シーちゃん
意識が戻ってから2日経ったが、私はまだベッドの上から動けずにいた。
動きたいのは山々だけど、もうしばらくは動けそうにない。
…………なぜなら私の傍にジャスミンさんがずっとと言っていいほど常にいるからだ。
私が一人で部屋から出ようとするといつの間にか背後に立っていて、いつの間にかベッドに連行されて、いつの間にか抱きしめられているのだ。
でも部屋の中でなら基本自由に動けている。
まぁ少しでもふらつくとベッド連行されるけど。
あと、時々……いや毎日か。ラナさんもちょくちょくお見舞いに来てくれる。
昨日は色々な果物を買ってきてくれたので、3人で仲良く分け合った。
どの果物もとても甘く、みんな幸せそうな顔をしていたのを覚えている。
あ、そうそう。
毛先が緑色に染まっていた私の髪の毛はいつの間にか元のような銀髪に戻っていた。
ジャスミンさんに言われるまで気が付かなかったから、いつ戻ったのかはよくわからないけど。
ふと、カーテンを開けて外を見てみる。
もうすぐ夕方だからか、昼間と比べて若干人通りが減ったような気がする。
日差しが差し込んできて少し眩しい。
平和だなぁ……
そんなことを思いながら軽く伸びをする。
なんだか眠くなってきた。
ふわぁ…とあくびがでる。
その様子を見たジャスミンさんにベッドまで連行される。
これじゃまるで高齢者か何かみたいだけど、嫌ではないのでおとなしく従う。
相当眠かったらしく、私はベッドに横になってすぐに眠りについた。
気が付くと、この前と同じような空間に立っていた。
前回と違うのは、主に二つ。
一つは、空間になぜかテーブルや椅子といった家具が置かれていること。
そしてもう一つは、椅子に腰かけているシルヴァンドラの姿が変わっていること。
前回は私と同じような姿だったのが、今は少年のような見た目をしている。
これがシルヴァンドラの本来の姿なんだろうか?
いやそれよりも……
「あの、いくつか聞いてもいいですか?」
「はい、もちろんですよ。あと、ここではため口で結構です。堅苦しいのは苦手で」
意外とフレンドリーに接してくるシルヴァンドラ。
……名前長くてめんどくさいから、『シーちゃん』って呼ぼうかな。
「そ、そう?まぁそっちがそうしてっていうならそうするけど……」
「ありがとうございます。こちらとしてはあなたの体を使わせていただいてる立場ですので」
使わせていただいてる、ねぇ………
「……の割には家具とか用意してるみたいだけど?」
「うっ………それはその…………」
そういってしどろもどろになるシーちゃん。
別に怒ってるわけじゃないんだけどなぁ……
「いや、別に怒ってないよ?ただ、ここって私の……『核』……だっけ?なのに私には全然影響ないんだなって思って」
「あぁ、なんだそういうことですか。ここはあなたの中ではあります。が、ここはいわば洞窟の中のようなもの。よほどのことがない限り崩れたりしないのでご安心を」
明らかに安堵の表情を浮かべてから、何だかわかりやすいようなわかりにくいような説明をするシーちゃん。
まぁ影響ないなら好きに過ごしてもらっていいんだけど………
「あともう一つ聞くけど、その姿はどうしたの?」
「あぁこの姿ですか。これが本来の私の姿ですよ。ここにいるおかげでだいぶ余裕ができてきたので、元の姿に戻った次第です」
元の姿ねぇ…………
…………結構若いのかな?
「……えっと、失礼かもだけど…………あなたって何歳?」
「そうですね…………正確ではありませんがおおよそ8200歳くらいですかね」
めっちゃ人生の先輩だった。
そりゃ太古の霊樹だもんね先輩に決まってるよね。
………人は見た目によらないんだなぁ……人なのかどうか怪しいけど。