出発の時
更新が遅れてしまい申し訳ありません。
私事ですが、この度第一志望校に受かり、来年度より高校生になります。
今までよりも忙しい日々が待ち受けているとは思いますが、今後も毎日更新を続けていけるよう精一杯頑張りますので、コメント等での応援、よろしくお願いいたします!
試験を受けてから時は流れ、あっという間に1週間が過ぎた。
必要なもの、と言っても特に思いつかなかったので、部屋の書物を整理したり、時々麓からやってくるお客さんの依頼を受けたりして過ごした。
あと、師匠から”マジックバッグ”というものをもらった。
なんでも、このバッグに物を入れると質量をほぼ0にして物を持ち運べるという優れものらしい。
入れられるものの体積には限度があるけど、素材を集めたり書類などを持ち運ぶときに役に立つから持っていきなさいとのこと。
食料なんかも入れることができて、中に入れても劣化せず、冷めることもなく、別の物と混ざったりすることもないらしい。
師匠も若い頃このバッグを使っていたそうだ。
かなりの貴重品だから大切に使いなさいと念を押された。もちろん大切に使わせてもらう。
麓の街の人たちに、帝都に向かうことは伝えた。
急にいなくなったりしたら皆困っちゃうかもだし、早めに伝えたほうがいいと思ったからだ。
この前の栄養剤を作って渡したお兄さんは少し涙目になりながら、餞別だと言って大銀貨を1枚と小銀貨を5枚(日本円にしておよそ15万円相当)をくれた。
断ろうとしたけど、もらってくれないなら帝都までついていかんばかりの勢いに押されて、つい受け取ってしまった。いつか絶対に返そうと思う。
色々とあったけど、準備は、整った。
あとは帝都からの迎えを待つのみ。
家の中で待つこと数時間。
ソファーでうたた寝をしていた師匠がふと目を覚まし、「行ってらっしゃい」と私に声をかけてから、再び眠りについた。
その一言で私は迎えが来たことを理解し、外に出る。
外に出ると、クロウさんがちょうど到着したところだった。
「やあメル君、準備は大丈夫かな?特に問題なければ出発するのだが」
「問題ないと思います。では行きましょうか」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。少しやってほしいことがあるのだが……」
「やってほしいこと、ですか?」
「あぁ、これに手をかざしてほしい」
そう言って、クロウさんは懐から水晶玉のような物を取り出す。
「きれいな水晶ですね〜!吸い込まれそう……」
「……見る前に、早く手をかざしてくれないか?」
「あぁっと、ごめんなさい……これでいいですか?」
私は水晶に右手をかざす。
なにか起こるのかと期待したけど、特に何も起こらなかった。
「……何も起こりませんけど?」
「そうだな……」
クロウさんは水晶を懐にしまい、そのまま麓の方へと歩き出した。
「え、あ、ちょっ!待ってくださいよ〜!!」
私はクロウさんを追いかける。
「やはり…………ない?だが………………のか?いや、………」
何か独り言のような声が聞こえたような気がしたけど、風の音に紛れてしまい、よく聞き取れなかった。