私のアトリエ
読者の皆様、大変お待たせいたしました。
身の回りの整理が一区切りつきましたので、本日より投稿を再開させていただきます。
学生の皆様、ご入学、ご進級おめでとうございます。
これからも、皆様に楽しんでいただけるような作品を書いていきたいと思いますので、何卒これからもゲームクリエイター、錬金術師をよろしくお願いいたします!
山を降りると、麓には馬車が止まっていた。
どうやらこの馬車で帝都まで向かうらしい。
「帝都までは、この馬車で大体10時間ほどかかる。その間は馬車の中でなら自由に過ごしてもらって構わない」
ただ、一つ問題点がある。
「ありがとうございます!その、一つ質問してもいいですか?」
「ん?なんだね?」
「これ……どうやって乗るんですか?」
そう、私は今まで馬車に乗ったことがない。
乗り方なんて知らないのだ。
ドアがあるのはわかる。けどドアノブまで手が届かない。
クロウさんは少し固まった後、額に手を当て天を仰いだ。
「……そうかすまない、そこまで気が回らなかった」
そういうと、クロウさんは馬車の扉を開け、どこからか踏み台を持ってきた。
「すみません……」
「いや、君が謝る必要はないぞ」
私は踏み台を使って中に入る。
決して私がチビなわけではない。
一応私160cmはあるし。
この馬車が大きいだけ。そう。そうに決まってる。
中にはやわらかそうなクッションとソファーらしきものが置かれていた。
クロウさんは私が乗り込んだことを確認すると、馬車の前のほうに座った。
「さて、では行こうか」
今の時刻はお昼前。日が暮れるころには帝都グランに着けるだろう。
私は待つ間、錬金術の本を読むことにした。
特にやることもないし、少しでも知識を得たいと思ったからだ。
そして、出発してから1時間後。
「うぇぇ……」
酔った。
それはもう盛大に酔った。
この世の終わりかというくらい酔った。
残りの9時間、それがどれだけつらい時間か。
私は死を覚悟した。
そしてつらい時間は過ぎていき。
「見えたぞ。あれが帝都グランだ」
「あれが……」
遠くのほうに巨大な城壁で囲まれた都市が見えた。
日が沈んでいるにもかかわらず、遠くから見ても活気にあふれているのがわかる。
ちなみに馬車酔いは気合で治した。
そして馬車は思っていたよりすんなりと街の中に入ることができた。
多分クロウさんが身分証か何かを見せたんだろう。
「さて、無事グランに着いたわけだが……もう夜も遅い。君のアトリエに案内するのは明日にしよう」
「そうですね……そうしましょうか」
私は近くの宿に案内された。
どうやらあらかじめ予約していたらしい。
疲れが溜まっていたのか、私は部屋に入ってすぐ寝てしまった。
そして、翌日。
「ここが……」
「そう。君のアトリエだ」
私は住宅街にあるお店のような建物に案内された。
どうやらここが私のアトリエのようだ。
お店の前には”メルのアトリエ”と書かれた看板がかかっている。
「あぁそうだ、これも渡しておこう」
そういって、クロウさんは私にツタの輪の中に月が描かれている看板を手渡す。
「これは……?」
「君のアトリエだという証明書のようなものだ。看板と一緒にかけておくといいだろう」
私専用の……看板……!
私は今までにないほどの、心の高鳴りを覚えた。