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15番のサッカー選手老年編

作者: 北風陣

もうあれから60年。

70歳を超えてしまった。

その間、病気と闘いながら、サッカーと向き合ってきた。


小学生を教える機会を恩師から貰い、教えてきた。

初めは、中学生までしかやってこなかった自分がとか、中々悩み所はあったが、自分に出来る事が少しはきっとあると、前を向いていたら、教え子達は何も言わずついて来てくれた。


自分には結局子供は出来なかったが、その代わりに教え子達がいる。

心がけたのは出来る限り、正直でいようと決めた事。

サッカーにも、自分自身にも。


苦しい時代もあった。

でも過去である。

これからの未来がある子供を自分の都合に巻き込む訳にはいかない。

そして、その子達に自分の過去のような事を味合わす事をしないように、この歳になっても、学生達と走る。

例えスピードが遅くても隠さない。歳や病気を言い訳に使わない。

そう、等身大で学生達と目線を合わす事に重きを置いた。

中には、自分の事をコーチや先生と呼ばせないと気が向かない人もいると聞く。

私は◯◯さんと、名前にさん付けで呼んで貰っている。

さすがに意見を公平に聞くと、どっち付かずの意見になってしまうので、自分の意見をとる事もした。


だが、やはり人のサガなのか、自分に似た気質がある子には共感してしまう事が多かった気がする。

1回の練習でいいと言った所を3回やってくる子。

通常の練習では飽き足らず、残ってまで練習する子。

こういう子には何故そう思うのか。何故抜けないのか。または抜かれるのか。宿題を出した。


だが、もうそろそろ歳だ。

体が病気で蝕まれている。

癌だと宣告された。

勿論学生には言えない。

上手く隠して辞めるつもりだった。


最後の日当日、挨拶の練習を何度もした。

今まで、自分を信じてついてきてくれた礼が言いたかった。


しかし、目の前の光景は違った。

グラウンドに沢山の人がいる。

皆ユニフォームが15番なのである。

一瞬その光景に戸惑っていると、1人の選手が私にユニフォームを渡した。

15番のユニフォームである。

そのユニフォームには、今まで教えてきた教え子や、父兄の方から、メッセージが添えられてきた。

偉大な15番の選手にと特大の文字まで入っている。

私は偉大な事などした訳ではない。

今までついて来てくれた選手や父兄、関係者の人達の支えあってこそだ。

涙が頬を伝った。


人生とは分からない。

あの時、もし自分何てとか、病気だからとか、何か言い訳を探し続ける選択をしていたら、この光景を見る事はなかった。

今はプレーに集中しよう。

何たって、俺は今日だけは偉大な15番の選手なんだから。


その時の写真を病院へ持ってきた。

抗がん剤治療は想像以上に辛かった。

諦めそうな時もあった。

そんな時は15番のユニフォームを着るようしている。

人生は華。沢山の思いを胸に、次は治療を終えて、15番のユニフォームを着て皆を驚かせる番だ。


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