真面目なようでどこか抜けているシーちゃん
1週間ほど投稿が遅れてしまい申し訳ありません……
少し暑さでばててしまい、あまり執筆にとりかかる時間を取ることができませんでした……
その分普段より1000文字ほど多く書きましたので……
皆様も体調管理にはお気を付けください。
朝日が私の顔を照らし、ぱちりと目が覚める。
まだ少し倦怠感が残っているけど、眩暈のような感覚はない。
体を起こそうとして、胸の上に誰かの腕が乗っていることに気が付いた。
言わなくてもわかるだろうけど、もちろんジャスミンさんの腕。
どうやらずっと私の隣にいてくれたらしく、腕を私の胸に乗せたまますやすやと寝息を立てている。
私はジャスミンさんを起こさないようにそっと腕をどけ、静かに寝室を後にした。
リビングに出て軽く体を動かしていると、ラナさんがやってきた。
「体調はどう?もう動いても平気なの?」
「はい、だいぶ良くなりました!」
「……そっか。よかった」
心配そうな顔をしてそう聞いてきたので、元気よく返事をする。
その様子を見て安堵したような表情を浮かべるラナさん。
ラナさんとの会話に集中していた私は、背後から迫ってきたものに気が付かなかった。
ドンッ!
背後からの不意打ちをもろに食らった私はバランスを崩し床に倒れる。
何とか体勢を立て直そうとしたが、力いっぱい抱きしめられ完全に身動きが取れなくなった。
「ちょっ……ジャスミ~ン……?メルちゃんすっごい苦しそうなんだけど~……?」
ラナさんにそういわれフッと力を抜くジャスミンさん。
少し苦しかったけど、これが私たちの日常だ。
私たちは誰からともなく笑いだしていた。
「さて、メルちゃんも元気になったことだし!『約束』を果たしに行こっか!」
ひとしきり笑ったところで、ジャスミンさんが本題を切り出す。
そう、私たちの目的はシーちゃんとの約束を果たすことにある。
私が元気になったことで、ようやく本格的に動けるようになった。
「とりあえず、北東にある…要石だっけ?それの場所がわからないことにはどうしようもないよね~……あの森かなり広いから、やみくもに探しても多分見つからないだろうしね~……」
「う~ん……せめて大体の場所でも分かればいいんだけど……少し聞き込みしてみる?」
「そうですね、もしかしたら要石について知ってる人がいるかもしれませんしね」
方針が決まったところで、私たちは早速グラン大森林の要石についての聞き込みを始めた。
しかし……
「「「う~ん……」」」
聞き込みを始めて1時間が経ったけど、収穫は0に等しいレベルだった。
唯一の収穫といえば、狼の群れは1つだけではなく、いくつかの大きなグループに分かれている……ということだけだった。
全く意味のない情報というわけではないけど、要石の位置を特定するために使える情報ではないということは明らかだった。
私たちは一度聞き込みを中断して、グラン大森林の全体図が記された地図を観察してみることにした。
驚くことに、この森はシルヴァンドラを中心に円形に広がっているということが分かった。
ただ、それだけではどこに要石があるのか絞ることはできない。
大森林というだけあって、広さは帝都の10倍以上であることが分かった。
半径はおおよそ10km。面積にして大体300㎢。この中から要石をなんのヒントもなしに探し当てるのはあまりにも非現実的。
私たちは本格的に行き詰ってしまったらしい。
どうすれば……
『お困りのようですね』
突然、頭の中に聞き覚えのある声が響く。
ラナさんとジャスミンさんも同じ声が聞こえたらしく、辺りを見回している。
「……シーちゃん?」
間違えて愛称の方で呼んでしまったけどシーちゃんならわかってくれるだろう。
『シー?……あぁそういうことですか。そうですよ』
どうやらわかってくれたらしい。
「え~っと……メルちゃん?今の声って……」
ラナさんが困惑した表情を浮かべながらそう聞く。
ジャスミンさんもわけがわからないといったように首を傾げている。
「あ~……え~っと……」
『初めまして。私はシルヴァンドラといいます。この子から既に話は聞いていると思いますが、こうして話すのは初めてですね』
私が返答に困っていると、シーちゃんの方から自己紹介してくれた。
それを聞いた2人はお互いに顔を見合わせ、
「「……まぁメルちゃんだしねぇ……」」
と、半分諦めたような声を出す。
私が2人の中でかなりの異常枠になっているのはなぜだかよくわからないけど、今はそれどころではない。
「それで……何か御用?」
『いえ、ただ要石の場所を伝え忘れていたことにさっき気が付いたので伝えに来た次第です』
申し訳なさそうにそう言うシーちゃん。
「「「忘れてたんかいっ!!」」」
これは私たちから盛大に突っ込まれても文句は言えないだろう。
『いやぁ……力を取り戻すのに必死で完全にすっぽ抜けてまして』
「いやそれ一番大切なやつだよね?忘れちゃダメなやつだよね?真っ先に伝えるべきことだよね?」
「いくら伝説の巨木だとしても限度があると思うな~」
「そ、そうですよ!危うく私たちグラン大森林の中をしらみつぶしに探し回らなきゃいけないところだったんですよ?!」
私たちから責め立てられるシーちゃん。
少しかわいそうな気もするけど、これは怒られてもしょうがないと思う。
『面目ないです……あぁそうだ、少し体を借りますね』
そういって流れるように私の意識に入り込むシーちゃん。
むず痒いようなくすぐったいような感覚を憶えるが、抵抗はしないように細心の注意を払う。
といっても、むず痒い感覚に耐えていただけだけど。
少し経つと、体の感覚はあるのに動かせないという不思議な状態になった。
そして、私は何もしていないにもかかわらず、私の腕は机の上に置いてあるペンを取り、地図に〇印をつける。
『これで良しっと。あ、体を貸していただきありがとうございます』
シーちゃんがそういうと、体の自由が戻る。
「そんなことまでできるんだ……」
『ふふっ、すごいですよね。私もやってみたのは初めてなのですが、うまくいって良かったです』
「「「初めてなんかいっ!!」」」
しれっと実験台にされたらしく、思いっきり突っ込む。
なぜかラナさんとジャスミンさんも突っ込んでいるけど、それは一旦置いておこう。
何はともあれ、これで要石の位置が分かった。
私たちは、早速その場所に向かってみることにした。