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第3章:君は居る、わたしはルーイ(5)

 あっ、ははーん……。

 段々わかってきたぞ。


 ナダ、この子、「自我が無い」な?


 まあ、黒髪黒瞳の中に銀髪赤瞳なんて生まれたら、まず異端児として遠ざけられるだろうし。でも、戦力としては役に立ちそうだから、殺戮兵器として戦場に送られた訳か。

 そして帝国に来てからも、奴隷剣闘士として、生き残る為にひたすら人を殺し続けた。

 そんな育ち方をしてたら、「自分で考えて行動する」なんて、できるはず無い。

 この子は年齢こそアーリエルーヤ(わたし)と同じくらいだけど、中身はてんでお子ちゃま、というか、赤子同然なんだ。


 そういう事情を鑑みもせず、「アーリエルーヤ」は、意志も無く、自分の為に戦って殺せ、って言っちゃったんだな。

 そりゃあ、「女帝アーリエルーヤ」の為に戦って死ぬしかできなくなるよ。


 でも、わたしはその「アーリエルーヤ」じゃない。

 もっと、別の道をこの子に与えられるはず。


 目を閉じ、数秒でめちゃくちゃ考える。

 そしてわたしは、銀色の瞳をぎっと見開くと、父皇帝の脇をすり抜け、ナダの前に立った。


「お父様!」


 さあ、大一番だ。間違えるなわたし。

 皇帝を振り返って、ナダを指差す。


「わたくし、彼をわたくしの護衛騎士に召し抱えたく思いますわ」


 皇帝が驚きで目を瞠る。ナダを見れば、何を言われているのかわからない、というのがありありとわかる、ぽかんとした顔をしている。


「彼の戦闘力は、しっかりと目の当たりにしました。この強さは、騎士となれば、大いにわたくしの身を守るのに役立つと思いますの!」


「お、おお」


 やっと意識が現実に返ってきたかのように、皇帝がかくかく首を縦に振る。


「これだけ強い護衛が儂の天使ちゃんを守ってくれるなら、確かに、心強いの」


 よし、第一段階クリア。

 遅ればせながら駆けつけた騎士団が、暗殺者を縛り上げて連行する間に、わたしは再度ナダと向き合う。


「俺にはわかりません」


 彼が、ゆるゆると首を横に振る。


「貴女の騎士になって、何をすれば良いのか」


「わたくしを守る為に立ち回りなさい。ただ殺すのではない方法を選んで」


「わかりません」


「これからは、自分で考えなさい。あまりにもまずかったら、わたくしが止めますから」


 ちょっと突き放すようで悪いけど、そこはこれからスパルタ教育だ。


「自分で、考える」


 ナダが赤い瞳を細めて、自分の胸に手を当てる。憂い顔もめちゃくちゃ綺麗だなオイ。

 って、見とれてる場合じゃないない。


「貴方はもう『無銘』ではありません。わたくしが新たな名を与えましょう」


 見てろ「アーリエルーヤ」。

 これが、お前とわたしの違いだ。


「イル」

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