違和感
「わぁ……!」
森の中に入ると、草原とはまた違った景観が広がっていた。
森というだけあって木々が生い茂っているけど、木漏れ日がキラキラと輝いていて暗い雰囲気を吹き飛ばしている。
耳を澄ますと、虫の鳴き声、川のせせらぎ、木々を揺らす風の音などが聞こえてくる。
狼の鳴き声のようなものも聞こえるけど、私が育った森も似たようなものだったし、それだけ自然豊かってことだろう。
しかも周りには光っている木々がたくさんある。
私は早速ジャスミンさんからもらった斧を持って、ルンルンで採集を始めた。
ジャスミンさんとラナさんが苦笑しているようにも見えたけど、多分気のせいだろう。
「いや~、メルちゃんご機嫌だね~」
「ふふっ、喜んでもらえたみたいでよかったよ!」
メルが採集に夢中になっている間に、ジャスミンとラナが話を始める。
「そうだね~………ところで、気が付いてる?」
急に声色を変えるラナ。
ジャスミンもそれに応じるかのように声色を変える。
「うん……やっぱりおかしいよね。森がざわめいてるっていうか……」
「やっぱそう思うよね」
「なんでだろう……今までこんなことなかったのに」
「そうなんだよね。1週間前くらいからこんな感じでさ。確かめたかったんだけど一人はさすがにきついからさ……私が森に行こうって言ったのは、この森に何が起こってるか、何人かで調査しようって考えたからなんだ」
「そうだったんだ……で、どうするの?」
不安げな表情を浮かべるジャスミン。
「……奥に行こう」
「奥って……あそこだよね」
「うん、この森の最深部……太古の霊樹のところ」
「でも……メルちゃんはどうするの?」
「もちろん連れてく。メルちゃんなら……私たちが気が付かないようなことに気付けるかもしれないしね」
話がまとまったところで、ラナはメルを呼び寄せる。
「メルちゃ~ん!もう少し奥の方にも行ってみよ~!」
少し遅れて、「は~い!今行きま~す!」という元気な声が返ってくる。
その声を聴いても、ジャスミンの不安げな表情は変わらなかった。
この森には色々な木があるらしく、採集に夢中になっているとラナさんが呼ぶ声がした。
とりあえず返事をして、私は来た道を戻ってラナさんたちと合流した。
「どう?いい感じの素材は取れた~?」
「はい!いっぱい取れました!」
私はいつにも増してルンルンで答える。
それを聞いてにこにこと笑うラナさん。
ラナさんが私を呼んだのは、もう少し奥に行ってみたいからだそう。
特に問題もなさそうだし、こんなに強いラナさんとジャスミンさんが付いてるから、もちろん快諾した。
少し整えられた道を歩く私たち。
途中、何度かラナさんに質問された。
質問といっても、「この森の雰囲気はどう?」とか、「取れた木材少し見せてくれない?」などなど当たり障りないものばかりだったから、思ったことをそのまま伝えたりした。
その間、ジャスミンさんが不安げな表情を浮かべていることに、私が気付くことはなかった。