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女子高生それは小麦粉

作者: ユキ雪

今再び擬人化の時代が来た!

今再び小麦粉の時代が来た!

まさにそれを体現した作品になっています。

登校編


 小麦粉の朝は早い。

 普通の人であれば歩いて二十分ほどで着くであろう距離にある、私の通う高校。

 しかし小麦粉と人の間では、登校とは大きく異なるものである。小麦粉にとって登校は、「戦い」なのだ。


 一番大事になるのが、天候。

 小麦粉からすると、高温、多湿、強風、降雨などは全て敵である。

 ここで、梅雨の時期の一日を紹介しよう。



「おかーさん、今日学校行かなくていい?」


「ドアを開けた直後から何言ってんの? ほら、さっさと行きなさい」


「そう簡単に行くことなんてできないよ。お母さんには分かる? ドアを開けた瞬間、雨がザーザー降っているのを目の当たりにした時の気持ちを。それにジメジメムシムシしてるし、風も強い。これを体験してどうしろっていうのさ! お母さんも体験すれば分かるよ!」


「体験? そんなの嫌ってほどにしてるわよ」


「お、お母さん? 目のハイライトがなくなっていってるよ......」


「私の通う高校は、家から徒歩と電車で一時間以上かかったのよ。あなたに分かる? 雨風温度湿度に加えて、電車の振動や急ブレーキを恐れる毎日を。少しのアクシデントで、公衆の面前で粉を自分の体から粉を振りまくことになるのよ。懐かしいわね~。そうそう電車で思い出したわ。夏の車内は」


「今日も元気に行ってきます!」


「はい、いってらっしゃい」


 お母さんの話、いつも怖いんだよな。ドアを開けた直後は蒸し暑かったのに、今はもう寒気に襲われてるし......。


 って、おいしょ~!

 強い風ー、そして襲ってくる雨ー! いくら傘とレインコートの二段構えといっても、これは耐えられん。

 レインコートの中で自分の粉がなんかすごいぶわぶわしてる!

 私、転生するなら絶対人間になるね。



「やっと収まった......」


 そんなことを何回も繰り返しながら、ようやく半分まで到達。

 ここで新たな山を迎えることとなる。


「出たな、歩道橋」


 毎度お世話になっている、歩道橋。

 道の都合上どうしても渡らなければならない、厄介なことこの上ない相手。

 何が厄介かといえば、その高さ。階段を昇り切った直後から現れるストロークでもし風に襲われようものなら、高いところから粉をまき散らすことになる。加えて高いところにいるため、普段やらかす時よりもより注目を集めてしまう。

 だが、一応歩道橋を使わない手段もあるっちゃある。ただそれをすると集団の中に身を置くことになり、人が集まっている中で粉を舞い踊らせる上に事前に逃げることもできないという、バッドエンドを迎えることになる。

 だから私は毎日、今みたいに歩道橋で走っている。


「はぁはぁ、私が何したっていうんだ。どうして朝っぱらから歩道橋のストロークを走って駆け抜けなきゃいけない。しかも割と長いし」


 何とか無事に渡り終えると、登校後半戦が始まる。後半戦は特に前半と変わりなく、温度や湿度、雨や風に細心の注意を払いながら学校を目指すだけ。

 毎日大体八時二十分ごろに学校に到着する。

 そこで気になるのは、私の出発時刻。

 もちろん天候によって左右されるが平均するとズバリ、

 七時五十分!


 う~ん、ほぼ普通の時間帯。

 というのも、風が少しでも吹いたりしたら一気にスローペースになるが、それ以外の場面では早歩きなため総合すると、ほとんどかかる時間に変わりがないんだよな~。



「それで、今日は何時に起きたの?」


「ん? 確か四時くらいだったかな。」


「いや、早すぎない? って、いつも早いか」


 学校に到着した後は、数少ない私の正体を知っている友達と話しながらダラッと過ごす。


 これこそが小麦粉の朝。




朝の会話編


「今日の朝は大変だったんだよ~。髪が全然整わなくてね~」


「髪か。私はあんまり、そんなことはないな」


「うらやましいな~。何かとっておきの方法みたいなのがあるの?」


「いや、そんなものはない。なにせ、」


「なにせ?」


「髪は自分の思うようにいじれるからな」


「いいな~! 私もできるようになりたい!」


「そんなにいいものじゃないぞ。どんなに上手くいってても、不意に吹き込む風で台無しになることもあるし。だから、いじったりなんてことはあまりしないぞ」


「え~、せっかくだしやればいいのに。今ならだれも見てないし、どう? いつもはおろしてるけど、偶にはツインテとか。ね、どう!」


「分かった分かった。じゃあ一瞬だけ」


 そして実行しようとしたまさにその瞬間、窓から一陣の風が吹き込んできた。


「目が~!!」


「すまん。教室の方に飛ばすわけにもいかないから、無意識のうちに、正面に向かうように努力してしまった」


「正面て! そこには私がいるんだよ!」


「すまんって。だがそっちにも責任はあるからな。わざわざ風について触れたのに、ここでやらせて。私の左隣は開放された窓なんだから、どうなるか予想もできただろうに」


「で、でも」


「もっかい喰らう?」


「ごめんなさい、反省してます。次からはTPOを弁えます」


「うむ。分かればよろしい。にしても、よりによって窓側の席とは」


「席替えしたのに窓際のままだもんね~。まぁ、私はいいけどね。授業中に風が吹き込むと、ちょいちょい挙動不審になっているのが後ろから伝わってきて面白いしって、目、目が~!!」


「反省しろ」

小麦粉を堪能していただいたなら、私はそれだけで満足です。

もし皆さんが小麦粉を欲してくだされば、その期待に応えていきたいと思っています!

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