青春の1ページ
――放課後、美術室で待っていてくれますか。
昼休み、覚悟を決めて送ったメッセージ。
既読が付くまで、ドキドキしながら待つ。
10分ほど経ってから、ついに既読が付いた。
返事を待ってる間に、昼休みが終わる。
返事が気になって、午後の授業は全く集中できなかった。
でも結局、返事はなかった。
既読スルー……
私の恋心は、既読スルーで終わってしまうのか?
そんなの、認められるワケがない。
私は僅かな希望に縋って美術室で待つ。
体育館裏も、校舎裏も、なんだかんだで人の目につきやすい。
屋上の踊り場も、もし誰かがいたらと思うと怖かった。
だから私は美術室を指定した。
普段は少数ながら部員で賑わっている美術室だけど、今日は美術部がお休みなので誰もいない。
美術部員の私だから知っている。
そして彼も美術部員。
だから絶対に迷わず来れる。
時間なんてかからないハズ。
なのに……、彼は来ない。
……一瞬、涙が零れそうになる。
それを、歯を食いしばってなんとか堪えた。
悪い方に考えちゃダメだ。
もっと前向きになろう。
この待っている時間だって、私の恋の一部だ。
たとえどんな結果が待っていたとしても――
きっと将来、貴重な青春の1ページになるハズ。
だから今は、ただ彼が来るのをドキドキしながら待つだけでいい。
「よ、よお」
無限にも感じる静寂を破り、待ち人が姿を現す。
それだけで私の涙腺は崩壊し、涙があふれ出した。
慌てて駆けよってくる彼。
私の涙をハンカチで拭きながら、彼があれこれと言い訳をしてくる。
正直、今の私にはどうでもよかった。
ただ、来てくれただけで嬉しい。
「なあ、そっちの話の前に、俺からも話があるんだが、いいか?」
そして――、私の青春の1ページは、鮮やかに彩られることになった。
・彼に対するフォロー
彼も彼女に恋をしていた。
それが先んじて告白と思しき先制パンチを喰らったため、どう返事するか考えあぐねているうちに放課後になってしまった。
そして、部活がないからと遊びに誘ってくる悪友達を撒くのに時間がかかったため、来るのが遅れたのでした。
決して悪気があったワケじゃありませんので!




