対瘴気用の道具を作ろう
「お待たせ~、持ってきたよ~」
ラナさんがアトリエを出てから10数分。ラナさんが淡い緑色の、かなり大きめの魔石を持って涼しい顔をして中に入ってきた。
見た目からしてかなり重そう。これを抱えながらここまで来たのに顔色一つ変わっていない。さすがの体力とスタミナだ。
『ほうほう、大嵐の巨人の魔石ですか。質も申し分ないですね。これならおそらく大丈夫でしょう』
ラナさんが持ってきた魔石を見て、シーちゃんがそう言う。
タイフーンが何かは知らないけど、魔石の大きさから相当大きな魔物であろうことが想像できた。
『さて、では錬金を始めましょうか。いつもと同じように錬金してもらえれば大丈夫ですので』
「うん!……でも見た目がイメージできないからうまくできるかどうか……」
錬金術において、造りだす物質の具体的な形を思い浮かべることはとても重要なこと。
私たちにおける想像は、大工の人たちが図面を引くのと同じ。
具体的な形が決まってないまま錬金しちゃうと、何だかよくわからないものができちゃったりするの。
『なるほど……でしたらランタンのようなものを思い浮かべてみてください』
「ランタン?」
『はい。手で直接触らないように棒が付いていて、そこから紐状のもので吊り下がっているランタンを想像してみてください』
ランタンってあれだよね?あの四角い箱みたいなのの中が光ってて夜道を照らすあれ。
それなら見たことあるし、簡単に想像できるかも!
『考えはまとまりましたか?』
「…………うん!何とかなると思う!」
私は笑顔でそう言う。
その笑顔を見て、ラナさんとジャスミンさんもにこりと笑う。
シーちゃんはどうかわからないけど、多分笑ってると思う。
それはともかく、早く錬金しちゃわないとね!
『準備は大丈夫ですか?』
「もちろん!任せといてよ!」
今回の材料は、ラナさんが持ってきてくれた魔石とジャスミンさんが持ってきてくれた吸魔石、市場で買ってきた銀のインゴットと森で採ってきた原木。
銀のインゴットはランタンの外枠部分と吊り下げる紐に使えそうだから、西側にある工場エリアまでひとっ走りして買ってきた。
私のアトリエと反対方向だったからすっごい疲れた。
原木は持ち手の棒になると思う。そのあたりをうまく調整しないと……
私は材料をすべて錬金ピースに変え、錬金釜に入れる。
……ていうか、ジャスミンさんもラナさんもここでどうせピースにするならピースにして持ってきてくれればよかったのに……
そしたら楽だったんじゃ……まぁ今更だけど……
……とにかく、今は集中しなきゃ。
私は錬金釜に今までと同じように魔力を注ぐ。
が、錬金ピースはその場でふよふよと漂っているだけ。
その中で唯一光っているピースが1つ。
……吸魔石のピースだ。
吸魔石のピースが光っている。
どうやらピースとなっても、魔力を吸収するという本来の特性は衰えていないようだ。
……なら、吸収しきれないほどの魔力で押し通す!
私は注ぎ込む魔力を一気に上昇させる。
2倍……
3倍……
4倍に達しようというところで、ようやくピースがくるくると回り始めた。
勢いそのまま、私は一気に完成を目指す。
今の一瞬で私の総魔力の1/3近くが持っていかれてしまった。
急いで仕上げないと、私の魔力が底をついちゃう。
ただでさえ消費魔力が4倍近いのに、のんびりしてたらすぐなくなっちゃうから、迅速に終わらせなきゃ。
……絶対に成功させて見せる。