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第3章:君は居る、わたしはルーイ(6)

 そう、君はイル。


 君はアーリエルーヤ(わたし)にとって必要。『要る』


 君はわたしの敵を射抜いてくれる。『射る』


 そして何より、そこに存在して良いんだ。『居る』


「……イル」


 ナダもといイルは、初めての食事を噛み締めるように、その名を自分の口で呟く。


「アーリエルーヤ様、俺は」


「お待ちなさい」


 はいそれ。「アーリエルーヤ」は彼に決して自分の愛称を呼ぶ事を許さなかった。

 フラグ回避するなら、そこも潰しておいたほうが安全だ。


「貴方に、わたくしの特別な呼び方を許可します。騎士になる最初の試練です。考えなさい、自分で」


「自分で……」


 イルの眉間の皺が深くなる。あー、いいねいいね美少年が真剣に考える顔。

 めっちゃにやにやしそうになるのを必死に抑え、腰に手を当てて待つ。

 やがて、イルが顎に手を当てて、ゆっくりと、息を吐くように言った。


「……ルーイ」


 ッホオー……!

 飛雄くん声で言われると心臓止まりそうになりますね。いや止まったらフラグ回避もクソも無く死んでしまうので、止まるな心臓。

 あと、ギリギリ「わたし」の本名かすってるので、正体バレたかと吃驚したわ。


「ルーイ様」


 イルがわたしの前にひざまずく。帝国に来てから仕込まれたんだろう。東方のお辞儀ではなく、きちんと帝国の様式で。


「俺は、自分で考えて、貴女の剣となり、盾となって、貴女をお守りする事を、ここに誓います」


「おおーっと! これは番狂わせ! コロシアムの覇者『無銘』が、皇女アーリエルーヤ様の騎士として大躍進だー!!」


 コロシアムの司会が大声を張り上げると、観客席は拍手喝采で一杯になる。


 うん、いい。

 君はイル。わたしはルーイ。

「アーリエルーヤ」と「ナダ」とは違う関係を築こう。


 あー、でも。ちょっとあれだ、あれ。

 わたしは皇帝を振り返り、「お父様」と呼びかける。


「わたくしが皇帝になったら、暗殺者が入り込んだり、剣闘士が簡単に客席に上がり込める、このコロシアムの造りを、根本的に改善しますわ」


「いやいや」


 皇帝が苦笑して首を横に振った。


「それは儂の代でどころか、明日にも始める事じゃよ、天使ちゃん」


 ふふ。

 そういうところが最近好ましいですよ、お父様。

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