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力を合わせて

錬金を始めて、あっという間に10分が過ぎようとしていた。

私の魔力はほとんど空になり、このまま続行するとどうなるか私にもわからない。

……が、そんな満身創痍の私を嘲るように、錬金釜の中では吸魔石のピースが光り続けている。

こんなに時間をかけているのにまだ形すらできていないことに焦燥を覚え、魔力を注ぎ続ける。


「……ねぇラナ……このままじゃ……」

「…………」

「止めないと……メルちゃんが力尽きちゃうよ……!」

「…………」

「何とか言ってよ!!早くしないと……!」

「わかってる!!私だって必死に考えてるよ!」


後ろで2人の声が聞こえた……気がする。

多分……気のせいだ。


それよりも、完成させなきゃ。


私にしか、できないことだから。


私が、やらなきゃ。


が、私がどれだけ気力で粘ろうと、吸魔石のピースは光り続ける。


「…………ぁっ……」


自分でも驚くくらいか細い声が出た。

息は段々と粗さを増していき、視界がぼやけ始める。

でも、私は魔力を注ぐのをやめない。


やめるわけにはいかない。


既に体は震えはじめ、心臓が早鐘を打っている。

……でも、やめない。


絶対に諦めない。



しかしその思いは届かず、私の体が危険信号を点滅させている。

まっすぐ立っているのかどうかもわからなくなってきて、ふらつき始める。

何とか持ち直そうとしても、持ち直すどころか立っているのがやっとだ。



私は、これ以上の続行が不可能であると悟ってしまった。



……私の、力不足だ。



……ラナさん……ジャスミンさん……



……ごめんなさい……私は……私には……無理だったみたいです……



『諦めるのはまだ早いですよ』


突然、頭の中にシーちゃんの声が響く。


「シー……ちゃん……」

『全く……そんなに焦らなくても方法はいくらでもあるのにどうしてそこまで無理をするのですか?』

「だって……私にしか……できないことって……言ってたから……」

『確かにあなたにしかできないとは言いました』


シーちゃんはそこまで言うと、少し間を開けてから私を諭すように話しかけてくる。


『事実、この錬金をするためには私が宿っているあなたの力が必要です。あなたがしようとしたことは全く間違っているというわけでもありませんが、正解か不正解で言うと、不正解です』


私は魔力を注ぎながらその話を聞く。

魔力を注ぐと言っても、私の魔力はほぼ空だからあまり意味はないけど。


が、やはり既に私は限界を迎えていた。

突然足に力が入らなくなり、膝がガクッと崩れ落ちる。


そのまま床に倒れ伏すかと思い目を瞑るが、いつまでたっても衝撃がやってこない。


『私がいつ、()()()()()()()()()()()必要があるって言いました?』


一瞬何を言っているのかわからなかったが、恐る恐る目を開けたことで、私はその言葉の意味を理解した。


「そういうことだよ。メルちゃんは一人じゃないんだからさ、もっと先輩を頼ってくれてもいいんだよ~?」

「メルちゃんばっかり大変な思いさせるのは……私が許せないから」


私の体はラナさんとジャスミンさんに支えられていた。



……そうか。


やっとわかった。


1人でできないなら、助けてもらえばいいんだ。


「…………ありがとうございます……あともう一つお願いなんですが……」


私はそこで少し息を整え、言いたいことを一気に吐き出す。


「……力を……貸してください」


2人は少し笑い、頷いてくれた。




私は、1人じゃない。

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