表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/62

断章:名も無き独白(5)

 ルーイ様。

 恐らくあの夢は、どこかの世界で本当にあった事なんでしょう。

 貴女はその運命を変える為に、一人で戦ってきたんだ。いや、今も戦っている。


 黒髪を金髪に変えた事も。

 ヒールをへし折った事も。

 皇帝陛下と仲むつまじくする事も。

 俺を『ナダ』ではなく『イル』と名付けた事も。


 全部全部、定められた貴女の滅びを回避する為の、戦いなんでしょう。


 だから、貴女の周りをうろつくネズミを始末して、皇帝陛下だけに報告しました。

 だから、夢に見た悪魔と同じ顔をした男が現れた時、俺が始末しないといけないと思いました。

 これ以上、貴女に苦労を背負わせない為に。


 なのに、貴女は言うんだ。


「わたくしは、彼と話があります。今は退きなさい」


 信用されていない訳ではないというのは、今はもうわかるようになりました。だけど、頭で理解しても、心が――そう、俺には無いと思っていた心が、納得しないんです。

 離れていろと言われたけれど、俺は地獄耳だから、貴女と悪魔の会話を聞いてしまった。貴女が、「アーリエルーヤ」ではない名前を呼ばれたのも。貴女がここではないどこかから来た事も。

 全部、全部。聞こえてしまった。


 ルーイ様。貴女はきっと、皇帝陛下の比喩ではなく、本当に天の御遣いなんでしょう。

 そしてきっと、いつかは天に帰らないといけない。

 帰らないでください、と。俺が生まれて初めて抱いた我儘は、迷惑ですか。

 黒髪の貴女ではなく、金髪の貴女のままでいて欲しいと思うのは、罪ですか。

 モルモットになった悪魔に、貴女は俺が守るべき人なのだと見せつける為、言い訳を繕って、貴女の手を握ったら、貴女は握り返してくれました。


 本当に、自惚れても良いんですか。


 生まれた時から親を不幸にした鬼子の俺が、未来を望むなんて、許されないのだろうけれど。

 今だけは、俺は貴女の「イル」だと、貴女に「要る」と思われているのだと、信じさせてください。

 どうか、お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ