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第4章:出たなフラグ確立魔!(8)

 わたしが何か言うより速く、短剣の煌めきが走った。


「おっと」


 ディア何某が笑みを崩さないまま、わたしから距離を取って飛び退る。


「ルーイ様に、近づくな」


 相手を鋭い眼差しで睨みつけて、油断無く双剣を構えているのは、イルだった。

 それを認識しただけで、その場にヘナヘナ崩れ落ちそうになる。ああーこの子、あの日に宣言した通り、本当にアーリエルーヤ(わたし)の剣であり盾であろうとしてくれてるんだ。


「おやおや、護衛騎士殿がご挨拶ですね。私はこれから皇女殿下をお守りする者として、お近づきになろうとしていただけなのに」


 ディア何某がヘラヘラ笑いながら肩をすくめる。

 嘘つけ。お近づきどころか、あわよくばアーリエルーヤとも契約を結んで、自分に有利に立ち回ろうって魂胆じゃろが。


「ルーイ様を守るのは、俺だけで充分だ。他の誰にも、その役目を譲らない」


 ウワッ。

 イル、君は自我が薄いくせに、こういう時には自信満々に好感度爆上げしてくるね?

 何か、嬉しくて泣きそうになるよ。心臓ばくばく言ってるよ。


 でも、ごめんね。


 ここは、わたしがやらなくちゃならないんだ。


「大丈夫です、イル」


 彼の腕にそっと触れて、武器を下ろさせる。


「わたくしは、彼と話があります。今は退きなさい。そして、声の聞こえない場所からわたくしを見守っていなさい」


 イルがわたしを見下ろして、目を真ん丸くした。それから、怒られた犬のようにしゅんとしょげる。

 ああ、こんな表情もするようになったんだ、この子。感情豊かになったのは嬉しいけど、わたしが落ち込ませてるってのは、本当に申し訳ないな。


「お行きなさい」


「……はい」


 まだ納得しきっていない返答ながらも、イルは短剣を鞘に仕舞う。

 そして、いつものように、瞬きする間もあらばこそ、あっという間にその場から姿を消した。

 ……うーん。彼が特別とはいえ、人が一瞬で視界からいなくなる事ができる城内構造って、やばくないか? わたしが皇帝になったら、コロシアム以外にも直させる場所、沢山ありそうだぞ。


 いや、今はそれよりも。


「これで今度こそやっと、二人きりだな」


 ディア何某めんどくさくなってきたがわたしに向き直り、再びにやついてみせる。

 あー、これだよ。

 わたしは両手で顔を覆ってその場に崩れ落ち、腹の底から搾り出すようなめちゃくちゃ低い声を放った。


「ふじた……っ!」


「………………はい?」


 鹿(ディアは鹿だからもうこれでいいや)が、目を点にして、実に間抜けな反応を示した。

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