瘴気を突破せよ
軽い昼食を取った後、私たちはグラン大森林の北東、シーちゃんが地図に印を付けてくれたところへと向かった。
シーちゃんが印を着けたところは、森の入り口から少し遠いところ。歩いて30分かかるかどうかといったところだ。
しかし、向かい始めて20分が立とうとしていた時、前方に紫色の靄のようなものが大量に見えた。
「なっ!?なんでこんなところに”瘴気”が!?」
「瘴気…?」
ラナさんが聞きなれない単語を口にしたので、思わず聞き返す。
「瘴気っていうのはね、簡単に言えば私たちにとって猛毒な気体なの。少しでも吸うと呼吸困難に陥って、最悪の場合…………命を落とす」
ジャスミンさんがそう説明してくれる。
「ほとんどの場合、瘴気は魔素の濃いところ、例えば森人族が住んでる森とかにごく稀に発生するくらい私たちには縁のないものなんだけどね~……」
「なぜかこんな森の中に大量発生している……ってことですか……?」
私たちは少し考えたが、瘴気は消える気配もないため一度私のアトリエに戻ることにした。
作戦を立てないことにはどうしようもないし、何をするにもアトリエの方が都合がいいからね。
「さて、無事に帰ってきたはいいけど……」
「何とかして瘴気を吸わない方法か、瘴気を消し去る方法を考えないとね~……」
本格的に動き始めてすぐ難題にぶつかってしまい、頭を悩ませる。
「何とかして瘴気を消し去る……う~ん……シーちゃん何かいい案ない?」
『案ですか?無くはないですが……』
「「「ほんと?!」」」
シーちゃんの回答に、私たちは目を輝かせる。
『皆さんは”吸魔石”というものを知っていますか?』
「吸魔石……?」
聞いたことのない単語に、首を傾げる。
「吸魔石……あ、もしかして……皆ちょっと待ってて!」
どうやらジャスミンさんには心当たりがあるらしく、すごい勢いで外に飛び出していった。
「「…………?」」
「はぁ……っ……はぁ……っ……た、ただいま……」
少しすると、激しく息切れしたジャスミンさんが手に何かを握りながら中に入ってきた。
ここからジャスミンさんのアトリエまでは少し距離がある。
かかった時間から、かなり全力で走ったということは安易に想像できた。
「き……吸魔石って……これ……じゃないかな……」
そう言って、ジャスミンさんは私にキラキラと光る、まるで宝石のような拳大の石を渡す。
『そうそう、これです』
「ジャスミンさんすごい!なんで持ってたんですか?」
「少し前にね……岩石の発破用の爆弾を作って……崖崩れで落ちてきた大きな岩を……爆破したことがあったんだけどね……ふぅ……その時にその岩の中から出てきて、綺麗だったから持ち帰ったんだよ……そしたら、これを持ってた間上手く魔法が使えなくて……ずっと倉庫に置いてたのを思い出したんだ」
魔法が使えない……ほんとに魔力を吸収しちゃうんだ……
『あとはそうですね……魔石があれば十分ですね』
魔石かぁ……
師匠にもらったやつは杖になっちゃったし、そんなに都合よく素材が集まるわけ……
「あ、魔石なら持ってるよ~、取ってくるからちょっと待っててね~」
そう言ってラナさんは外に出ていった。
なんで魔石なんて持ってるんだろう……
『よかった、これで無事材料が……あぁ、忘れるところでした』
「ん?どうかしたの?シーちゃん」
『いえ、これらの素材を錬金しないといけないのですが、それができるのはあなただけなんですよ』
「へ?私?なんで私?」
『なんでって……私が宿ってるのは誰だと思ってるんですか全く……』
そう言ってため息をつくシーちゃん。
鈍感で悪かったね!!