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プロローグ
ヴァルは愛おしむような眼差しを私に向けていた。
いつも警戒するように伏せられている黒い三角の獣の耳はこちらにピンと向けられている。
彼の逞しい腕が私の手首を掴む。
それから引き寄せられヴァルの胸の中に顔を寄せていた。
「ノノ」
愛称で呼ばれて我が耳を疑う。
彼はいつも私をノティスニアと、長ったらしい本名で呼んでいたのに。
ヴァルの髪の色と同じ黒い尻尾は嬉しそうにブンブンと揺れている。
「可愛いノノ……俺の恋人」
夢にまで見た。ヴァルに抱き締められ愛を囁かれることを。
だけどこれは違う。私とヴァルは犬猿の仲(と周囲に思われており)、少なくとも彼は私を嫌っている。
だというのに何故彼が私を抱き締めているのか。
答えは簡単で、ヴァルは惚れ薬を飲んでしまったのだ。
禁断の薬を……。
神族→天使
魔族→悪魔
霊族→妖精
獣族→獣人
のイメージです。よろしくお願いします。