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作者: 新名

いつかみた夢の話

映るのは、自分の靴。

黒々と光る革靴から目を離すと、外はもう夜だった。窓から見える空には月が二つ浮かんでいて、だからこそこんなにも明るいのかと思う。吹き込む風に目をつむると、とても小さな声が聞こえる。


「帰りたい?」


うん、まぁ、それなりに。呟くと、じゃあ帰してあげると声が言った。高く澄んだ声の方へ目を向けると、そこには少女が立っていた。


「校長先生に頼んでも良いのだけれど、ああなっちゃうから」


その言葉と共に、一つの机が光り始める。覗き込むと、サラリーマン風の男性が映った。彼が歩いた後には、乾いたラーメンの破片がパラパラと散っていく。

あれは何?と聞くと、脳みそだよと彼女が言う。校長先生は帰す時に投げちゃうから、壊れちゃうのと言って笑った。

可愛い子だなと思いながら、じゃあ君にお願いするよと言いかけた時、少女が机を持ち上げ私へ投げた。鈍い音を立てて、私は意識を失った。



気付くと私は洗面所にいた。少しウロウロ歩いたが、ラーメンは落ちてこなかった。どこか変わったところがないか、鏡で確認してみると、右耳にポツンと黒い染みがあった。


「もーまたか」


そう言いながら、傍らにあったハサミで耳を切り落とす。綺麗に切れたことを確かめた後、母の元へ持っていく。処分の方法を聞いたところ、焼いて食べると美味しいらしい。あまりにも熱弁するので、そのままプレゼントした。



再び鏡を見ると、既に新しい耳が生え始めている。良かった、と安堵し振り返る。


パリッ。


という音に足元を見た。目に映るのは、自分の靴。黒々と光る革靴から目を離すと、床は乾いたラーメンで埋まっていた。

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