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嘘を重ねる

「私、全然空気残ってたじゃない!100以上はあったよ。少なくなったのは佑斗(ひろと)さんじゃない! 」

「そういうことを言ってるんじゃない! ダイビングで大切なのはバディ同士の意思の疎通だ! 」


「じゃ、『もう少し居たい私』が『戻りたい佑斗さん』に従ったんだから問題ないじゃない!! 」



「おいおい、どうしたんだ、二人とも。喧嘩は良くないぞ」


「オーナー.. 」


「蒔ちゃん、だいたい話は聞こえていたよ。凄く大きな声だったからね。いいかい、ダイビングっていうのは計画性のスポーツなんだよ。海況をみて、潜るバディの力量や体力、潜る目的などであらかじめ計画しなくてはならないんだ。海の中で佑斗が蒔ちゃんを何よりも大切に思っていた事はわかってあげてほしいな」



「 ..わかりました。 すいませんでした」



「ほら、蒔ちゃんもわかったって言ってるんだから、佑斗、仲直りしてくれ」


「はい.... 」





———この海の下に何かあるはずなんだ。

誰かと一緒じゃ、調べることが出来ない。


エリアエンドまでの経路はだいたいわかった。

今度はひとりでも大丈夫———





私は撮影した映像を何度もチェックした。

『身丈岩』の周辺で撮影した映像には残念ながら手がかりになるようなものはなかった。


ただエリアエンドに行くまでの目印となる岩や景色をしっかりと頭に叩き込むことはできた。

そもそも経路自体が難しいものではない。

ゴロタ沿いに進むだけなのだ。

ただ心配なのはエアーの配分だ。

でも、佑斗さんよりも私のほうがエアー持ちはいいんだ。

それに、いざとなったら水面に出てしまえばいい。


私はそんな風に楽観的に考えていた。



****


その日、オーナーと佑斗さんはオープンウォーター講習で2人とも海に潜っている。


絶好のチャンス。


2人が海に潜っていくのを確認すると、素早く器材のセッティングをし、ウエットに着替えた。


デジカメをセンターから持ち出そうとした時..


「蒔ちゃん、おはよう! 久しぶりだね」

「 ..こ、琴子さん、なんで?」


「いや、ふらっと遊びに来ただけだよ。主婦の息抜き! うん。だいぶ様になってきた.

「え? 」


「その姿だよ。ウエットスーツの姿」

「..ありがとうございます」


「ところでオーナーと佑ちゃんは? 」

「2人は講習で潜ってます」


「ふ~ん。で、蒔ちゃんは何やってるの? 」

「あ、あの.. 私は生物チェックを頼まれてまして」


「へぇ。もう任されてんだ。大したもんだ! じゃ、私がここで留守番してあげるから、心置きなく行ってきなさい」

「あ、ありがとうございます」


琴子さんがきて焦った。

よかった、止められなくて。


でも嘘ついちゃった....な。



よし!『身丈岩』

今日こそ、何か手がかりを見つけるんだから!



海は8月にしては少し冷たい潮が入っていた。


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