ランタンで照らす要石への道
錬金も無事に終わり、解散しようとしたところで、ものすごくおなかが空いていることに気が付いた。
考えてみれば、昼前から今までずっとアトリエに籠りっきりだ。
良く倒れなかったな……まぁ倒れたけど。
「あの~……」
「ん?メルちゃんどしたの?」
「えっと……お腹空いてません?」
私がそういうと、タイミングを見計らったように私のお腹がぐうと鳴る。
「「お腹空いたね~」」
相変わらず息ぴったりなラナさんとジャスミンさん。
「んじゃ、皆でご飯食べ行こっか!メルちゃんが頑張ってくれたんだから、今日は私が奢るよ!」
「いいんですか!?やったぁ!」
「じゃあ、大通りのところの『Harmony』にしない?あそこのホワイトシチュー食べたいな!」
「いいね、そうしよう!」
とんとん拍子に話が進み、夕飯はホワイトシチュー?になった。
食べたことはないけど、ジャスミンさんがお勧めしてくれたものだからきっと美味しいはず。
とりあえず、その『Harmony』に行ってみよう!
「ふぅ…」
結論から言おう。
美味しかった。
すっごい美味しかった。
今まで食べた者の中で上位に入るくらい美味しかった。
クリームの濃厚な風味と鶏肉が絶妙に絡み合って、パンと一緒に食べるとこの世の物とは思えないくらい美味しかった。
しかも量がかなりあって食べ応えがすごかった。
これで小銀貨1枚って言うんだから驚きだ。
「いや~、久しぶりに食べたけど美味しかったね~」
「やっぱここのシチューは最高だね!メルちゃんは満足してくれた?」
「はい!毎日食べたいくらい美味しかったです!」
「そっかそっか、ならまた来ようね~」
そんな会話をしながら、私たちは帰路についた。
かなり夜も遅かったので、このまま解散……するはずだった。
今私はベッドに横になっている。
……なぜか3人で。
なんでこうなったのかは私にもわからない。気が付いたらお泊り会をする話になっていて、気が付いたら私のアトリエに3人で戻ってきていた。
まぁそこまではいい。
問題は3人で1つのベッドを使っているから、結構狭いということ。
ソファーに逃げるのも考えたけど、真ん中に私、右側にはジャスミンさん、左側にはラナさんという布陣で、私を逃がす気はさらさらなさそう。
第一逃げようにもジャスミンさんに抱き枕にされてるから動けないけど。
しかもジャスミンさんの顔がすっごい近い。
私がジャスミンさんの方を向けば唇が触れてしまいそうなくらい近い。
誰か助けて……
私の想い虚しく、その夜はジャスミンさんに抱かれながら過ぎていった。
……まぁ嫌ではなかった……かも?
翌日。
私たちは朝食を手早く済ませると、昨日作ったランタンを持ちながらシーちゃんの言っていたポイントまで戻る。
森に入ってすぐは特に変化を感じられなかったけど、ポイントに近づいていくにつれて倒木や枯れた草が目立つようになってきた。
ラナさん曰く、通常ならこんなところに瘴気が出るはずはないから、植物たちも瘴気に対する耐性がないのだろう、とのことだった。
やはり瘴気は人体だけではなく、耐性のないすべての生物にとって猛毒な気体らしい。
さらに奥に進んでいくと、昨日見たのとまったく同じ、紫色の靄がかかり始めた。
が、靄は魔法でもかけられたかのようにランタンにどんどんと吸い込まれていき、きれいさっぱりなくなった。
「すごい……瘴気が一瞬で……」
『吸魔石は対魔性能に優れていますからね。この程度の瘴気なら一瞬でしょう』
「できれば瘴気と会うのはこれで最後にしたいけどね~……」
「そうだね、早く原因を突き止めなきゃ!」
私たちは要石へとまっすぐ進み始めた。