異国からの転入生です3
「執事の件ですが・・・」
俺が答えようとした時だった。
「何してるのよ!下僕!」
声が聞こえたところを見ると、天子がずかずか歩いて来た。
「総領娘様、空気を読んでください」
衣玖が天子の肩に手を置く。
「うっさいわね!ちょっとアンタ!中等部のくせにウチの下僕に手を出さないでくれる!」
「何?私に言ってるわけ?」
「そうよ!アンタ以外にいる?このチビ!」
「は?」
レミリアは天子を睨みつける。
「お嬢様になんて口を・・・!」
咲夜が懐からナイフを取り出すと、天子の首に突き付けた。
その動きがあまりにも早かったが、天子は全く動じなかった。
「やってごらんなさいよ。そのナイフが私に刺さるのならね!」
「おい天子、挑発するな!話が拗れるから!」
俺は天子を止めようとしたが、火がついた天子は止まらなかった。
「ほら!やってみなさいよ!」
「っ・・・!」
「もういいわ、咲夜」
教師としての立場もあるのか、突き付けたままナイフを動かせない咲夜にレミリアが言う。
「下がりなさい。貴女には教師という立場があるから生徒に手を出すことは出来ないわね。でも・・・私は咲夜とは違うわよ?」
レミリアは咲夜を下がらせ椅子から立ち上がると、天子を睨みつけた。
「お姉様~、暴れるならフランもやる~!」
レミリアに次いでフランも立ち上がった。
天子は変わらずレミリアを睨みつける。
両者の間に火花が見えるほど緊迫した状況。
今にも争いが始まりそうだった。
「おい!ちょっと!何してんだよ!?」
その緊迫した状況を崩したのは学食から出て、こちらに走ってきた真だった。
「・・・誰?コイツ?」
レミリアは真を見て口を開いた。
「お嬢様、彼は村岡 真です」
咲夜がレミリアに説明した。
「・・・フラン、座りなさい。気がそれたわ」
「は~い!」
レミリアとフランが椅子に座った。
「アンタさ、こんな状況で割り込み入れるとか・・・空気読みなさいよね」
天子がため息をはいた。
「お前が言うか!?」
真は天子に突っ込みを入れるが、2人に話しかける。
「まぁ、とにかくだ。2人の話をまとめようぜ」
「急に来て何言ってんのコイツ・・・」
そう呟きながらもレミリアや天子は真に事情を話していた。
「結局、アンタはどうするの?」
真と出てきた霊夢が俺に尋ねた。
「ん?何がだよ?」
「執事になるかならないかについてよ」
「あぁ、なるほど。俺はな・・・」
「岳」
真が俺を呼んだ。
「とりあえずこっちは岳を執事にしたいらしい」
真がレミリアたちを見る。
「で、天子は下僕をやるわけにはいかないからって言うことで来たらしいぞ?結局は岳が返事しないと話が進まないわけだ」
「わかってるさ。だから天子を止めたんだよ。話が拗れてきたから」
「私のせいだって言うの!?」
俺はそれに頷いた。
「下僕のクセに・・・!」
「総領娘様、お静かに」
天子が口を閉じると、俺はレミリアを見た。
「答えは?」
「執事になれと言う件ですけど・・・お断りします」
「なっ!?」
予想外の台詞だったのかレミリアが驚きの声を出す。
声には出していなかったが、フラン、咲夜、美鈴も驚いた表情をしていた。
「当たり前よ!私の下僕なんだかムグッ!」
「お静かに」
衣玖が天子の口を塞いだ。
「理由を聞こうかしら。まさか、アイツの下僕だからと言う理由じゃないわよね?」
「はい、もちろん。それに、天子が下僕と呼んでいるだけで俺は下僕だとは思っていませんから」
俺の答えに天子が何か言おうとしていたが、衣玖に口を塞がれている状態では言うことが出来なかった。
「理由は自分の時間がなくなるからです。単純な理由ですみません」
俺はレミリアに頭を下げた。
「その言葉、お嬢様に対する侮辱と捉えて良いでしょうか?」
咲夜がナイフを取り出すが、レミリアは手でそれを制止する。
「なるほど、素直にうんと頷けばその程度の男かとこちらから切り捨ててやろうと思ったけど・・・。まさかそんな理由で断られるとは思わなかったわ。やはり貴方は興味深いわね」
「え~!執事にならないの!?」
「あぁ、すまないな」
「う~!」
俯いたフランの頭を撫でるレミリア、それを見ると少し心が痛んだ。
「フランちゃんだったか?執事にはなれないけど、もし良かったら友達にならないか?」
俺はフランに言う。
執事は無理だが、友達にはなれると感じた。
「え?」
フランは俺を見た。
「もちろん、レミリアちゃんも。どうだ?」
「ちゃ!?ちゃん!?」
レミリアは驚いたように声を荒げたが、冷静を保ち、俺に尋ねた。
「私たちと友達になるなんて、恐怖はないのかしら?」
「恐怖なんかあったらこの学園には居られないだろうな」
しばらく黙っていたレミリアだったが、やがてフッと笑うと口を開いた。
「・・・レミリアと呼びなさい。岳、貴方への興味が潰えるまで付き合ってあげるわ」
「フランもお友達になる!」
「あぁ、よろしくなレミリア、フランちゃん」
俺はレミリアとフランの友達になった。
「古郷君」
放課後、リアを迎えに行こうと思った俺に咲夜が話しかけてきた。
「なんですか?」
「この際ですからはっきり言わせてもらいます。私はお嬢様が貴方を執事にすることを聞いた時は納得がいきませんでした。私だけではお嬢様方を満足できないのかと・・・!」
「そうですか。でも、俺は断りましたよ」
「えぇ、確かに断りました。しかし、私はそれにも納得がいきませんでした。お嬢様が断られることなど今までになかったことですから」
「・・・」
咲夜のレミリアやフランに対する忠誠心はかなりのものだろう。
2人を慕っているからこそ、執事として迎えられ、それを断った自分に嫉妬しているのだと感じた。
「今後、授業では徹底的に当てていきますので悪しからず」
そう言うと、咲夜は去って行くが、途中で立ち止まる。
「ただ、お嬢様たちとお友達になってくれたことに関しては礼を言います。私は仕える身であり、友達にはなれませんでしたから」
振り返ることなく咲夜は言うと、去って行った。
「・・・」
俺は頭を掻くと、リアを迎えに行った。




