされました?」

「いやね~……背後が気になってさ」


そういいながら、腰の剣に手をかけるラナさん。


「……?それってどういう……」


直後、背後の茂みから何かが飛び出してきた。

ラナさんは腰に提げていた剣を抜き、背後からの襲撃者を切りつけた。

が、その襲撃者は攻撃を読んでいたかのように身をひねって躱した。


「グルル……」


襲撃者の正体はオオカミのような見た目の魔物だった。

目は赤く染まっていて、見るからに凶暴そうだ。


「こいつは……」

「見た目は『森の捕食者(フォレストプレデター)』だけど……明らかに素早い……」

「多分瘴気で活性化してるんだろうね~……厄介だなぁ……」


フォレストプレデターはウルフ種の魔物で、その名の通り森を拠点に活動する。

性格は攻撃的で、獰猛。肉食獣で、人を襲うこともある。

通常個体ならそこまで速くはないはずだけど、どうやらこいつは瘴気によって能力が大幅に上昇した個体みたい。


「戦う……しかないですよね」

「邪魔されるのは面倒だからね~、ちゃっちゃと片づけちゃおう!」


そういいながらラナさんは剣を構え、もう一度切りつける。

が、バックステップで躱され、空振りに終わってしまった。


「あ~もう!すばしっこい!」


私もジャスミンさんと一緒に魔法で何度か攻撃してみるけど、すべて躱されてしまう。


「は、速すぎて当たらないよ~!」

「どうにかして動きを鈍らせないと……ジャスミン!メルちゃん!しばらく相手の動きを見てて!」

「わ、分かった!」

「わ、分かりました!」


攻撃してもこちらが不利になるだけだと考え、ラナさんはひたすら相手の攻撃を剣でいなし始めた。

ただでさえ速い攻撃をいなし続けるのはとても難しいことのはずなのに、ラナさんはさも当たり前かのように攻撃を受け続ける。

しかも、私たちに相手の癖を見つけてもらう為か、時々反撃もしてくれている。




そして、冷静に観察していると、狼の行動パターンが読めてきた。

基本攻撃は素早く肉薄して、爪での切り裂き攻撃。爪はかなり鋭くて、まともに当たれば腕の1,2本くらいなら簡単に切り裂きそう。


あと、回避の仕方にも癖があることが分かった。

ラナさんの攻撃や反撃が縦切り主体だからか、狼はバックステップで攻撃を回避することが多い。

空中にいる場合はその場で身を左にひねって回避している。


……つまり、こいつに攻撃を当てる方法は……!



「ラナさん!そのまま斬りこんでください!」

「……!りょーかいっ!」


私はラナさんに呼びかけて、相手の行動をもう一度確認する。

ラナさんはいままであまり使ってこなかった横切りで斬りこんでいった。

狼は私の予想通り、バックステップで攻撃を回避する。

私はそのタイミングに合わせて、狼の背後に火球(フィアンマ)を放つ。


「ギャンッ!」

「あ、当たった!」


狼は背後の火球にバックステップで突っ込み、軽く吹っ飛ぶ。


「よし、このまま……ッ?!」


突然狼は起き上がって、急に私に向かって突進してきた。


「まずいっ!メルちゃん避けて!」


どうやら攻撃したことによって狼のヘイトが私に向いてしまったようだ。


「……ッ!」


最初の攻撃は辛うじて回避できたけど、回避したところでバランスを崩してしまった。

その隙を見逃すはずもなく、狼の爪が私に迫る。


が、その時、ランタンが光りはじめた。


「ま、眩し……ッ!?」


ランタンの光はどんどん強くなる。

狼は私から少し距離を取っているけど、何だか苦しそう……?


「そ、そうか!」


突然、ラナさんが声を上げる。


「こいつは瘴気によって活性化してるんだから、瘴気と同じく吸魔石に弱いんだ!」

「な、なるほど!だから苦しそうなんだ……」


ラナさんとジャスミンさんがそんな会話をしている間にも、ランタンの明かりはどんどん強くなり、光が消えると、そこに狼の姿はなかった。

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