覚悟
今日は時間が長めにとれた……
願わくばこういう日が続けばいいのに……
目が覚めると、見知らぬ部屋のベッドで寝かされていた。
激しい頭痛を覚えながら上体を起こす。
ちょうどそのタイミングで、ドアを開けてラナさんとジャスミンさんが中に入ってきた。
ジャスミンさんは私のことを見るや否やものすごいスピードで抱きついてきた。
「よかった……よかったよぉ……」
若干涙声になっている。
驚きながらラナさんの方を見たけど、ラナさんも少し涙ぐんでいるように見えた。
私は困惑しながらも、ジャスミンさんとラナさんが落ち着くのを待った。
落ち着いたジャスミンさんから、私が気絶した後のことを聞く。
どうやら私が倒れた後、慌てながらも2人でジャスミンさんのアトリエまで連れ帰ってくれたらしい。
……それが3日前のことだそう。
つまり私は丸3日、ずっと意識が戻らなかったらしい。
そんな話をしていると、ラナさんが一枚の銀色に光る板を持ってきた。
錬金術で作った、その人の姿を映し出すことができる板らしい。
その板を見て、驚いた。
私の髪の毛の先端部分が、若干緑色に染まっていたのだ。
薄くて遠目では気が付かなかったかもしれないが、明らかに色が違う。
見間違いかと思いもう一度板をよく見るが、やはり緑色に染まっている。
目視でも確認したが、やはり染まっていることに間違いはなさそうだ。
ラナさんに、何があったのか尋ねる。
「これは……一体……?」
「……2日前だったかな。急にメルちゃんの体温が上がってね。いろいろやってみたんだけどあんまり効果なくてさ。もうだめかと思ったんだけどすぐに熱は下がって、気が付いたらメルちゃんの毛先が緑色に染まってた……って感じかな」
どうやらラナさんたちも細かい理由はわからないらしい。
まぁおそらく……『私』……シルヴァンドラが何かしたんだろうな、と自分の中で仮説を立てる。
……あと、一応ラナさんたちにも何があったのか話した方がいいよね。
信じてもらえないかもしれないけど……
私は、ラナさんたちに意識を失う前に映った情景、意識を失った後『核』と呼ばれていた場所で私そっくりの『シルヴァンドラ』と名乗る人に会ったこと、おそらく私の中にシルヴァンドラと名乗る人がいるということを包み隠さず話した。
ラナさんたちは最後まで真剣に話を聞いてくれて、話し終わるとラナさんに頭を撫でられた。
「そっか……そうだったんだね。そういうことだったんだ」
何を言っているのかわからず、どういうことか尋ねる。
「……?どういうことですか?」
「……ここ最近、あの森……グラン大森林の様子がおかしかったんだよ。今まで狼なんていなかったのにどこからともなく現れたり、あちこちに倒木があったりね」
言われてみれば……倒れてる木が多かったような気もする。
採集に夢中でそこまで見てなかったからな……
「だから、一回何人かで調査したかったんだ。でも……そのせいでメルちゃんを危険な目に合わせてしまった。……本当にごめん」
そういって頭を下げるラナさん。
どうしていいかわからずわたわたしていると、ジャスミンさんが助け舟を出してくれた。
「ま、まぁまぁ……そのくらいにしておきなよ……ほら、メルちゃん困ってるよ?」
「……そうだね、ここでしょげてたって何も始まらないか。確かシルヴァンドラが言ってたのは……北東だっけ?メルちゃんが回復し次第、行こう」
そういって気合を入れるように頬をパチンと叩くラナさん。
ジャスミンさんも異存はなさそうだ。
私も、頼まれた以上は全力でやらせてもらう。




