個性豊かな人妖たちです
「なぁ、岳」
ホームルームが終わり、授業の準備をしていると真が話しかけてきた。
「どうした?」
「この学園にいる奴らって、個性強くね?」
「・・・お前が言うか?」
呆れながら俺は言う。
「ま、まあ百歩譲って俺もそうだな。でもよ、この俺ですら霞むほどの奴が居るだろ?」
「例えば?」
「ほら、あそこ」
真が顔を向ける方を見ると、そこには席に座っている少女がいた。
金髪に赤いヘアバンドのようなリボンをしている少女、アリス・マーガトロイドである。
「あぁ、なるほどな・・・」
俺は納得してしまった。
基本は無口で大人しい性格のアリスだが、とある生徒に対してだけ異常なほどの執着心を持っている。
今もアリスは席からある生徒をジッと見つめている。
その生徒とは霊夢と楽しそうに話している魔理沙のことだ。
俺は、魔理沙から一切目を離さないアリスから真に視線を戻した。
まず俺らのクラスでキャラが強い奴って言ったら、俺じゃなくてアリスだろ?あの執着心は早苗ちゃん以上じゃねえか?」
「だな」
アリスほどの執着心が早苗にあったらと思うと正直ゾッとする。
「それに・・・さ、映姫もかなりヤバい感じがするんだよな」
真が言う映姫とは、四季映姫・ヤマザナドゥ(しきえいきやまざなどぅ)という少女のことである。
緑の髪に紅白のリボンをつけた彼女はとにかく真面目で真の天敵と言ってもいいだろう。
真が問題を起こし、それを咎める役が映姫だ。
もちろん、巻き込まれた俺も一緒に咎められる。
とにかく悪い者には容赦しない性格なのだ。
特に、真と文、何故か巻き込まれるだけの俺も映姫に目を付けられている。
「まぁ、彼女なりに学園を良くしようとしているんだと思うけどな」
真から怖がられている映姫だが、詩音や後輩の小町と一緒に居るところをよく見かける。
悪い者には容赦しない映姫でも、真面目で優秀な詩音とは相性が良いのだろう。
「あとは・・・まぁ、俺と比べるとって所だよな」
「文はどうなんだ?」
「文かぁ?俺は対して普通だと思うぞ?」
真を女にしたような奴が普通!?
「てなわけで、昼休みと放課後、この学園でキャラの濃いそうな奴らを探しに行こうぜ!」
「はぁ・・・俺も行かないといけないのか?」
昼休みは構わないが、放課後か・・・
リアを迎えに行きたい、と俺は伝える。
「今、剣道場改装中でしばらく剣道出来ないからって毎日リアちゃん迎えに行く必要ないって!たまには俺を優先しろ!それに剣道が始まったらリアちゃんを迎えに行くとか出来ないだろ?岳が中学生の時1人で帰ってたんだから心配ないって!!」
「俺だけじゃなくて流は誘わないのかよ」
「誘ったさ!ただ昼休みは雛ちゃんと飯食べに行く。放課後も雛ちゃんと帰るからって断られたんだよ!」
「なんで俺は駄目で流は良いんだよ・・・」
ため息を吐いた俺だったが、真があまりにも必死に頼むので、仕方なく付き合うことにした。
「よし!じゃあ岳!今から行こうぜ!」
昼休みになり、弁当を食べ終えた俺を連れて真は高等部1年がいる教室へと向かった。
高等部1年の教室では生徒たちが買ってきた物や持ってきた弁当を食べていた。
「んじゃ、お邪魔しますよっと」
真に続いて俺も教室に入る。
学食に行っている生徒もいるからか、空いている席も多い。
「あれ?下僕じゃん。何しに来たの?」
入った直後に声をかけられ、俺はそちらを見る。
そこには青いロングヘアーに真紅の瞳をした少女が立っていた。
俺を下僕と呼ぶ少女は比那名居 天子。
裕福な家庭で育ったお嬢様らしく、人を少々、いやかなり見下す傾向がある。
初めて会った瞬間、俺に下僕宣言をし唖然としたのを覚えている。
ただ、もう下僕と呼ばれるのに慣れてしまっている自分がいた。
当初は、真や流には下僕呼ばわりしないのに、なぜ俺だけ下僕扱いなのか気になっていた。
そのことを天子本人に問いただしたことがあったのだが、その時彼女は下僕は1人で充分だと答えた。
『だったら俺、下僕嫌だから真を下僕扱いしてくれ。アイツ、羨ましがってたから』
こう言ったのを覚えている。
それに対し天子はこう答えた。
『アンタだから下僕にしたのよ!少しはわかりなさい!』
・・・全くと言っていいほどわからない。
「真に連れられてきただけだよ」
「そう言って、実は私に会いに来たんでしょ?わかるわその気持ち!私のパーフェクトプリティーな姿が見たくてたまらなくなったのね!」
「・・・」
う~ん、パーフェクトプリティーねぇ・・・
確かに天子は美人ではあるが、魅力的かと言うとどうなのだろうか。
魅力的な女性の特徴として、かわいらしさ、上品さ、聡明さ、色気、癒しがあげられるらしい。
何故それを知っているのかと言うと、早苗が魅力的な女性について話していたのを覚えていたからだ。